女神様と王籍簿と果物
女神様が王籍簿を見たいと言ったので届けたら、カウチでゴロゴロしながら果物を食べていた。
急いで持ってきた王籍簿には目もくれず、食べ続けながら、テーブルの上に置くように指示があった。
黙々と食べる女神様。
この近辺で採れるものだから輸送費はかからないけど、昨今の値上がりから言って予算の上乗せは必須。女神様の好物は果物と野菜だ。天候の影響をもろに受ける。
どの位の期間目覚めているかはわからないけれど、積み立て金の確認は必要だなと頭の中でチェックする。
『渇水だけじゃなくて地力も落ちてるわね』
えっ、食っちゃ寝してるだけじゃないんだ!
果物に深い意味があったのかっ。
敬服しながら、近年の状況を伝えた。
『不作への根本的対策は行ってない。王籍簿は不備だらけ。こんないい加減なら国力が落ちるわね』
いやいやいや、まだ王籍簿見てないじゃん。触ってもないじゃん。
突然、テーブルの上の王籍簿がパラパラと捲れた。室内に風はない。女神様の力か…。
『その頁の人を呼んできて』
王籍簿とは生存している王族の名簿である。
国王を筆頭に国王の兄弟姉妹、親子孫曾孫など親戚一同、及びその配偶者からなる。
他国に嫁いだ王族も最終頁に載るが、継承権はない。継承権があるのはあくまでもこの国にいる初代国王から連なる王族のみである。他国に嫁いだ王族はこの国に再び属することによって継承権を得ることができる。
女神様の加護があるのが初代国王の血を継ぐ王族のみだからだ。加護の名簿とも言える。
配偶者が載せられるのは、管理の都合上だけで、当然 継承権は得られない。
そんな王籍簿の国王の一番身近な家族の頁だった。
国王にはまだ子供が居ない。
だから、そこにあるのは王太后、王妃、王弟妹である。