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日陰の恋花  作者: 篠宮 梢
37/40

☆+36 そうだ、出かけよう①

 ――不倫・浮気。


 それは一夫一婦制の日本では不道徳な事であり、認められない行為。それでも、この胸に一度宿ってしまった想いは簡単には消せない。消そうとも思わない。と言うより、誰になんと誹られようともきっと私は生涯相手を想い続けるのだろう。


「柚妃、具合は大丈夫か?」


「うん、平気。」


 10月も下旬になれば、そろそろ木枯らしも珍しくない季節になってくるし、冬支度もしなくちゃならないから何かと地味に忙しい季節でもある。だからと言って今の内にあれやこれやと冬用の衣類を買えば私はすぐに自己破産してしまうかもしれない。


 ちらっと財布の中身を確認すれば、諭吉様が三人しかいらっしゃらない。これで三週間暮せと言われたのなら、きっと余程の贅沢をしなければ暮らせるし余裕だと思う。でもきっとあの人は無理なんだろうな、とあの女の人を思いだしてしまったのは、きっと少し後ろめたいから。


 弁解する訳じゃないけれど、私が後ろめたさを感じているのはあのヒトじゃなくて、歌音ちゃんに対して。


 弌葉さんによれば、歌音ちゃんは信じられなかったが、正真正銘自分の娘だったらしく、離婚しても歌音ちゃんだけは引き取りたいと思っているらしい。その為に今の内から今後この先に待ちうる離婚調停の為に色々な準備をしているみたいで、最近の休みは例外なく忙しくしている。


 でも今日だけは特別だと、朝早くから私の家に勢一杯お洒落した歌音ちゃんと私を迎えに来て、今は弌葉さんが運転する車の中。

 因みに歌音ちゃんは後部座席にておねむの真最中。


 きっと朝が早かったせいだろうと、喉の奥で笑う弌葉さん。


 今日のお出掛けの目的地は歌音ちゃんがいる事も考えて遊園地にしようかと思っていたらしいのだけれど、歌音ちゃんたっての願いと言うか、おねだりで美術館になってしまった。


 まぁ、私も美術館は好きだから良いけれど、きっと歌音ちゃんにはつまらないと思う。なのにどうして美術館を行きたい場所に選んだんだろう。でもせっかくのお出掛けなのだから楽しまなきゃ損と言うモノ。


 車は今、道路をスイスイと渋滞にはまる事無く順調に走っている。

 このまま行けば開館時間ピッタリに着くとのこと。


「歌音ちゃん、よく寝てますね」


「昨日の夜は遅くまで起きて興奮していたからな。君と逢う事が余程嬉しく、楽しみだったらしい。」


 愛されてるな、と、歌音ちゃんを気遣って小さな声で弌葉さんの言葉に、私はこのヒトを好きになって良かったと、また密かに思い直したのだった。


 

 


 

 

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