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日陰の恋花  作者: 篠宮 梢
13/40

☆+12 遠足②

 遠足は季節を肌で直接感じ取り、なおかつ体力の向上や、スキンシップが主な目的。

 それを理解出来ないのは、生まれて間もない赤ちゃんくらいなのだと私は思っていたけれど、どうやらそれは大きな間違いだったのかもしれない。


(文句言うんなら、最初からこなきゃ良いのに。)


 やれ足が痛いだの、疲れただの。

 化粧が崩れる、こんなのに何の意味があるだの。

 終いには時間の無駄だと来た。


 ごちゃごちゃと不平不満を口にしながら、子供の手を握る訳でもなく、ダラダラと歩く母親とも言えない母親達の言動に腹が立つ。


 せめて自分の子供と手を繋ぐなり、その口を閉じるなりして欲しいモノだ。


 見るからにどこぞへお出掛けスタイルで遠足に来る母親の気が知れない。

 呆れるどころか、笑いさえ出て来ない。


 まさしく開いた口が塞がらないとはこんな時に使う言葉なのだと実感した。


「ママ、なんかクサイ。」


 うん、彩ちゃん。

 私もそう思うよ。

 でもね?


「彩ちゃん、臭いと思うから臭いの。歩いていれば、気にならなくなると思うよ?」


 口は災いの基。

 余計な事を言えば、私の可愛い彩都が虐められるかもしれない。


「さすがゆきママだね、さいと君。」


「うん、ママは父様の次にものしりだから。」


「いいなぁ~。かのんもゆきママがママが良かったのになぁ~」


 そんな私の意図を知ってか知らずか、仲良く手を繋ぎ合せてらぶらぶしてる。

 しかし、その発言内容が頂けない。


 特にかのちゃん、あなたのその言葉が非常に頂けないから!!

 

 じっ、と、期待に満ちた視線が刺さって来るのは気のせいだろうか。

 いや、気のせいではない、はず。


 仕方なく目線を合わせる為にしゃがみ込もうとした時、くらり、と、立ち眩みを起こしてしまった。


 流石に夜中の3時起きは辛い。

 それだけでなく今日は運が悪い事に、月1のお客様の初日でもある。


(あぁ、でもそんなこと言えない・・・。)


 折角の遠足なのだから、彩都には思いっきり楽しんで欲しい。



「どうしたの?ゆきママ」


「ママ?」


 二人の不安げな声に、私は慌てて笑った。


「うん、ちょっとお弁当づくり頑張り過ぎちゃってね。どうしようって悩んでたの。良かったら、かのちゃんも食べる?彩ちゃんと私だけじゃ、お弁当食べきれないかもしれないしね。」



 私が明るくそう言えば、かのちゃんの顔は、ぱぁーっと、一気に輝いた。


 うんうん、女の子は素直で良いわ。

 大人もそんな風に素直だったらいいのにね?


 思わず絆され、かのちゃんを抱きしめてしまった時、その声は降ってきた。

 そうだった、この人もいたんだった。


 つくづく私は運が悪いらしい。


 それにしても、人の娘に気安く触れるなとは・・・。


「心、狭っ。」


 ちっと、舌打ち交じりに呟いたこの言葉。

 この言葉がまさか本人に聞こえているとは、私は知る由もなかった。


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