3.作戦開始
眼下に広がる壊れた世界には、天災がいる。
コウモリのように骨ばった翼。
爬虫類のようにびっしりと生え揃った鱗。
人一人分くらいの太さでありながら、鞭のようにしなっている尾。
まるでかつて存在していた恐竜を思わせる牙。
そう。ドラゴンだ。
視界には存在しているのは一匹。
彼らのには気がついていないようで、呑気に鼻を鳴らして崩れたビルの隙間を徘徊していた。
身の丈程ある両刃の剣を構える。
「リン、目眩しよろしく」
視線は眼下のドラゴンを見据えながら、彼の上空にいるはずの少女に指令を出す。
リンと呼ばれた少女は頷いているのだろうか、流れる風はその声を届けたのかわからない。
「オルターはサポート! あんまり近づきすぎないようにね」
空を落ちているというのにも関わらず、自分の銃の手入れをしている。よほど余裕なのだろう。
「オーケー。後ろは任せな」
そう言うとオルターは銃に弾を詰めだした。
「警戒してください! 目標のバイタル上昇しています!」
ヘッドセットから聞こえるナビは冷静沈着に状況を確かめる。
「「了解!」」
二つの声が重なる。どうやら少女は無口らしい。
見上げるドラゴンと視線が交わる。
喉を鳴らして、ヘリまで戻されてしまうのではないかという勢いで吠え出す。
それでも落下しているという状況は変わらず、ドラゴンはもう目の鼻の先だ。
剣を構え直すと、心地の良い金属音が耳を通る。
「行くよ二人共!」