第一話 「異世界に紛れ込んで冒険者ギルドに登録する話」
プロットなしなのでタイトルはそのうち変わるかもしれません。
何も無い草原に男が一人佇んでいた。
空には薄らと白い光の橋が架かっている。地平線の果てから伸びていき、反対側の地平線へと消えていく大きな橋だ。光の橋は細かい氷の粒子で出来ていて、太陽の光を受けてきらきらと輝いているのだ。
男は周りを見まわし、首を傾げる。
「ここは……ドセイ?」
男は別のフィールドにいた筈なのだが、気がついたらドセイに移動していたのだ。
ドセイは「クロノス・ワールド」の初期フィールドだ。上空に土星の輪のようなものが見えるため、ドセイと呼ばれている。
「クロノス・ワールド」とは日本で爆発的ヒットを記録したCAVE-RPGだ。電脳コントロールを採用した没入型で、リアルな仮想現実とストレスのない操作性が人気を呼んでいる。子供から老人まで多数の中毒者を出し、社会問題にまで発展した。
しかしそれもわからなくはない。何しろリアル過ぎるのだ。直接脳髄に流し込まれる電気信号により現実以上の感覚を受け取ることができる。違法パッチを入れればセックスすら可能となり、手軽にリスクなくドラッグ以上の快楽を得ることができるのだ。もはや電脳ドラッグと言っても過言ではない。
そのため電脳世界のアバターはもはや現実世界の自分自身より重要となってしまった。アバターの自由度は高く、容姿も自由自在である。人間以外のファンタジーな種族も選択できる。マニアックなところでは触手生物になって、触手プレイを楽しむ人もいるという。
「クロノス・ワールド」はRPGだが、もはや何でもありの広大な世界を構築していた。
男はそんなマニアックな一人で、粘体生物という種族を選んでいた。スライムというとドロドロの粘液状のアバターとなるのだが、男はカスタマイズを繰り返し人間を再現することに成功していた。実現させるにはかなりの情熱が必要だ。男自身も一体どれくらいの時間と資金をつぎ込んだか覚えていない。
そんな人型粘体アバターの男だが、ちょうど転生クエストをクリアしたところであった。
「なんでドセイにいるんだ? さっきまで転生しようとしてたのに……『Status Open』」
『Status Open』は文字通り自身のステータスを表示するための命令だ。
「クロノス・ワールド」では音声コマンド方式を採用しているので、命令を声に出して唱える必要があった。
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ID: xxxxxxxx
名前: ケイオス
種族: スライム
性別: 男
レベル: 99
体力: 9999 / 9999
魔力: 9999 / 9999
経験: -- / --
==能力==
筋力: 99 - 攻撃: 99
体力: 99 - 防御: 99
器用: 99 - 命中: 99
敏捷: 99 - 回避: 99
知力: 99 - 魔攻: 99
精神: 99 - 魔防: 99
魅力: 99
幸運: 99
==耐性==
物理 - 斬: 100 / 突: 100 / 打: 100
魔法 - 火: 100 / 冷: 100 / 雷: 100 / 毒: 100
==特性==
再生, 分裂, 溶解, 吸収
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男の名前が判明した。ケイオスというらしい。
「なんだこれ? 全部カンストしてやがる。バグか?」
ケイオスはリログすれば直るかと考え、ログアウトを実行しようとする。
リログとは、一度ログアウトして、もう一度ログインし直すことである。
「『Logout Start』……あれ? 『Logout Start』……切断シークエンスが始まらない?」
通常ならログアウトコマンドを実行すれば終了処理が開始されるはずだ。
しかし、ケイオスがいくら『Logout Start』と唱えても一向に終了する気配がない。
