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わんぱくな小学生は苔の塊で遊ぶ

作者: サンシーク

 これは僕が小学三年の時に体験した実話です。

 当時、僕は地元山梨の富士五湖の近くにある『子供冒険会』という、いわゆる、ボーイスカウトのような集まりに入っていました。

 その会は地元の子供たちに樹海の自然の素晴らしさにふれて欲しいという思いから、地元の樹海探索のレンジャー達が立ち上げたもので、小学一年生から中学三年生まで沢山の地元の子供たちが所属していました。当時のこの会の主な活動は、隔週で日曜日にレンジャー同伴で子供たちが樹海の中をハイキングしたり、比較的安全な溶岩樹型などの洞窟内の探索、植物の調査などをしていました。

 ある初夏の日曜日の事です。その日も僕は装備を整えこの会に参加し、樹海内のハイキングを満喫していました。岩を抱くように這う針葉樹の根や苔、落ち葉が敷き詰められたまるで枯れ葉の絨毯のようになっている地に生える広葉樹の木々、そしてそれらの樹木、草花、岩土の独特の匂い、僕は参加者達の列の最後方でしんがりのレンジャーと一緒にそれらを楽しんでいました。

 しばらくそうして歩いていると、前方、列の中央辺りの小学校中学年位の男子三人が、緑色のサッカーボール位の大きさのの塊みたいなものをサッカーボールのように蹴り回して遊び始めました。彼らの近くのレンジャーが注意しましたが聞き入れず、ふざけながらそのまま草の塊みたいなものを蹴りながら列の前方へ行ってしまいました。

 僕の近くにいたレンジャーが


「あの子たちが蹴っていたのは、多分小さな岩に苔が沢山重なり合って出来たものだと思うよ。でも、自然にあれくらいの大きさになって、あぁいう風な綺麗な球体になるのは凄い珍しいよ。」


 と教えてくれました。

 それから、数分がたった頃の事です。列の前方の方から突然


「「「うわぁ!!!」」」


 と数人の子供の叫び声が聞こえてきました。その声を聞いた僕の側にいたレンジャーは一瞬で緊張感漂う引き締まった表情になり、周りの子供たちに向かい


「皆、近くのレンジャーの側に集まりなさい!」


 と声をかけました。その指示に従い僕もレンジャーのすぐ側に駆け寄りました。


「何があったんだ?」


 レンジャー同士で少し話をしていましたが、とにかく皆で列の前方へ行くことにしました。 僕のいた最後方と叫び声が聞こえてきた列の前方では皆バラけて歩いていたため、二百メートルくらいは離れています。僕ら最後方組が辿り着いた時にはもう、レンジャー達含め僕ら以外の参加者全員が叫び声が聞こえた場所へ集まっていました。そこには先ほど苔の塊を蹴っていた三人もいました。しかし、様子が変です。彼らは見るからに顔面蒼白になっており、レンジャーにしがみつきながら涙目で少し震えていました。

 と、そこで僕は気付きました。集まっている全員の視線がある一点に集中していることに。なので、僕も皆に習い、視線が集中している先に目をやりました。

 そこには、先ほどの男子三人が蹴っていた苔の塊がありました。しかし、よく見ると蹴っていたものに間違いないのですが、それは苔の塊ではありませんでした。

 蹴られている内に苔が剥がれたのでしょう、半分以上苔が剥がれ、中身が露わになった薄汚れた白い『それ』は、


下顎の無い人間の頭蓋骨でした。

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