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冒険者へ LV.1から始まるファンタジー  作者: 森林樹木
ランクF  Cave of origin(原点の洞窟)
24/32

23  LEVEL8-2

 そういえば、この木についている傷は、どこで見ただろうか?

 ふと、松明をかざしていると、見覚えのある傷が目に入った。


 安直な傷の印だ。あの『奴隷の刻印』に×印を上から上書きをしたものである。

 否定、または反抗の意があったのだろうか、ここに来たのが初めてのはずなら、あのガキがここに彫ったものだろうか?


 いや、ありえないな。

 ここは意外と危険区域に指定してある。


 一応、職務者、特に冒険者等の人らに入る事を許可されている。

 ただでさえ、ここは魔物が出没するのだ。丸腰の貧民街の住民がここに来て良い事なんて一つもない。

 だとしたら・・・。


「布教活動でも始めたか・・・?」


 それなら、一応合点がつく。

 それでも、木にその印をつける理由とどうしてこの印なのか。後、誰が教主なんだ?

 いや、それ以前にこれを宗教にして、何が目的なんだ?


「まぁ、宗教とは限らないか・・・」


 宗教じゃなくても、奴隷の反抗組織みたいな団体がやっているのかもしれない。もしかしたら、俺みたいな冒険者がこういった場所に彫って、自分たちの存在を知らしめているのかもしれないな。

 ウォンは、ふと周りにある木にも目を向ける。


 松明で一本一本を照らすが、案外、印らしきものはなかった。


「ねぇ、ウォン。それは使い物になるよね?!」


「まぁ、逆にこれを使い物にできなくする方法を教えてくれ」


「もー!素直じゃないんだから!もっと、「うれしい!」とか「ありがとう!」とか言えないの?」


 別に、うれしくないと言ったら嘘になるが、だからと言って、そんな大げさに喜ぶつもりもない。ただ、頭の中で礼だけは言っておこう。

 ただ、使えるかどうかだけは、言っておかなければこの無一文ヤローに二度と支給は来ないだろう。


「ワー・・・アリガトー・・・ウレシーナー」


 思いっきりわざとらしく言ってみた。

 その言葉を聞いて、馬鹿なのか耳が遠いのか、エルナはウォンの褒め言葉ならぬ言葉に鼻を天狗にする。

 さて、うれしいか感謝かと言われれば、俺はくだらないから黙ってろと言うだろう。というか黙ってろ。


 ウォンは、不機嫌な顔で、暗い夜道を歩く。


 この18歳にもなって幽霊などは興味は無くなった。今怖いと言えば、この女の父上くらいだろうか。

 考えてみろ、このエルナは、実際は「エルナ様」というべき女だ。

 俺は「エルナ」とタメ口の呼び捨てで話しているが、こんなの国王の前でしゃべってみろ。この前の件とは関係無しに首ちょんぱだ。


 そんなことを考えていると、首の横を円に伸びた痣がムず痒く感じた。

 ちょうどいい。この暑さで全てを溶かしてもらってはどうだろうか?そうすれば、この面倒なことさえしなくてよく済む気がする。


「ねーねーウォン?」


 はいはい何でございましょうか?エルナ王女様?

 自分でも笑ってしまう、その返事だが、声には出さず、頭の中だけで返事する。


「ねーねーねーねーウォン?」


「はいはいなんだ?まな板?」


 最後の4文字(まな板)に、最初は首を傾げていたが、その真意を知ると驚嘆にも似た悲鳴をあげる。


「まな板?、何それ?今すぐ訂正して!」


「あーはいはい分かったー・・・・・・はいはいなんですか?鉄板?」


「さっきよりも硬くなっただと?!」


 あー硬くなったな。つーかお前のその貧相な胸には世界も号泣するだろうよ。この様じゃ、女王様はどうなんだ?

 まぁ、それは横に置いておこう。


 今は、胸ではなくこの夜中の森を歩き洞窟にたどり着くかどうかの心配だ。


「別に、今更そんな事を言っても、それは増えないぞ?諦めろ」


 そうだ、わざわざこんな遅くにオリジンケーブに向かうのは、クルスの意識の回復のためであって、胸の有無の心配をする為じゃない。

 正直の所、クルスの件がなくてもあの洞窟には行かなければならなかった。


「そういや、既に遅かったりして・・・」


 あの男に言われてまだ1日も満たないと思っているが、まさか魔物に殺されてたりはしてないよな。

 あんな危険な場所に送ったんだ。せめて見つかりにくい隠れ処的な場所にでも送ってもらわなければ、こっちも行った甲斐がない。


「そろそろ着く?」


「あぁ、もうそろそろ半分は来たかもな」


 暗い夜道を歩き続けながら、二人は戯言をしゃべり続けた。

 道ならぬ道を歩きながら、まっすぐ洞窟に向かう。


 そして、一旦二人は立ち止まった。


 ウォンは、この逸る(はやる)気持ちを抑えながら、ベルトに引っかけた軽金属の箱を触る。

 先ほどまでは冷たかったこれも、今ではジメッとしてぬるくなってしまった。このぬるさは森の暑さからなのか、ウォンの体温からなのかは分からない。


「なぁ、エルナ。これの使い方と種類、すまないが教えてくれないか?」


「ふーん?」


「なんだ?その顔は?」


 エルナの何か企んだ顔にウォンは嫌な気しかしなかった。

 すると、エルナは手を差し伸べた。


「条件があるんだけど・・・」


「なんだよ?」


 胸か?まな板か?鉄板か?


「胸の事は二度と言わないでくれる?」


 やっぱり。

 そんなに気にしているのか?


