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冒険者へ LV.1から始まるファンタジー  作者: 森林樹木
ランクF  An adventurer who does not hate(人嫌いな冒険者)
11/32

11  LEVEL UP

約5センチくらいの硬いその半透明で綺麗な小石を拾い上げると、ポケットに突っ込んだ。


「さて、ここから一番近いのは・・・どこか・・・ぁあああぁぁああああああ!!!」


 突然、筋肉痛になったかのような痛みが体全体に広がった。痛みはしばらく続き、ウォンはその場に倒れてしまった。

 なんなんだ?・・・俺の体に何が起きているんだ!?

 すると体の痛みは、おさまり体の痺れが少しばかり残った。


「どうなってるんだ・・・もしかしてこれって・・・」


 レベルが上がったのか?


 初めてだからこんな物には詳しくはない。だが見た感じ体に直接的な変化はない。これはきっと内面的な変化が生じているということなのかもしれない。

 ウォンは試しに近くに落ちているタガーを拾い上げた。すると、ふと目の前に落ちているドロップアイテムに目が行った。


「うぉっしゃ!アイテムじゃん!どれどれ~~って、え?」


 そこに落ちていたのは、2000ギルと片腕を無くした人だった。そいつはまだ息があるらしく、トロールの胃液なのかベトベトした液体がこびり付いていた。

 運、嫌いだなー。ほんっと!俺って神に見放されてるんだなー。


「あぁーー。俺は死体モドキに興味ないんだよ。っつか起きろ!」


 ウォンはその死体のような奴にタガーを軽く突っつく。

 しかし、気絶しているのかなかなか起きない。


「喰われてたんだな、こいつ・・・・・・つっーか!ドロップアイテムじゃねー!ドロップボディーだ!訳分かんねー!・・・ってドロップボディーってなんだよ!?」


 こんな広く素晴らしい草原で独り寂しく、半分死体のエルナの前で自問自答に似た叫びをしていた。


「あの狂人め!どこにいるんだ!」


 少し遠くからクルスの声が聞こえた。ただ、どうも離れすぎていた奴の顔が分からない。ていうかよくここまで声が届くな。レベルを300越すとこんなこともできるのか?


 さて、あんな事を言ってしまった訳だが。辺りは草原、多分1キロくらいはあるだろう。そして、後方は森、先ほど言った通り、クルスがやって来ている。ここで捕まってしまっては、その場で殺されるのは目に見えているだろう。「行っても地獄、逃げても地獄」とは正にこの事だ。


 これのために何をしてんだ俺は。

 ウォンはポケットからあの石を取り出した。太陽に透かして見た。いろんな色が映り、とてもきれいな物だった。しかし、しまおうとしたその時、あの胃液が手で滑ってエルナの真上に落ちた。


 すると、どういう訳か、エルナの腕が突然生えた。


「・・・キモッ」


 傷口から筋肉と血管がみるみる現れ、それをあとから追いかけるように皮膚がそれを覆いだす。だが、さすがにこれは他から見てて気持ちのいいものではない。

 残念だ。奇跡同然のその出来事も、これを見てしまえばその一言で尽きてしまう。


「んん・・・ここは?・・・あなたは・・・」


 起きちゃったよ。もう少しタイミングくらい考えられないもんかねー・・・。

 ウォンは、タガーを地面に刺して、掘り刺して掘りを続けていた。

 自分の状況を理解できていないのか、エルナは起き上がると腕の有無を確かめ、次に体にへばりつく胃液を嫌そうな目で見た。


「また・・・助けてくれたのね」


「違う」


「でも・・・この腕も・・・」


「断じて違う。大いなる勘違いだ」


 そうだ。勘違いだ。そもそも俺はあのトロールを殺そうとして、経験値狩りをしようとしたんだ。お前がいるなんて一言も聞いてない。というか喰われてるんなら正直に死んでろよ。


 ウォンは深くため息をつく。


「どうしてため息をつくの?」


どうして死んでないの?


ウォンの頭にそんなふざけた質問が過るが、馬鹿馬鹿しいのでこればかりは言うのを拒んだ。


・・・・・・こいつを置いて帰るか。

ウォンはそいつを置いて帰ろうと森の方に方向転換した。


「奴はどこだ!トロールと共にぶち殺してやる!!」


 森からクルスの怒りの叫びが聞こえた。さーて首が消える前に逃げなければ。

 だが、木一本もないこの壮大な草原でどこに隠れろと言うんだ。


「いた!見つけたぞ!」


 あぁー・・・見つかった。


 こちらの居場所が分かった瞬間、こちらに十数人ともあろう兵士を連れ奇襲を仕掛けてきた。

 こっちはトロールを命かけて殺したんだ。殺されるのは今はまだ止めて欲しいものだ。


「ちょっと待って!・・・クルス!止めなさい!」


「どうして生きているんですか・・・まさかこれは・・・お前がやったのか?・・・」


 エルナはクルスの目の前に立ちはだかった。

 クルスの怒り狂ったその顔がエルナの顔を見た途端スーッと消えて行った。

 あんたはお菓子を泣きじゃくって要求する子供か。


「違う。少なくとも俺はこいつを助けた記憶などない」


「そうでなくとも、お前はあのトロールを倒した。結果、死にかけていたであろうエルナ様を助けた」


 助けたって・・・誰が?誰を?


 ウォンはただ、経験値目的で油断していたトロールを倒したまで。そこからが問題だ。桃太郎のごとく桃から出てきたのは桃太郎。トロールから出てきたのはエルナだった。

あの爺さんやばあさんも予測してなかったでしょ。大きいといっても桃から出てくるのは当然桃の果肉なんだから。俺だってそうだ、トロールを倒せばもらえる者はまさか伝説の装備とかまでは言わない。だが、さすがに人が入ってるなんて誰も予想しねーよ。


「どうしてだ・・・」


「は?」


「お前、あれは演技だったのか?あの狂った言動はお前が悪役を買って出たってことだな?それでわざと、俺たちの身代わりとなって自分からトロールに・・・」


 偶然が重なると奇跡に等しいと聞いた事があるが、これはまさにあれだ、奇跡だ。


 ウォンは地面に座り込み、そこからグデ~ッと寝そべった。


「疲れた。寝かしてくれ。出来れば寝てる間に殺してくれるとありがたい」


 ウォンはクスリと笑った。


 そして次の瞬間、首に激痛が走った。

 俺は死んだ。せっかくレベルが上がったのに、意味ねーじゃん。


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