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日陰の恋花  作者: 篠宮 梢
12/40

☆+11 遠足①

 真っ青な良く晴れた空に、適度に吹きつける初夏の風。


 着ているのは、蒼いスキニーパンツに、濃い桃色のストレッチポロシャツ。

 靴は履きなれたスニーカー。

 胸のあたりまである長い髪は、簡単にポニーテールにまとめ上げ、オマケにスポーツキャップを被れば、完璧な遠足用スタイル。


 これで日焼け止めを塗れば本当に完璧なのだろうけれど、運が悪い事に忘れてきてしまった。

 だけど本当に運が悪い、と実感したのは、遠足のチーム分け。


 確かにウチの彩都とかのちゃんの仲は良い。

 良過ぎるほど良い。

 親バカ、ブラコン気味の兄弟達が嫉妬するほど仲は良い。


 それはまあ、なんとか仕方がないと割り切れるけど。


(なんで遠足の付き添いが社長なの?)


 切れ長で涼やかな目元。

 精錬された動作。

 他者をも簡単に従わせてしまえるほどの美声。


 そんな完璧な人が一緒の班となれば、自然と欲求不満なご婦人達が、一緒の班になり、お近づきになろうと、鵜の目、鷹の目となる。


 身に付けているのは、それこそそこ等辺で売っているような、普通のチノパンに、七分丈シャツ、そして良く履き込まれているシューズと言った、非常にラフなモノなのに、着ている人が完璧と言うだけで高級品質に見えてしまう。


 この日の為に、止むを得ず新調した時計を見やれば、もうチーム分けのジャンケンを始めて五分も過ぎていた。


 一体、何を考えているのだろうか。

 子供たちを放置し、女と言う生き物になってしまっている母親達の姿には、もはや溜息すら出ない。


「ねぇ、ゆきママ。遠足まだ?」


「早く行こうよ、ゆきママ。」


 そんな大人達を待ちきれなくなったのは、当然ながら、本日の遠足の主役である子供たち。

 その子供達は、彩都やかのちゃんに影響されたのか、私の事を【ゆきママ】といつしか呼ぶようになっていた。


 それを訂正しないのは、もう呼ばれ慣れたからで、それに一々訂正していては、それだけで一日がすぐに終わってしまう。


 そんな勿体のない時間の潰し方は出来ない。


 よって。


「みんな、お手手繋いだら私の後に付いて歩いてきてね。すみません、かのちゃんのパパさん、子供たちが逸れない様に一番後ろから付いて来てくれますか?」


 元はと言えば社長が原因なのだから、否、とは言わせない。


 そんな念を含め、じろりと睨めば、相手から返ってきたのは仕方なさげな溜息が一つ。


 失礼な!!

 溜息を吐きたいのはこっちの方よ!!

 だいたい、なんで社長が遠足に来るの?

 普通は奥さんかお手伝いさんでしょ!?


 その態度にむかむかしながらも、私は歩き出した。


 この遠足が、私に多大なる影響を与える事になるだろうとは知らずに・・・。



 

 

  

 

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