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空と海へのハウミーンズ   作者: 紙本臨夢
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第22話:いつも通りの学校生活

文字数が少ないのでご注意を

 シャワーを浴び終わるとちょうど学校に行く時間になっていたので、珍しく朝食を食べずに制服に着替えて学校に向かう。


 教室に入った瞬間にいつも通り委員長に睨まれる。それをいつも通りに挑発するように「はっ!」と鼻で笑い、流す。しかし、いつもならここで絡んでくるのだが、今日は違った。


 委員長は俺をさらに睨んでくる。


 心当たりが多すぎて、迷うな。一体どれが原因だ?


 疑問に思ったところであることに気がついた。委員長の睨みにいつもの鋭さが全く感じられないのだ。体調でも悪いのかと少し心配になるが、どうやら違ったようだ。


 委員長の表情から察するに俺の背後にタイプの人がいるんだろうな。その証拠に少し頬を赤らめているし。それかただ単にイケメンが背後にいるか……。


 イケメンという言葉に引っかかりを感じて、早朝に起こった出来事が思い出す。背後にいる人物の予想を立てながら、振り返ると予想通りの人物がいた。そこには名前も知らない部長がいたのだ。


「海空! 頼む! 俺は何でもするから!」


「ちょっ!? こんなところで土下座をしないでください!」


「嫌だ! こうまでしないとお前は俺の話を聞こうともしない!」


「なぁ、犯罪者」


 背後から委員長の冷めすぎた声が聞こえたので、振り向くと目にいつもの鋭さを取り戻していた。


「やっぱり、いつまでたっても犯罪者は犯罪者だね。やることなすこと全て犯罪。いや、存在自体が犯罪だよ。どうせ今度はそこの人の家族を脅迫しているんだろう? その証拠にさっき土下座までしないと話を聞かないと言われてたんだしね。そんな犯罪者と一緒に過ごすことを強制されているあたしたちの身にでもなってみなさい! なら、しないといけない行動がわかるよね!!」


 はぁ、面倒くさい奴。でも、望んでいることはわかった。いや、初めからわかってたけどな。だが、あえて今はそれを無視しよう。そして、悪役になろう。それが俺自身の生きる理由だから。


「あぁ、わかったさ。こいつにこうすればいいんだろ!」


 俺はカバンの中からハサミを取り出して、部長を切りつけた。


「ははは! やっぱり、最高だな!」


 ハサミの親指穴という切るときに親指を入れるところに人差し指を入れて、笑いながらクルクル回す。


「ふざけるな!」


 委員長が俺の頬に鉄拳を食らわそうとしてくる。相変わらず見えている軽く避けれる速度の鉄拳を今回は素直に受ける。


 案の定、力が強くなかったがワザと自分で床を蹴り吹き飛ばされるフリをしながら、自分の頬をバレないようにハサミで切りつける。当たり前だが、頬から血が出てきた。


「消え去れ!」


 委員長はそう言い、扉をバン! という音が聞こえるほど強く閉めた。幸いなことにまだ、朝が早いので誰も今の状況に気がつかない。気がつくほどの人がいない。


「海空。大丈夫か?」


 部長が俺の心配をしてくる。


「はい。大丈夫です」


 頬と左の手の甲から血を出しながら心配されないように冷たく言い放つ。


「悪い。俺のせいで」


「気にしないでください。でも、言い方が悪すぎですよ。あの言い方だと勘違いされやすいですよ」


「本当に悪い」


「反省しているのなら自分の教室に戻ってください。俺はもう一回、委員長とバトルしてきます」


「そうか。わかった。なら、俺は自分の教室に戻る。でも、SONの監督兼コーチを承諾するまでに何度も来るからな」


「結構です。迷惑なので。俺は二度とあんなところには戻りません」


「いつまで意地を通せるかな?」


 笑いながらも軽く手を振り、部長が去っていった。


 あの人、なんだかんだ言って性格悪い。さて、保健室に行きますか。山本先生がいたとしたら、どうせ一瞬で何があったか見抜かれるだろうな。でも、治療しないと弱っていると勘違いされて面倒くさい輩に絡まれるしな。


 俺は首筋に右の手を首の後ろに当てながら、左の手の甲を見る。


 あぁあ。部長を切りつけたように見せかけるためにバレないように血を出したけど、少し深すぎたか。


           ♦︎


 委員長は動揺している。原因は全て海空流谷(うみぞら りゅうや)だ。


 鍵を閉めていないので、彼がまた教室に入ってきた時に追い打ちをしようと扉の前でしゃがみ込んでいると流谷と部長の会話が聞こえてきたのだ。その会話の内容を聞いただけで動揺しているわけではない。


 外側からは半透明で内側からは透明の扉に付いている窓からバレないように覗き込むと部長は怪我など一切していなくて、流谷しか怪我していないのだ。


「またいつもの癖が出ているな」


 突然聞こえてきた女性の声に慌てて振り向くとそこにはいつの間に入ってきていたのか鷺縄海奈(さぎなわ かな)がグラウンド側の窓に背を預けて、立っていたのだ。


 どういうことかと焦ったが、彼女の格好を見て一瞬で理解した。彼女は練習用だがSMSを着ていたのだ。つまり、それで飛んで入ってきたということだ。


「会長。あの犯罪者のいつもの癖というのは?」


「見てわからない? 彼は犯罪者であることを利用して、自分に損しかない行動ばかりをしているのよ。それには自傷行為も含まれているの。さっきの騒ぎで彼しか怪我をしていないのはそういうこと。自ら怪我をしたのよ。それとあなたの拳もワザと受けて、ワザと床を蹴り吹き飛ばされたフリをしながら、手に持っていたハサミで自分の頬を切ったのよ」


「やっぱり、そういうこと。でも、今回は何もしていなかったとしても犯罪者を殴ったのは当たり前の行動だと思う」


「そう思っている時点であなたは人間として、さほど魅力がないのよ。だから、大好きなSON部の部長にも気づいて貰えなかったのよ。あなたが好きだということを」


 海奈の言葉を聞いた瞬間に委員長は顔を真っ赤に染める。そして、自分の世界へと入ってしまったのだ。そのことを察した海奈は苦笑を浮かべて、すぐに窓から飛び去ったのだ。

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