第三話 「奴隷を売ってお金を稼ごうと思ったけど懐かれた話」
ある日、ケイオスはアイオーンの街を散策していた。「クロノス・ワールド」と「異世界」の違いを知り、知識のすり合わせをするために、ちょくちょく散策しているのだ。この世界に来て数ヶ月となるが、依頼を受けている時間が大半だったため、街の中のことは疎かになっていたのだ。
ケイオスがそこを見つけたのは偶然だった。既に街の中心部はほぼ行きつくしたので、普段は行かないような寂れた雰囲気の場所まで足を伸ばしてみたのだ。ふと目についた店に何気なく入ってみた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
ケイオスが店に入ると、すぐに身なりのしっかりした執事らしき男がやってきた。店内の雰囲気は、外側の寂れた雰囲気とは明らかに異なっている。
「たまたま目について入ってみたのだが……ここは何の店だ?」
「ここは奴隷を扱う店でございます。戦闘用、愛玩用、雑用に労働用、どんな奴隷でもご用意致します」
「奴隷……そんなものがあったのか」
ケイオスは衝撃を受けていた。ゲーム時にはそんなもの存在しなかったので考えもしなかったのだ。だが、その存在を知ってしまったからには、することは一つだろう。幸い資金はある。
「詳しく話を聞きたいのだが、かまわないか?」
「はい。では、こちらにお越しください」
執事風の男はそう言って奥へと案内した。
ケイオスが案内されたのは応接室の様な部屋だ。華美過ぎず、質素でもなく、品の良い調度品が飾られていた。
「申し遅れました、わたくし、奴隷商を営んでおりますドレーンと申します」
「俺はケイオス。冒険者だ」
「ほほう、貴方がケイオス様でございましたか。ご噂はかねがね伺っております」
「どの様な噂かはわからんが、たぶん俺の事だろう。ギルドでは色々やらかしたからな。さっそく奴隷について説明してほしいのだが」
「失礼しました。ケイオス様は奴隷についてご存じないようですので初めから説明させて頂きます」
ドレーン曰く、奴隷には幾つか種類があるらしい。借金を返せなくなった者や必要に迫られて身売りした一般奴隷、犯罪を犯して奴隷に落とされた犯罪奴隷、戦争で敵国から連れてこられた戦争奴隷がいる。その他に無理やり連れてこられて奴隷にされた違法奴隷もいるらしい。奴隷には服従の首輪というアイテムが付けられ、契約者の意思で苦痛を与えることができる。魔法的制約のため一生外すことができず、首輪が外れるときは奴隷が死んだ時だ。首輪が壊れても奴隷が死ぬので注意が必要だ。奴隷には人権がなく、基本的には主人の持ち物として扱われる。どの様に扱おうが主人の自由だ。たとえ殺してしまっても罪には問われないそうだ。人権というものは存在しない。ドレーンの店で扱っているのは、主に一般奴隷だそうだ。
「それじゃあさっそく奴隷を見せてほしいのだが……。性別はもちろん女だ。戦闘ができれば尚いいが必須の条件ではない。多少高くても見た目のよいヤツがいいな」
ケイオスは自分の欲しい奴隷の条件を並べていく。それを聞いたドレーンは、しばし思案すると奴隷を準備するために席を外した。
「ケイオス様、お待たせいたしました。奴隷を連れてまいりましたので、こちらの方へお越しください」
ドレーンに連れられて向かった部屋には、幾人かの奴隷の女が並べられていた。ケイオスは、その中の一人に見覚えがあった。
「ん? レミ? なんでこんなところに……」
「ケイオス! あぁ……えっと……わたし……奴隷になっちゃった」
ケイオスはレミから奴隷になった理由を詳しく聞いた。どうやら参加したパーティに悪質な所があったらしく、借金をしてしまい、しかも高利貸しに騙されてみるみるうちに借金まみれになってしまったそうだ。ケイオスはソレを聞いて首を傾げる。
「ドレーン、これは違法奴隷の一種ではないのか? 高利貸しってことは詐欺だろ? そんなことが許されるのか?」
「ケイオス様、この国では高利貸しでも契約してしまえば問題はありません。契約をしっかりと確かめなかった本人に非がございます。こうしてダマされる方は稀におられます」
悪質なパーティにひかかったレミはついてなかったということか。
「稀にダマされるヤツがいるのか……。まぁいい。コイツはいくらだ?」