「はぁ〜、一体なんだってんだ。『Call GM』……くそっ、こっちもか」
緊急連絡用にGM、つまりゲームマスターと呼ばれる管理者権限を持つ者に連絡するコマンドも使えなくなっていた。フレンドやギルドメンバーへのコールも機能せず、ケイオスは誰とも連絡をとることができなかった。
「『Map Open』……これも使えないのか」
『Map Open』は現在位置を調べるためのコマンドだ。本来ならば地図が表示され、現在位置を青い点で指し示すのだ。
ケイオスは色々試してみたが、結局ステータスとアイテムボックスのコマンド以外は使用できなくなっていた。
「これからどうすっかな。ここがドセイのどの辺かにもよるが……とりあえず移動すっか」
ドセイの草原フィールドは、はじまりの街であるアイオーンに隣接している初心者用のエリアだ。当然規模も小さく、敵も弱い。適当に走っていてもすぐにアイオーンの街に付けるはずだ。
**
ケイオスは、走って移動していたが、しばらくすると右前方に人影が見えてきた。
「お? 他のプレイヤーか? コールが使えるかどうか聞いてみるか」
人影はどうやら戦闘中のようだ。近づくに連れてその姿がはっきりわかるようになってきた。戦闘中のアバターは女だった。赤い髪に均整の取れた体型、容姿は文句なく美人と呼ばれる部類だろう。序盤の敵であるブルースライム相手に苦戦していることから、レベルは低いことが窺える。
ケイオスは近くの岩にドカッと腰掛け、戦闘が終わるのを待つことにした。横殴りは一般的にはマナー違反だからだ。しかしそんな気遣いとは裏腹に戦況は悪化していく。
「あ~、何やってんだ。なんか負けそうだし、助けるか……おい、女!」
「え? キャッ」
ケイオスが声をかけたので注意が逸れたのか、女はブルースライムに囚われてしまった。
女は全身を取り込まれてもがいている。更に口を塞がれているため喋ることができないようだ。
「おぉ! スライムとの絡みを見せてくれるとは! わかってるねぇ〜」
スライムがうにょうにょと蠢くさまを見たケイオスは、面白いことになったと、女を助けずに見物することにした。
「『リジェネ』……死なれると面倒だしな。これで大丈夫だろ」
ケイオスは手を翳し、リジェネの魔法をかけた。リジェネは一定時間毎に傷を癒す回復魔法だ。ケイオスは何度も転生を繰り返しているので、ほとんど全ての魔法を使うことができた。
そして、魔法を使うには音声で『Magic』のコマンドの後魔法名を唱えればよいのだが、カスタマイズして、モーションと関連付けることもできる。この場合は、手を翳すというモーションを『Magic』コマンドの代わりに用いたのだ。
暫くすると女の服がスライムに溶かされ、半裸を晒すようになった。女はケイオスに目で必至に何かを訴えかけているようだが気づいてもらえない。
ケイオスは女の裸に目が釘付けであった。ガン見である。スライムモノはケイオスの大好物であった。何せエロいことをするためにわざわざスライムのアバターを選んだほどである。
「うひょー、すげーな。いつの間にこんな機能付いたんだ? というかR-18じゃねーか」
「クロノス・ワールド」は全年齢対象のゲームである。R-18制限が外れているとすれば違法パッチを当てた端末同士となる。
ケイオスは普段はマナーを守る比較的マトモなプレイヤーに分類される。ただエロいだけだ。そしてエロい事をするのは、相手が違法パッチを当てているときのみと決めている。その辺りは暗黙の了解というものだ。
「あ~、見てたらムラムラしてきた。俺も参加すっか」
ケイオスの種族はスライムなのでアイテムは装備できない。服を装備しているように見えるのは、そうカスタマイズされているからだ。実際は全裸なのである。つまり服を脱がずにそのまますぐに参加できるということだ。
ケイオスは赤毛の女に近寄るとスライムごと抱き寄せた。そうして、絡みあう半裸の男女に、透明なブルースライムのデコレーションというひじょーにエロい絵が完成した。
**
ケイオスは十分に堪能したので、女をスライムから解放してやった。
