グリーンリーフの変わり者エルフ
巨木の連なる森の入口の街。グリーンリーフを言い表すなら、そういうのが一番伝わりやすい。
街は大きいんだが、今までの街と比べると街っていう感じがしない。どちらかと言うと森の中に何故だか人が沢山集まっている。そんな印象だ。
「木の中に建物があります!!」
「正確には木を建物にしている、だな」
翆林地帯。と呼ばれているアストレア王国西部に広がる森は何とそのままアストレア王国の国土の1/6もの面積を誇る広大な森だ。
アストレア王国の森の面積が国土の1/6だったら言うほどか? となるだろうが、翠林地帯と呼ばれる巨大な森だけで国土の1/6だ。そしてアストレア王国の1/6だってことはそのままセントレア大陸の1/6ってことになる。
そう考えれば、どれだけ広大な森が広がっているのかが分かるな。
そして何より特徴的なのは、その森を形成する樹木の巨大さだ。
「相変わらず、まるで別世界に来たみたいな光景ね」
「大きさのスケールがおかしくなるよな、ここは」
並みの建物なんて目じゃない。王都にある王城よりデカい巨木が森を作ってるんだ。王城は当然だがこの国で一番デカい建造物なんだが、自然の木がそれを超えていて、そしてそれが森を作ってる。
何度も言っちまうが、デカすぎんだろ。なんでこんなにデカい木が森を作ったんだか分かんねぇけど、とにかくそんな巨木が生えている森の入口に、その巨木をそのまま利用して街にしたのがグリーンリーフって街だ。
「エルフ族の方が多いんですね」
「元々エルフ族の国の首都だったらしいわ」
「エルフの国、ですか?」
「今のアストレア王家がセントレア大陸を統一するよりも前の話だ。その辺は歴史の勉強だな」
元々、グリーンリーフはエルフ族が治めていた国の首都、だったところらしい。確か今から700年くらい前の話だったな。
その辺の話は色々ややこしいし、ここでする話でもない。ようは、エルフ族が戦争で負けた話だからな。
いくら長命なエルフ族でも700年前の出来事を体験したって人はいないが。平均寿命は軽く300年はあるエルフ族にとって、700年前は現役世代の親が子供時代にその親。つまり爺さん婆さんから直接話を聞いている、くらいの世代だ。
まだまだ遺恨が残っていたりもする。周りのエルフたちがあまり良い顔してないっぽいしな。
この件についてはそれとなくカイの興味を目の前の建物とかに移して、触れないようにしていく。
エルフってのは我の強い種族とても知られててな。自分達が優秀であることを疑わない。ようは、自分達の方が優れた種族だって思っている。
だからこういう話には敏感な傾向があるんだよ。子供の発言でも突っかかって来る奴は結構普通に突っかかって来るから面倒なんだ。
「すごいですね。他の街と全部違います」
「エルフの技術がそのまま使われてるからな。他の街じゃこうはいかん」
実際、特に魔法や研究の分野においては人間族や他の種族よりも優れている面が多い。
俺の発言に聞き耳を立てていたエルフ族が心なしか自慢げに立ち去って行くのを視界の端に収めて、息を吐く。自尊心が満たされたらしい。
ちなみにだが当然エルフ族は弱点も多い。
1つは単純に成長が遅い。平均寿命が300年はあるエルフ族は人間族の平均寿命を70とするとざっくり4倍以上生きる。
それはそのまま、成長に4倍かかるってことになる。人間が6歳で学校に入学するのに適切な成長度合いになるのに対して、エルフ族は25年かかってようやく人間の6歳相当の成長をするわけだ。
例に知り合いのエルフ、オルフェリオの年齢をあげると俺が28だから、アイツは112歳くらいになるハズ。
単純に4倍生きてるわけだが、成熟するまでに時間がかかるってことはそれだけ何かあった時に回復するのに時間がかかるって意味でもある。
エルフ族が人間族が中心のアストレア王家に負けたのは、まさにそういう部分だ。成長の早い人間族に成長の遅いエルフ族は持久戦で負けた、ってワケ。
「カイの発言には気を付けねーとな」
「好奇心旺盛だからね」
何にでも興味津々なカイは、その強い好奇心と子供らしい無邪気さでエルフ族の地雷を踏む可能性がある。
殆どのエルフは笑って受け流すだろうが、中にはそうじゃないエルフがいるのは俺達がよく知っている。
不用意な面倒ごとは避ける。探索者の基本だ。上手くこっちでコントロールしてやらねぇとな。