「ケイオス様のお知り合いとのことですので勉強させて頂きます。そうですね……白金貨四枚で結構でございます」
ドレーンは白金貨四枚と言ったが、実際には仕入れ値は白金貨二枚なので儲けは十分に出るのである。それに相手がケイオスという高ランク冒険者なのもあって、適正より少し安い程度の金額を提示したのだった。
「お、そりゃ助かる。ちなみにこの中で一番高い奴隷だと幾らするんだ?」
「この娘でございます。白金貨12枚となります」
「思ったより安いんだな。もっとするのかと思っていた」
「これ以上のランクになりますと奴隷オークションに行くのがよいでしょう。興味がおありでしたら詳しく説明いたしますが」
「いや、今はいらん。そのうち聞きにくるかもしれないから、その時はよろしく頼むとしよう」
「かしこまりました」
こうしてケイオスはレミを奴隷としたのだった。
**
「ケイオス……ありがと」
レミは目を潤ませながら感謝を述べる。変な奴に買われなかったので安心したのだろう。
「気にすんな。知り合いが奴隷になってるの見ちまったらほっとけないだろ。そのかわり俺の奴隷になったんだからたっぷり奉仕してもらうからな」
「うん」
レミの顔が少し赤いのは想像してしまったからだろう。
「そんじゃ宿に帰るか。おっと、その前に服や装備も買っておかないとな」
「え? 装備もいいの? だって、わたし、冒険者を失敗して奴隷になったんだよ?」
「大丈夫だ。次は俺がサポートしてやるからなんとかなるだろ。それにある程度レベルがあったほうが何をするにも便利だからな。夜の奉仕だって、すぐにへばったら楽しめないぞ」
「もぅ、そればっかりなんだから!」
二人は買い物をしてから宿に帰るのだった。
**
その日の夜、ケイオスはレミに秘密を打ち明けることにした。なぜなら、自分の正体をバラさないとスライムプレイができないからだ。
「レミ、寝る前に話しておくことがある」
「なーにー?」
レミは、久しぶりにお腹いっぱいのご飯を食べられたので、上機嫌でベッドの上でごろごろしていた。
「真面目な話だ」
ケイオスが、硬い声でそう言うと、レミも起き上がり姿勢を正した。
「どんな話?」
「俺の正体についてだ」
「しょうたい?」
「そう、実はだな、俺は人間じゃない」
「えっ? だって、何処からどう見ても人間にしか見えないよ?」
「これを見ろ」
ケイオスは手の一部をスライムに変えてレミに見せる。
レミはスライム部分をツンツンとつついている。
「ぷにぷにしてて気持ちいい……。これは?」
「俺は人間ではなくスライム族でな。たぶん世界で唯一の人型スライムだ」
「ほへぇ〜。ケイオスってスライムだったんだ……あっ! だから初めて出会ったときスライムに襲われてる私を一緒になって襲ったんでしょ!」
「……あの時は勘違いの結果だ。スライムに襲われてるレミを見てやりたくなったのは事実だが」
「ふーん、まぁいいわ。別にケイオスが人間じゃなくてもわたしは気にしないし」
「そう言ってくれると助かる。もしも気味悪がられたら快楽漬けにして体に教え込もうと思っていた」
ケイオスはそう言ってニヤリと笑みを浮かべる。
「そんな事言ってるけど、どっちでもやることはかわらないでしょ!」
レミは想像したのか顔が少し赤くなっている。
「まぁ、そうなんだがな。あの時よりもっと気持よくしてやるから期待してていいぞ。スライムだと体の隅々まで舐め回せるからな。人間の意思を持つスライムはすごいぞ?」
ケイオスは腕をスライムに変化させ、レミに絡ませ、ベッドの上へ押し倒した。
そうして、その夜は二人で心ゆくまで楽しんだのだった。
**
ケイオス達は、それから暫くの間はレミのレベル上げを中心に活動していた。ケイオスが前衛に立って、敵の攻撃を全て無効化するので、レミのレベルは面白いように上がっていった。
経験値の入り方はゲームと同じようでヘイトを稼いだ方により振り分けられるようだ。攻撃を防ぐだけのケイオスはヘイトを稼がないので、レミがほぼ全ての経験値を得ることができた。ケイオスが前衛になることで、普通では実現できない程のパワーレベリングとなってしまっている。
この結果を受けて、ケイオスは一つの計画を思いつく。奴隷を買ってきてレベルを上げて高く売り払おうという計画だ。さっそくドレーンの店に赴く。
レミは一人で狩りをさせているので一緒ではない。既に一人でもこの辺りでは問題なく狩れる程度までレベルが上がっているのだ。