女は体内に入り込んだスライムを苦しそうに吐き出している。いくら「クロノス・ワールド」がリアルで、違法パッチを当てているといってもコレはおかしい。痛みや苦しさといった感覚はほとんど伝わらないようになっているからだ。
「おい、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ……ちょっと! いきなり何すんのよっ!」
「うわっ」
女がケイオスに掴みかかり激しく揺さぶっている。露出された胸もプルンプルンと揺れている。その揺れが怒りの度合を表しているようだ。
「おい、まて。あー、すまん。悪かった。あれは誘ってると思ってつい参加しちまったんだ」
「どこをっ! どうみたらっ! さそってるっ! なんてっ! 見えるのよっ!」
ケイオスがなんとか女を落ち着かせることができたのは、それから暫くしてからのことだった。
女はアイテムボックスからマントを取出し羽織り、裸を隠している。
「とりあえず自己紹介しないか? 俺はケイオス。バグってドセイに飛ばされてきたんだ」
「私は……私の名前は言わないわ。バグって? ドセイって?」
「じゃ、スライム女な。ドセイも知らねーのか? 始めたばっか?」
「ちょっ、スライム女って何よ! そんな変な呼び方やめてよね!」
「だって名前教えてくれねーんだろ? じゃあこっちで適当に呼ぶしかねぇじゃねーか」
「くっ……だって! 助けてもらったのは確かだけど、どさくさに紛れて襲ってきたゲス男になんか名前教えたくないし」
「無理やりだったのは悪かった。ほんとーにすまんと思ってる」
「はぁ、まぁいいわ。レミって呼んで、ゲス男」
「……ゲス男はやめてくんねーか? さすがにちょっとアレ過ぎるんだが」
赤毛の女はレミというらしい。それからケイオスとレミはお互いの状況を説明し合ったのだが、どうにも話が咬み合わない。レミは「クロノス・ワールド」自体を知らないようだ。
「なんでクロノス・ワールドを知らないんだ?」
「なんでって、聞いたこと無いし」
「じゃあ今は他のクライアントソフトから繋いでるのか?」
「クライアントソフト?」
「クライアントソフトってのはサーバーに接続するために必要なソフトウェアのことで――」
「ちょっと! さっきから何言ってるかわかんないんだけど」
話が噛み合わない二人だったが、レミが何もわからないということがわかった。パソコンや電脳、掲示板などについても知らないようだ。「クロノス・ワールド」をプレイしている以上、これは有り得ない。
そこでケイオスは一つの可能性を思いつく。すなわちここはゲームの中ではなく「異世界」ではないか、ということだ。レミの話を整理すると次のようなことがわかってきた。
ここはプロメテウス王国で、はじまりの街アイオーンの近郊の草原である。プロメテウス王国なんてゲーム時には存在していなかったが、異世界にはあるのだろう。「はじまりの街」という呼び名は昔から呼ばれているからそう呼び続けているそうだ。となると、異世界はゲームの未来ということになるのだろうか。
使えるコマンドはステータスとアイテムボックスのみで、マップやコールは聞いたことがないという。これはケイオスがひと通り試した通りであった。
レミはアイオーンの冒険者ギルドに登録したばかりの新人であった。スライムを狩ってレベルを上げようとしていたという。
そして何より重要なのは、レミに中の人などいない、正真正銘の女だということだ。ケイオス的に、レミが女だったのは嬉しい限りなのだが、これで「異世界」の可能性がますます高くなってしまった。
ひとまずレミの案内でアイオーンに行くことにした。アイオーンまでは歩いて半日くらいの距離があるそうだ。ゲームだと縮尺が適当だから狭く感じるが、現実になるとそれなりに距離がありそうだ。
**
アイオーンの街が近づいてきた。
「じゃあ、まずは冒険者ギルドにいくけど、クズ男もそれでいいの?」
「ゲスもクズもやめてくれ……。無くした防具買ってやるから」
「ほんと!? ラッキー。ありがとね、ケイオス」
