宰相までも…
王族も仕事をしてたから人数が減った分、国王と宰相が多忙になったらしい。腕輪を持つ俺にも仕事が回ってきた。
選ばれた存在である神官長は有事には駆り出される決まり。清廉潔白で知識もあり、国民の信頼も厚いときた。単なる雑用係だけどな。
そんな矢先、宰相が階段から転落した。急いで移動中に自ら裾を踏んづけたとのこと。
命に別状はなかったけど、何ヶ所かの骨折だの打撲だの…頭も打ったらしい。当面は自宅療養しながら職務に。って国王と宰相の間の連絡係はもしかして…俺?
年齢も年齢だし、後遺症もあるとして今年限りで引退すると連絡があった。前王亡き後、王太后ともに国王を支えてきた重鎮。二人とも引退か…。
宰相が引退する前までに今のゴタゴタが片付いていればいいが、そうでなければ暫定的に神官長である俺が宰相代理を兼務することになる。今のこの国に宰相に替われるほどの逸材はいない。神官長として貴族たちに接して気づいてはいた。平民では現状知識が足りない。貴族たちとは教育のあり方が違いすぎる。
厄介ごとの気配にため息が出る。宰相代理と女神様の相手とその他の神官長の仕事…できるのか。
いや、そもそも宰相は居なくとも…無理だな。国王もいっぱいいっぱいで仕事をしてる感じだし、他の大臣では能力が足りない。
ってか、前神官長の拾い子の俺が国の中枢に行っていいんか?素性はわかんないし、神殿の教育しか受けてないから読み書きと計算と神学はできるけどそれだけだぞ。貴族や業者との交渉は得意だが………狐と狸の化かし合いしてても清廉潔白なんだろうか?
なんかこの国の行く末が不安になってきた。あ、でも国王いる限り女神様の加護で何とか……
あれ?なんで今こんなに困ってるんだろう。女神様が眠ってたから加護が弱く……たまに魔物が出たりするけど、歴史的にはそうじゃないな……なぜ…?