国王来る
女神様は新しく設置されたカウチが気に入ったらしい。目覚めてからは食事と睡眠の時以外はゴロゴロしている。
ってか、目覚めたなら起きろ!働け!
それとなく進言したら、長い間動いてなかったから身体が慣れてないとの返事があった。確かに一週間も寝込んだらしばらくは起き上がるのもやっとで、普通に歩けるようになるのにも時間がかかる。それが50年だと足の筋肉だって落ちまくりかもしれない。起き上がるだけで目眩がするかもしれない。
しかしだ。128年前、目覚めた直後に嬉々として竜退治に行ったじゃないか。あの時は89年寝てたハズだ。
胡散臭い言い訳でも女神様の言葉は絶対だ。神官たちには、目覚めたばかりで不調と伝えてある。
そんな中、国王が神殿に訪れた。
女神様に直接要望を伝えられるのは国王だけ。直接と言っても、国王の言葉を神官長が聞いて女神様に伝え、女神様の御言葉を国王に伝える形式をとる。同じ部屋にいるから直接聞こえてようとこの形を崩すことは決してない。
女神様と会話していいのは、腕輪に選ばれた神官長だけだから。
片膝を着いて礼をする国王と気怠そうにカウチに寄りかかる女神様。
国王が膝を着くのは女神様の前だけ。神様と国主とはいえ人、明らかに神様の方が偉いけど、カウチはないだろう?
そこに立派な椅子があるのに。
『今日来るのって国王だったかしら?』
出た!
確かに国王は33才で若い。12で前王から引き継いだ。前王が辺境に出た魔物と相討ちになって亡くなったからだ。王様の癖に最前線に出て迷惑極まりないよなぁ。
国王は更に深く頭を下げた。そして、渇水による作物や森の枯死が広がっていることや、隣国との境界の河が水不足で干上がりつつありそれに伴い国境線での小競り合いが頻発していることなど困窮を告げ、助力を願い出た。
これは今年に限ったことではない。ここ最近、毎年のように起こる天候不順や疫病で国力が徐々に落ちてきていた。
連日の公務は多忙であろう国王を疲れきった横顔で深く礼をして女神様の言葉を待っていた。
女神様は……………いつの間にかカウチに横になって目を瞑っていた。
マジでっ!
どうしろって!
焦りながらも、目覚めたばかりの女神様が疲れているようだと、国王には城に戻って頂いた。