17 LEVEL3-5
「・・・グール?」
屍食鬼・・・死食鬼・・・食屍鬼・・・どちらにしろグールは死者を喰う魔物だ。ここら辺では墓地で生息しているはずだが・・・なぜ、この街にいるんだ?
死者を食す存在が人を食べている。
「俺らもシュールストレミングの発酵前って食えたっけ?」
例えてみるならそんな感じだ。まぁ、用は普通『グールは生き人を食べない』のだ。
いくつかの文献によれば、砂漠で旅人を襲うと見たことがあったが、これは必要最低限の食事のためだ。近くに行けば墓地があるのなら人を食べようとはしない。・・・はずだ。
なんなんだ?こいつらは死者の肉じゃ飽き足らず、生き人の肉まで食うのか?
これを見ている野次馬は、グールを中心とし円状になりながら、ヒソヒソと話しながらこちらを見ている。
「こんな時に何を言ってるの!?そのシュー・・・何とかなんて、後でいくらでも食べさせてあげるから!!」
「はぁ?あんな物食いた・・・か・・・あれ?」
シュールストレミングって・・・なんだ?俺の言葉だと食べ物・・・なのか?
人が目の前で化け物に食べられているのに、この男は何を考えているのかとエルナは心底呆れた。
ウォンは目の前にある光景を今一度見ることで我に返ると、もう一度、目の前にいるグールを見た。
「おい・・・エルナ。もう一体はどこ行った?」
そういえば、二体いたはずだ。
だが、目の前にいるのは欲望を露わにした1体だけだ。もう一体はどこに行った?
ウォンはエルナと共に、立ち上ると屋根や大通りの中に隠れているマントを探し出す。
「・・・いた!あの中にいる!」
エルナが人ごみの中に隠れているマント姿の人影を見つけた。そいつは役所の方へ歩いて行く。
「よし、あいつとは逆方向に逃げるぞ・・・」
「え?」
「俺は言ったはずだ。あんたの護衛になってやる。だが、今の俺にはレベルが全く足りん。グールとぶつかったら、ます、お前を助けることは出来なくなる」
ウォンは、エルナの腕を引っ張り、クルスのいる宿の方へ歩き出す。だが、あの時からすでにエルナと俺はこのグールの標的だったようだ。
「待てよ・・・そこの男と女・・・お前ら美味い血をしてるな。もっと寄こせよ」
子供を食い尽くしたのか・・・いや、辺りは血でトロールの時を思い出させるような血の溜りがあり、まるで子供がご飯を食べ残したかのような有様だ。
グールは口に付いた血を手首で拭くと二ヤリと不気味に笑う。
「死人は不味くて不味くてしょうがない・・・だが、生き人は血が新鮮でうまい!!・・・特にお前らは結構うまいな。良い家系のの人間は違うな。さて、どちらから俺の餌食になってくれるか・・・」
グールの男はその言葉を言い終えようとしたその瞬間、主婦らしき人物が現れた。
「アル!・・・ぁぁああああ・・・なんで!こんな・・・ウソでしょ?」
アル?・・・。
自分の息子の無残な最期を見てしまった。その主婦は、そこで腕や足の肉を食いちぎられ、腹の中身が空っぽになっている子供の母親らしい。だが、その姿は汚く、所々服に穴が開いている。
この現状を見て普通でいる方がおかしい。だが、ましてや親族で自分の最愛の息子ときたら、それは自我が壊れてしまってもおかしくないだろう。
「お?あんたのガキか?不味いな~。ったく普段何を喰わしてんだ?死体を喰った方がマシだな?いや、首筋を食いちぎった時点で死んだか・・・」
グールはそう言うとケタケタと笑い出し、周りにさらなる恐怖を与える。
しかし、その中の一人は恐怖より強い怒りが込み上げていた。
「殺してやる・・・」
「・・・あ?」
「私の・・・最後の心の支えを・・・!ぶち殺してやる!!!」
母親は、ウォンの腰に刺していたせっかく買った新品のダガーを奪うと、グールに刃を向けると突進していく。
だが、あっさりと、その攻撃をかわし母親を横に突き飛ばす。すると、横に立てかけていた木材にぶつかり倒れかかってしまった。その衝撃で木材は倒れてしまい、母親は木材の下敷きになってしまった。
「なんだ・・・貧民街の住人かよ。なんでこんな床にいんだ?」
貧民街・・・?
ウォンはもう一度、その子供の顔を見た。
「・・・・・・まじかよ」
「どうしたの?」
「すまん、エルナ。お前は一人でクルスを呼んで来い。俺はこいつを殺さなくちゃいけない理由が出来たわ」
エルナは心配そうにウォンを見た。ウォンの目は怒りで満ち、歯ぎしりが鳴っていた。
それを見るや、分かったとエルナは宿屋の方へ走って行く。
「よーグール。お前、なに?俺の数少ない友人喰ってんだよ」
「いやーすまねーなー。こいつ俺の前に出てきて来たからな。ちょうどいいからおやつ代わりに喰ったわ」
それを聞いた瞬間、ウォンは怒り狂った目で安いボロボロのダガーに刃を向けるとグールに向かって突っ走っていく。だが、母親と同じくウォンも腕を掴まれた。
今のウォンにはそれは効かない。ウォンは傍に落ちていた木材を持つと、グールに正面から叩きつける。
「何すんだ!テメー・・・!!」
突然の反撃で驚いたグールは怯んで、体勢を崩す。その時だった。
「よくやった!!!お前、少し離れろ!!」
遠くからクルスの声が聞こえた。
言われるがままウォンはその場から離れると、クルスが人ごみの壁のから現れた。
グールは木材の上に立ちと、母屋の体をグニグニと何度も踏み、ニヤニヤと不気味に笑いながら楽しんんでいる。
「例外ってのは続くもんなんだな。グール、持ち場の墓場はどこか憶えているか?」
「は?あんな不味いもん喰ってられっか!もっと生き人を寄こせ!!」
「お前にはこれを食らわせて寄るよ!!!ウッドメイデン!!」
クルスが右手の平をを広げグールに向ける。その瞬間、木材から鳥かごが一瞬にして現れると、グールを囲む。
「こんなもん簡単にぶっ壊してや・・・!?」
アイアンメイデンという物をご存知だろうか?中世ヨーロッパでは『鉄の処女』と呼ばれ、拷問または処刑道具として使われた拷問具である。
鳥かごの太い格子の部分から太い棘上の物が鳥かごの全体から突き出てきた。まさにアイアンメイデンのごとく、グールの体をその縦長状の棘が突き刺す。
「イッテ――!!!何だよこれ!!」
これが・・・魔法?
グールの体を木の棘が突き刺しており、血が傷口からドクドクと流れる。グールはそもそも血が少ない魔物だ。これ以上、流れるともう数十分で死ぬだろう。
すると、クルスが鳥かごに近づくと、格子を掴みグールの顔を覗いた。
「死にたくないだろう?おいグール、地獄と墓場どっちに行きたい?」