「分かった分かった。二度とお前のその貧相で寂しいーー胸の事は言いませんよ?」


 その言葉のかなりの皮肉を彼女は気が付いているのだろうか?

 気が付いたらなら、面白い。

 気が付いていないのならば、俺の頭の中で嘲笑ってやるから、なお良し。


「よろしい!その言葉を境に二度と言わない事!」


 気付いてやがった。面白くねーな。

 そう言うと、エルナは差し伸べている手の指を折り、その箱を寄こせと合図を送った。

 使い方がよく分からない俺には、こいつに反論する術を知らない。


「それじゃあ、おねがいしやすよ。胸板ぺったんこ先生?」


 別に、まな板とは言ってはいないのだから、良いだろう?

 頬を膨らませながら、エルナは軽金属の箱から一枚の札を取り出した。


「まず、この札を使いましょうか?」


 エルナはウォンい文字を見せる。

「木」と「操」が読めた。そして、そこからどんな効果があるかも何となく分かった。


「これをね、木にはっ付けるの」


 あっさりとその札は、木に吸い付かれるかのように札は消えて行った。

 これの仕組みをかなり知りたかったが、とりあえずこれがどのようになっていくのかの方が勝った。


「で?これがどうなるんだ?まさかこいつに食わせて、終了~とかないよな?」


 その自分でもよく分からない疑問がウォンの頭の中を過る。


「まさか!そんなことないよ!?」


 エルナはウォンを抱き寄せると、先ほど札を食った木に触った。


 この時、もう少し、いやかなり胸が大きければ、人嫌いである俺でも内心では歓声が起きただろうか?

 そんな事を考えていながらも、相手が女だからだろうか顔が赤くなってしまうのは気のせいだと思いたい。


「それじゃあ、道案内はよろしくね!!・・・スイッチ!!」


 は?何がだ?と言う時間すら与えてくれなかった。それを言うのも、突然地面から木が現れたと思った瞬間、ウォンとエルナの体が浮いた。


 浮いたという表現は正しいだろうか?いや、どちらかというと持ち上げられた言った方が良いだろう。


「すげーな・・・全く暗くて何も見えねー・・・」


 そう夏の始まりだ。つい今日、昨日までジメッと肌寒く、その上、夜は曇りで満月新月関係なく暗いったらありゃしない。


「これが「木」と「操」の札の結果か・・・」


 木を自由自在に操る事ができるのか。これはかなり便利なのだろう。暗くなければの話だったらだが?


「ねーねー、すごいでしょ?」


「あー確かにすごいな。だが、もう少し足場を増やしてくれないか?そのまない・・・少し暑苦しいんだが・・・」


 もう少しで、本音が漏れそうになるのを耐え、似たようなことを代わりに言った。

 エルナは、それを聞くと、残念そうに二人を地面に降ろし、手を木から離した。


 すると木は元の形に戻り、エルナも手を振り払った。


「札の使い方には2種類あってね?一つは今みたいな自己の意思に反映するもの。もう一つは自然に消えるまで起こるもの。要は「死」とか「呪」といった別のものの意思によるものみたいな?もの」


 全然ちげーじゃねーか。


 ふとウォンは、そう思った。まぁエルナのその下手くそな説明のおかげで何となく理解できた。


 使ったことのない俺が代わりに説明してやる。


 今、エルナがやったのはその自分の意思に反映する方の札だ。多分、上に持ち上げようと思い描いたからこのようになったという事だ。

 逆に、別の意思と言ったのは、以前、貧民街の母親がルシカの「火」と「死」と書かれた札によって殺された件についての札だ。

 あれはたしかに、母親が燃やされる間ルシカの意思は別の方向に向いていた。それに手を放していたし、勝手に消えて行った。これは火だからという事はないんだろう。あの母親が死んだから消えたのだろうか。

 ということは、五大元素の次に書かれている副属性の物は「目的」と解釈していいだろう。ただ、使い方を分けると2種類になったというだけだろう。


「なぁ、だったらこれの方が使えるんじゃないか?」


 ウォンは、箱の中から「火」「浮」と書かれた札を取り出した。

 これなら、エルナが先ほど取り出した札と組み合わせれば、便利だろう。


「じゃぁ、それはウォンが使ってね」


「え?でも俺、使い方・・・」


「簡単だって!スイッチと言って?」


 確かに簡単だな。3歳児でも場所を間違えれば、立派な殺人鬼だ。それを防ぐための魔力の消費という訳か。3歳児にこれに消費できるほどの魔力を持っていない。


 ウォンは近くに落ちていたツタを何とかして千切ると、手頃の大きさよりも少し大きめにに丸めた。これは出来るだけ燃えてくれればという思ったからだ。


 それに今の札をはっ付けると、エルナに合図した。


「スイッチ!!」


 エルナガ操った木はもう一度、地面から上空に二人を持ち上げ、彼らを暗い森と空の中間の佇ずませた。


 ウォンは、その蔦の球に貼ってある札を見ると、唾を呑み込む。

 思いっきりよく、ウォンはそれを天めがけて投げた。

 そして、それが目線辺りまで来たと思った瞬間。叫んだ。


「スイッチ!!!」


 それは、まるで小さき太陽が、夜など要らんとばかりに空を明るく照らす。

 それのおかげで、オリジンケーブの場所が分かった。


「行くよ!」


 そう言うと、エルナは洞窟に向けて指を指す。

 すると、足場の少ないその枝のように細い木は彼らを落とさないように、勢いよく洞窟へと向かった。



お知らせ、活動報告にも書きますが、諸事情により今夜の23時には投稿できません。

もしかしたら、夜中になるかもしれませんので、その時はよろしくお願いします!

2017/03/15/17:53

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