☆+34 友達・戦友・仲間・同僚
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まだはっきりとは目立ってきてはいないけれど、それでも社内報で一斉に知らされただけあり、あの人のお腹や体調を、これ見よがしに気遣う人もちらほらと出始めてきた今日この頃、私は相も変わらずに淡々とカフェで働いている。
そんな私を心配したり、気遣ってくれる人は実を言えばあまりいない。友達は友達でも、公私をはっきり分けているから、私を特別に庇ったりしない。けれど、他の社員達と一緒に私を蔑んだりもしていない。
女史達は基本、自分の犯した物事に対するツケや尻拭いは、全て己で片をつけろという主義で、あまり首を突っ込んでこない。かといって、、別に冷たい訳じゃない。
相談すれば助言はくれるし、忌憚のない意見だってくれる。けれど、それはそれ。自分から相談しなければ、彼女達は決して助けてくれない。例えそれが傍から見て、蔑ろにしていると見られ、取られるとしても。
だから私は忘れていたのかもしれない。
彼女達が実はものすごく仲間意識が強く、友人に対する愛情が執愛の域まであると言う事を。
「まずは、どういう事か教えて貰いましょうか。」
「な、な・・・」
「何を?、とか言って惚けるんじゃないわよ?こっちはネタも証拠もしっかり掴んでんのよ?さっさと吐いて楽になっちゃいなさい。」
そう言って、少し早いお昼休憩に入ろうとした私の手首をがっちりと掴んだのは、滑らかな爪に綺麗なネイルが施されたゆり子の手。そしてそのゆり子の言葉に大きく頷き賛同しているのは、ご存じ、壬と清田女史。三人は私がカフェのキッチンから出てくるのを待ち構え、それを何も知らない私がカフェから一歩出た所で今に至る。
あぁ、私は忘れてた。
(そうよ、そうだったわよね。)
三人は三度の飯と同じくらい、ゴシップや真実を探るのが好きで、それに仲間意識がズバ抜けで強く、深い。いつもなら、私も程よき頃に相談をしたり、悩みや真実を打ち明けたりするのだけれど、今回は問題や悩みがディープ過ぎて話せなかった。
と言うか、嫌われるじゃないかと思って打ち明けられなかった。
「水臭いわよ、柚妃。私達、友達で同僚で、戦友じゃない。例え勝ち戦だったとしても、戦友を信じないで一人で闘っていたら、敵の大将に返り討ちにされちゃうのよ?」
「そうよ。相談くらいしなさい。まぁ、タダでとは言わないけど。」
「そうだぞ。相談くらいしろ。」
壬の大きな手が私の髪をクシャクシャと掻き回す。
(私は、一人じゃない。みんなが居てくれる・・・。)
何を肩肘張っていたのだろう。
苦しければ助けてと素直に言えばよかったのに。
寂しければ寂しい、辛ければ辛いと言えばよかったのに。
「ごめんね・・・、ありがとう、みんな。」
自然と笑みが零れたのは久しぶりだった。今までは意識して、どこか強張った表情だったかもしれない。でも、私は今思い出した。私には本音が溢せる相手がいたという事を。今はまだ公には甘えられない弌葉さんも、確かに甘えられ、本音を言える相手ではあるけれど、女史達にしか言えない事もある。
「お詫びは松谷のワラビ餅セットで勘弁してあげるわ。感謝しなさい。」
三人は私の現状を本当に総て掴んでいるのか、以前より大分安い賄賂で許してくれた。その後、私達は、弌葉さん(社長)の奥さんが身籠っている事へ対する疑惑と、私の今までの行動の説明と謝罪を求められ、私はそれに素直に応じて、久しぶりに良く笑って過ごした。