語尾にハートマークが付きそうなくらいの声音だが、ケイオスは何も言わない。余計なことは言わない、それが処世術というものだ。
「それじゃあ先に防具屋ね。さすがにこの格好は落ち着かないから」
レミはそういってマントをぴらっと捲る。隙間から覗く肌色がなんともエロい。全部見せるよりチラっと見せたほうがそそるというものだ。
ケイオスはそれをなるべく見ないようにしながらレミを急かす。見てしまったら昂ってしまうからだ。ケイオスの体は普通ではないので昂ぶっても外見に変化はなく、それ程困るということはない。ただ、目の前に獲物がいるのに、我慢しなければならないというのは苦痛なのだ。
「かまわん。ほら、さっさと行くぞ。早くしないと買ってやらないぞ」
「わわ、行くよ、行きます。置いてかないでよ」
アイオーンの街へ入り、防具屋への道のりを進む途中、ケイオスは街中の様子を見て、ここが「異世界」であることに確信を持った。ゲームとは異なり生活感がありすぎるのだ。機械では表現できない人の営みがそこには確かにあったからだ。
「ここはゲームの中じゃないのか……」
「なんか言った?」
「いや、なんでもない」
レミにはそう言ったが、ケイオスはショックを隠し切れず、これからどうなるのか不安だった。
そうしてやってきた防具屋だが、それはゲームと同じ位置にあった。今までの知識が全て無駄になるわけではなさそうなのでケイオスは安堵していた。
「そういや金はこれで足りるか?」
差し出したケイオスの手には金貨が載っていた。ゲームでの価値だと1,000Gに換算される。単位はGという。物価が異なるのでどれくらいの価値があるか不明だが、おおよそ日本円にして10万円といったところだろうか。序盤には大金だが、中盤にははした金となる程度の金額だ。
ケイオスは、異世界だと確信した今、通貨はそのまま使えるのか確認しておきたかったのだ。
「わ、金貨! こんなに買ってもいいの?」
「1,000Gまでだったら何でもいいぞ」
「1,000G?」
「この金貨の価値だが……」
「うーん? ゴールドっていう単位は使わないけど。単に金貨一枚って数えるよ?」
「そうなのか」
ケイオスは、数え方が違うだけなら問題ないと判断した。
実際にはこの国で使われている貨幣はゲームとは異なるので使えないのだが、それはすぐにわかるだろう。
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「なんだい、この金貨は。プロメテウス金貨じゃないと、ここじゃ使えないよ。」
「レミ……使えないみたいだぞ。どうしたらいい?」
お金の心配をしなくてもいいと思い安心していたケイオスは、レミをジト目で見つめる。
「えっとー、わたし、金貨なんて初めて見たからわからなかった。どうしよう?」
可愛らしく困った振りをするレミにイラっとしたケイオスだったが、しかたがないのでアイテムボックスから余っている素材を出して売ることにした。
「店主、素材の買取はやっているか? コイツはどうだ?」
竜鱗10枚をカウンターに並べる。
「はいはい、やってますよ。どれ……? こ、これはっ!」
「すごーい、これってドラゴンのウロコ? ケイオスって凄腕の冒険者だったの?」
店主が大げさに驚いている。レミのケイオスを見る目も変わったようだ。
「お客さん、これを何処で……? うちなんかに売っても大丈夫かい?」
「問題ない。他より安くてもいいから買い取ってくれ」
たしかに序盤の街であるアイオーンなんかで取れる素材ではないので、この辺りでは滅多にお目にかかることはないだろう。ゲームが進めば上級素材として集めることも多く、ケイオスはたくさん持っていたのだ。大きさと重さに対しての換金率の良さもあって人気の素材であった。ちなみに価値は竜鱗一枚で金貨一枚となる。
「お客さん、竜鱗一枚でプロメテウス白金貨一枚でどうだい? うちじゃこれで精一杯だよ」
「白金貨一枚? 店主がそれでいいなら構わないが……」
予想より高く売れたのはいいのだが、白金貨一枚という数字にケイオスは首を傾げる。白金貨は金貨10枚分だ。