「これは、ケイオス様。いらっしゃいませ」
「ドレーン、久しぶりだな。今日はちょっと聞きたいことがあってきたんだ」
「聞きたいことと申しますと、オークションのことでしょうか。でしたら――」
「いや、オークションのことではない。この前、レミを買っていったが、俺がレベリングを手伝ったら簡単にある程度のレベルに達したんだ。だから俺がレベルの低い奴隷を買っていって、レベリングし、この店に卸すことができたならどうだろうと思ってな」
「ふむ。面白い考えですね。私どもでは手間が掛かり過ぎますので、出来たとしてもそのようなことは行いません。それに死んでしまうリスクを考えると割に合いませんな。参考までにどの程度のレベルとなったか教えていただけますか?」
「レミを買った当初がレベル7だったかな。それで今は27まで上がっている」
「なんと!? もうそんなに上げることができたのですか。素晴らしい成果です。そうですね……白金貨三枚は価格を上乗せできると思うので、その半分の白金貨一枚と金貨五枚を売った価格に加えて買い戻すことは可能です。ただし、奴隷の状態が悪くなっていないことは当然として、それ以外の条件も見てみないとなんとも言えません」
「うん。妥当なところだな。じゃあ試しに買っていこうと思う。選ぶから何人か適当に見繕ってくれ。あ、もちろん女な」
「処女のままであれば、レベルアップによる価格の上乗せが大きいですが、どういたしましょう?」
「処女も含めてくれてかまわんよ。ようは膜を破らなければいいのだろう?」
「わかりました。では少々お待ち下さい」
ドレーンはさっそく何人か奴隷を用意してくれた。ケイオスは、その中に一人気になる奴隷を見つけた。黒髪の女だ。顔付きも日本人っぽい。そこでケイオスは自分以外にもプレイヤーが転移している可能性があることに初めて気がついた。
とりあえず黒髪の女は買うとして、残りの検討を進めていく。
「では二人合わせて白金貨15枚となります。……はい、たしかに」
そうしてケイオスの奴隷が二人増えたのだった。もちろん帰りに服と装備を買って帰った。
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ケイオスは奴隷を連れて宿屋の部屋に戻ってきたところ、レミも既に戻ってきていた。人数が増えたのでもっと大きな部屋に変えたかったが、空きがないとのことで、今日はこの部屋で我慢するしかない。
「レミ、奴隷が二人増えたぞ」
「えぇ!? 奴隷買っちゃったの!? もしかして私じゃ不満ってこと……?」
レミは不安になったのか、上目遣いでケイオスを見つめる。ケイオスはレミを安心させるように頭を撫でてやる。
「そんなことないぞ。この二人はレベルを上げて転売しようと思ってな」
「転売? そんなことできるの?」
「レミを買った所で聞いてきた。白金貨一枚半くらいは上乗せして買戻してくれるそうだ。短期間でそれだけ稼げたら結構いい金額になると思わないか?」
「そうだけど……ううん、なんでもない。それじゃあ私は今まで通りってことでいいのね?」
「そうだ。夜の方も今まで通りたっぷり相手をしてもらうからな」
空気が桃色になりかけたが、ここはケイオスが自重する。
「さて、それじゃあ二人とも自己紹介をしろ」
「はい、ご主人様。私はツバキと申します。今後とも宜しくお願いいたします」
黒髪の女はツバキという。和風顔で袴と刀が似合いそうだ。ちなみに処女なのでちょっぴり高かった。プレイヤーかどうか聞いてみたが、どうやら違うらしい。ジパングの出身と言っていたから、この世界には和風な民族が存在しているということのようだ。
ケイオスは残念なような、ほっとしたような複雑な思いを抱いた。
「ボクはウル! 灰色狼の獣人族なのだ。よろしくなのだ!」
ウルは獣人の子供だ。毛の色は灰色というより銀色という方が近いと思う。しかもケモ耳、ケモ尻尾だ。ケイオスにはケモナーの素質もあったようだ。
「かわいいー! 私はレミリア。レミって呼んでね」
レミはウルの事を気に入ったのか、抱きしめて撫で回している。ウルはちょっと嫌そうだ。
「ツバキ、ウル。お前たちに教えておくことがある。俺は人間じゃない」
ケイオスはそう宣言すると、スライムに変化してレミに襲いかかり、ベッドに押し倒した。
