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日陰の恋花  作者: 篠宮 梢
22/40

☆+21 御鹿倉家の冷蔵庫事情

 一体、これってどういう事?

 冷蔵庫の中が空っぽって、どう言う事?

 戦時中でもあるまいし。


 エプロンをして(歌音ちゃんが貸してくれた)、髪を一本に縛り、御鹿倉家の立派な冷蔵庫の前に立ち尽くす私の顔は、ここ最近で最高に間抜けているに違いない。けど、それも仕方がないと思う。

 立派なのは外見だけで、肝心の中身は空に近く、入っているのはミネラルウォータ―と、腐りかけの生ものが数品。


 これでどんな食事生活を送ってきたのか、嫌でも判ってしまう。


「ハンバーグで良い?かのちゃん」


 一応念の為と、スーパーで買ってきた材料をキッチンに出せば、手を洗い終わり、こちらに来ていた歌音ちゃんに聞けば、歌音ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。


 やっぱりまだまだ子供だ。

 子供が好きなのはだいたい決まっている。

 弟の彩都が好きなモノは歌音ちゃんも好きかも知れないと思ったのだ。


 鼻歌交じりに玉葱を刻めば、横からひょっこりと歌音ちゃんが顔を覗かせた。

 その歌音ちゃんの目はきらきらと輝いている。

 多分、あの人は料理をしないのだろう。


 やけに真新しさが目立つフライパンや包丁、開けられていない調味料達。

 全くもって宝の持ち腐れだ。


 合挽き肉とバターで良く炒めた飴色の玉葱を混ぜ、良く練り、成形し、充分温めたフライパンでそれをじっくりと焼けば、メインは完成。その付け合わせはお手軽グリーンサラダと、コーンスープ。


 一応お米とパンの両方を用意したのは、社長の好みが判らなかったから。


「よし!!完成」


 きっちり一人分づつ皿に盛り合わせ、ダイニングテーブルに並べれば、お子様は早速といわんばかりに食べ始めた。


 誰かの為に作った料理を食べて貰える。

 それがこんなに嬉しい事だったなんて、知らなかった。


 私は歌音ちゃんに望まれるがまま、一緒にお風呂に入って、社長が帰ってくるまで幸せな気分に浸っていた。  


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