「店主、率直に聞くが、竜鱗はどれくらいで売れるんだ?」
「王都で競売にかけたら白金貨三枚にはなるんじゃないかい」
ゲームとは物の価値が異なるようだ。レミはその価格を聞いて呆然としている。よほど衝撃的だったのか。
「そうか。店主、感謝する。その価格でいいから買い取ってくれ」
「はいよ、まいどあり」
ケイオスはこれからしばらくは物価の違いに頭を悩ますことになるのだった。
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二人は、冒険者ギルドまでやってきた。
「レミ、案内をありがとう」
「いえいえ、どういたしまして。こっちこそ防具買ってもらってありがとね」
防具を買ってあげたのが功を奏したのか、レミの機嫌はいい。
「まぁ、それはいいんだ。美味しい思いをした礼とでも思ってくれ」
「わたしもそんなに気にしてないからいいの。……気持よかったしね」
レミはケイオスとスラムに陵辱されたのを思い出したのか恥ずかしそうにしている。
「寂しくなったら会いに来いよ。相手してやるから」
「もぅ、バカ」
赤くなったレミはケイオスの胸を叩いた。
「それじゃあここまでだな。頑張ってレベル上げしろよ?」
「もちろんよ。強くなってアンタを驚かせてやるんだから!」
「じゃあな、レミ」
「じゃあね、ケイオス」
ケイオスは冒険者の登録用カウンターへ、レミは依頼用カウンターへと、それぞれ歩いて行った。
**
ケイオスは冒険者ギルドに登録することに決めていた。お金は素材を売ればいくらでも手に入るが、放出し過ぎれば値崩れを起こすだろうし、余計な注目を集めてしまうだろう。この世界での生活基盤を手に入れるためには冒険者となるのがてっとりばやい。それにゲームでも普通は冒険者から始めるのが一般的なのだ。そんなわけで冒険者ギルドへやってきた。
「こんにちは、冒険者に登録したいんだが」
「こんにちは。登録ですか? 登録料銀貨一枚掛かりますがよろしいですか?」
「問題ない。……ほら、これでいいか?」
ケイオスは先ほど防具屋で買い物をして手に入れたプロメテウス銀貨を渡した。
この国での貨幣はプロメテウス銅貨から始まり、鉄貨、銀貨、金貨、白金貨と存在している。時勢によって価値が変わるが、だいたい10枚で一つ上の貨幣へと繰り上がる感じだ。ゲームも貨幣の区分けは同じだが、何ゴールドと数字で表されるため分かりやすかったのだが、現実となると色々と複雑になるらしい。
「はい、確かに。それではこちらの水晶に手を置いて暫く動かないでください」
受付嬢は片手で持てるくらいの水晶球を取り出すと、カウンターに乗せた。
「これは?」
「これはギルドカードを作るための魔導具です」
「へぇ、カードにはどんな情報が表示されるんだ?」
「ステータスに表示される情報はひと通り。ですがレベルや能力は隠せるので心配いりません」
ゲーム時では、元からウィンドウがあったのでこのような仕組みは存在しなかった。この世界特有のものだろう。
ケイオスは水晶に手を載せじっとしていると、水晶が淡く発光しだした。その光が水晶から離れ、一枚のカードを形作る。
受付嬢が完成したカードを手渡してくれた。
ケイオスはカードの内容を確認すると、数値がカンストしていたので、殆どの項目を非表示にしてしまった。受付嬢が内容を見ていたらややこしいことになっていたかもしれない。
「はい、もう結構です。これにて冒険者登録は完了となります。そのカードがギルドにおける身分証の代わりとなりますので無くさないようご注意ください。無くしてしまいますと再発行となり、ランクなどは初めからとなってしまいます。詳しい説明は初心者講習で説明されます。明日講習を受けることができますが、いかがいたしますか?」
「それは助かるな。お願いしよう。お金はかかるのか?」
「いえ、先ほどの登録料に含まれておりますので必要ありません」
「そうか、ではまた明日来る」
ケイオスは受付嬢に礼を言ってギルドを出て行った。