「キャッ、ちょっとー、いきなりすぎるわよ」
「見ての通りスライム族だ。これから一戦やるから参加したかったら参加していいぞ?」
ツバキとウルはさすがにビビったようだが、取り乱しはしなかった。
「ごしゅじんさま、すごいのだ! スライムになっちゃったのだ! でも何と戦うのだ?」
「ご主人様、私は処女ですけど……その、よろしいのですか?」
「大丈夫だ。膜は避けてやるから破れることはない。ウル、一戦というのは言葉のアヤだ。これからやるのは気持ちいことだ」
「気持ちいいこと? じゃあボクもやるのだ!」
「二人ともベッドの上にこい。まとめて相手をしてやる」
ツバキはちょっと嫌そうだ。気味が悪かっただろうか。しかし一度スライム姦を経験してしまえば、虜となってしまうので忌避感もなくなるだろう。ツバキもウルはまだ性感が未発達だろうからじっくり攻めるとしよう。その日はスライムで拘束しての焦らしプレイがメインとなったのだった。
**
「これでトドメなのだ! えい!」
ウルは巨大ハンマーを振り回しモンスターにトドメをさしていく。獣人は力が強いので技術を高めるよりも力で圧倒した方が効率が良いので、鈍器を装備させている。レベルアップも順調だ。
「ハッ!」
気合一閃、ツバキは薙刀を振りぬき敵を両断する。初めはただの村娘のようだったツバキも、レベルが上がるにつれ、薙刀の扱いも様になってきた。今ではクルクルと回転させて、遠心力で威力を増した攻撃を繰り出している。
ケイオスは、ツバキには刀を装備させたかったのだが、どうやら長物の方が適正があったようで、薙刀で妥協したのだ。防具も紺袴を着せているので、ツバキの姿は立派な大和撫子のようだ。薙刀や袴などの装備を取り出すと、ツバキはジパングの武具に似ていると驚いていた。
彼女たちの武具は全てケイオスのアイテムボックスに入っていたものを使っている。ゲーム内のアイテムボックスは異空間倉庫という設定なので、容量は個人の資質によって左右される。転生を何度も繰り返しているケイオスは、転生の度にアイテムボックスが拡張されたので、その容量は膨大なのだ。それは、この世界に来てからも引き継がれていた。
「よし、今日はここまでにしよう。レベルもだいぶ上がったんじゃないか?」
「はい、ご主人様。今ので24になりました」
「ボクは26なのだ」
「うん、いいペースだ。明日はもうちょっとレベルの高い狩場に行くとしよう」
ツバキとウルは順調にレベルを伸ばしていたが、問題も発生しつつあった。ケイオスのスライムは凄まじく、日を追うごとに、二人の依存度が増しているような気がするのだ。最初は固かったツバキも今ではデレデレである。懐かれすぎてしまったのだ。ケイオスもそんな二人に情を抱いてしまっていたので、手放すのが惜しくなってきていた。
ケイオスは今夜あたり皆で話しあおうと考えていた。
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夜、宿でレミと合流したケイオス達はさっそく話し合いの場を設けた。
「聞くまでもないと思うんだが、二人はどうしたい?」
「ボクはごしゅじんさまといっしょにいるー!」
「私もご主人様と一緒に居たいです!」
「レミはどうだ? 問題あるか?」
「わたしもみんなと一緒に居たいかな。それにあんなに可愛がったのに今更バイバイってのは可哀想よ……ねぇ?」
「はぃ……私はもうご主人様が居なければ生きていけません」
ツバキは夜の営みを思い出したのか恥ずかしそうだ。
「うん、じゃあ問題ないな。二人は今後も一緒にいるということにしよう。ついでだからこれも話しておく。近いうちにアイオーンの街を出てホーライの街へ行く予定だ」
「んー、アイオーンから離れるの? それはレベル的な問題?」
「そうだ。さすがにこの辺りじゃ、もうレベルも上がりにくくなってきたしな。ホーライなら周辺は弱いが近くに魔境があるし、レベル上げにも適している。それに流通の要所でもあるから何かと便利だろうしな。あと人数も増えたから拠点も欲しい」
「ほへぇ〜、家買っちゃうの?」
「家? 巣を作るのだ? 子作りするのだー!」
ウルがなんか言ってるがそれほど間違ってはいない。ケイオスは、あえて訂正しないで、そのまま子作りに励むことにした。今夜も賑やかな夜になりそうだ。