18 LEVEL3-6
3人と鳥かごの中に入れられた1匹のグールは場所を変え、誰もいない路地の中通りに移動した。周りからは誰も見ていない事を確かめると、話を進める。
「さーってお前はどっちに行きたい?」
クルスは男の目を見る。すると、かすかに男はニヤリと笑った。
「それはさっきも聞いた。頼まれたんだよー」
「それは誰からなんだ?」
「知らねーよったく。獣便りだよ!相手なんて分かる訳ねーじゃん」
鳥かごの中から、聞く事だけ聞けたら鳥かごから釈放という交渉でクルスはマントの男に質問をいくつか投げかける。
この男から分かった事はこれだ。
1 男の名前はウルガ・シャークレット。連れは姉のルシカ・シャークレット。
2 元々の狙いはウォンだったが、たまたま口に入ったエルナの血が気に入ったらしく、興味がエルナ にシフトしてしまったらしい。
3 依頼主は不明。獣便りにより、金と依頼を受け取っただけらしい。
4 もともと、死人の食事には飽きてしまい、生き人には興味があったらしい。
5 ルシカの行方は分からないらしい。
・・・・・・はぁ?俺あん時襲われてたの?めっちゃやばかったじゃねーか・・・。
「ほら言っただろ?解放しろよ・・・約束だろ?」
ウルガは口から血反吐を垂らしながら、刺さっている棘をバンバンと何度も叩いてみる。
「誰が、魔物なんかと約束するんだ?」
クルスは鳥かごを両手で格子を掴むと、約束を破った。
「どういう事だ!ウソだろ?!」
ウルガは格子を掴むと、「必死に命だけ助けろ」と叫ぶ。
だが、クルスはウルガの言葉を無視する。そして、傍で座り込み泣きじゃくる母親を起こした。クルスはウォンとその母親の目の前に札を一枚見せた。
「何だよこれ」
「さて、息子を目の前で殺された主婦よ。あなたはこいつを殺したいか?」
クルスは目の前に落ちている札を見つめる。
よくは分からないが、字のどこかに「火」と「死」が見えるのは分かった。
母親はその札を見ると、視線をクルスに向け鳥かごで助けを求めているウルガを睨んだ。
「殺させてください・・・私に殺させてください!!!」
「まだです」
地に置いてある札を奪い取ろうとすると、邪魔をするかのようにクルスは母親が拾い上げる前に踏みつけた。
母親はクルスの顔を見たが、クルスは澄ましたかで母親を見下ろす。
「なんで?!」
「あなたの傍にいる御方は、この化け物に最初に襲われた方だ。もちろんやり返すチャンスくらいは持っています。それにこの方は、俺の恩人の恩人だ。まだ弱いから経験値を一気に貯めるチャンスだ」
確かにそうだ。グールは貴重だ。死んでいるとはいえ、強い奴も喰っているはずだ。ましてや、生き人さえ喰っているときたら・・・
ウォンは札に手を差し伸べる。
「ちょっと・・・何をやってるの?」
「は?」
「それは、私が使うの!この化け物を殺す所をあなたは黙って見ていなさい!!!」
母親は、ウォンを突き飛ばすと札を両手で掴みとった。
尻餅をついたウォンは、母親が醜く笑うその姿しか見る事が出来なかった。
「アル・・・見ててね・・・私がこいつを!!!・・・っでこれをどうするの?」
「えぇーーー・・・こう使うんだよ♪・・・あはは素が出ちゃった!」
突然クルスは満面の笑みに変わると、口調を変えそう言った。
クルス・・・いや、クルスではないこの女口調の男は、母親に指を鳴らすと、小さく囁いた。
「スイッチ」
その瞬間母親の体を包むように火柱が立った。炎の奥から悲鳴が聞こえる。
今にも「熱い・・・熱い」と母親の声が聞こえてきそうな勢いだ。だが、その声すらかき消すほどの業火の炎は燃え続ける。
「おい・・・クルス・・・これはどういう事だ?」
「この体はクルスって人の物なんだ・・・ふむ、心も清らか。頭も良いし口調は良いとは言い切れないけど・・・気に喰わない」
「お前は・・・・・・誰だ?」
すると、誰とも分からない男は、みるみる女の姿に変わっていく。見た目は悪くはない容姿をしているが、内情を知っている以上、かわいいとは決して言えない。
女は、燃え盛る炎の柱に照らせれ、その笑みが醜く見えてしまう。
「私は、こいつの姉。ルシカ・シャークレット。グールだよ?」
ルシカと名乗ったその女は、未だ燃えている母親のを見た。
「面白いよなー。息子を弟に殺されて、次はその姉に自分を殺されて・・・醜いな~・・・・・・まぁ、いいよね。この世に必要のない人間が2人くらい減ったって構わないよね?」
狂っている・・・こいつら、二人して何を笑っているんだ?あ、そうか・・・こいつら魔物だったな・・・だったら殺しても構わないか・・・
ウォンは、立ち上ると母親を見た。
「お前の仇くらいはとってやる」
「ん?何か言った?」
ルシカは高々に笑い出した。今のウォンにはその理由は理解する事はできなかった。
「俺はお前を殺しても文句はないんだよな?!」
「文句くらいはあるよ」
ルシカは生き物として当たり前かの様な返答をする。そうだ生き物として、自分が死ぬのに縦に振る奴はいない。だが、ウォンから見て、こいつらは人でも、生き物でもなかった。
ウォンは足元に落ちている木材の欠片を持った。縦になっているが、一番持ちやすい物を手に取る。
「それを私たちに刺すの?」
「いいや、違うな」
ウォンはそう言うと、崩れ倒れた炎の塊を見た。醜い憎悪が沸き立っているかのように強く、轟轟と燃えている。
「お前、手持ちの技も魔法もないな?レベルも低そうなのに、よくもまぁ私に楯突こうとするなぁ」
「はぁ?」
「分からないのか、お前は弱すぎる。せめてあの方にでも勝る力でも持っているのなら、また来るんだな」
ルシカは近づいて来ると、ウォンの頭を掴んだ。
鳥かごから見ていたウルガは、目を輝かせてこちらを見る。
「姉ちゃん!!!あれをやるのか!?」
すると、ルシカはボソボソと何かを呟きだした。
その瞬間、彼の意識は暗くて寒い場所に飛ばされた。




