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科学は魔法とともに  作者: S屋51
ジョン・リーフレット

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5/8

メッセージ

やっと少し動きました

          ※


 魔法を使えるからと言ってなにがどうなるってもんでもない。

 そりゃ、人にできないことを色々出来るけれど普段はそれを隠しておかなければいけないし、いくら魔法が使えても学校のテストで点が採れるようになるわけでもない。

 授業にはちゃんと出ないといけないし、レポートの提出も普通にしないといけない。居眠りをしていれば、当たり前に怒られる。

 今日も今日とてなんとかいう小説家の作品を題材にして授業が行われ、僕は眠気と戦いながらそれを聞いていた。いや、耳に入ってはいたが脳がそれを理解していたかどうかは別問題だ。

 全体的に丸っこい輪郭のバーズ先生がリズになにか質問してリズは優等生らしくすらすら答える。

 その姿を僕はぼやける視界に捉えていた。

 ああ、眠い。バーズ先生はいい先生だが授業は眠くなる。

 リズ、エリザベス・リーウィンは僕と同い年なのにずっと年上に見える。学校一の美少女でこの前のプロムに参加したとか。

 一歳年上のケイティよりも落ち着いていて、誰からも慕われているのに、親しい友達がいるとは聞いたことがない。昼食も一人で本を読みながら摂るのが習慣だ。

 彼女は今や貴重品とも言える紙の本に愛情を注いでいる人で、この辺りで一軒しかない本屋の常連であり、常に2冊以上の本を携帯している。

 電子書籍が普及し始めて1世紀近く経つのに紙の本は未だに細々と生き残っている。

 はっきり言って僕には紙の本のなにがいいか分からない。僕が物心つく頃には紙の本なんて絶滅危惧種だった。過去の作品や拘りのある人が出版しているだけで書籍と言えば電子書籍が当たり前になっていた。

 だから、紙の本に触ったことなんて数えるほどしかない。

 図書館は読書好きが集まって静かに読書をする場所で、ずっと昔のように紙の本がずらっと陳列されていたりはしない。紙の本は貴重品として倉庫にしまってあって、司書に頼んで出して来て貰う。それらを読むにも借りるにも特別な許可がいる。ほとんど美術品とか骨董品扱いだ。

 ジェイクおじさんはこれまでで一番ヒットした作品だけ紙にしたことがあるそうだ。そのときも100冊限定で、熱心なファンやコレクターが買っただけでジェイクおじさんの読者の99パーセントは電子書籍派だ。

 だから、紙の書籍を愛読するリズは変わり者とも言えた。

 IQが高く、本当はとっくに大学に行けるだけの知識と教養があるって噂もある。噂かどうか当人に聞けばたぶん教えてくれるんだろうけど、どうにも話しかけがたい雰囲気がある。

 僕が勝手に苦手意識を持っているだけで、リズが親切なのは有名な話だ。

 去年だったか、ボブが夏にリズと関係を持ったと吹聴したことがあった。

 まあ、校内の誰と誰がくっついたとか別れたとかは良くある話で、リズが誰かと付き合ったっておかしかない。でも、僕はなんとなくボブのはったりだと思った。脳筋ボブとリズでは合わない。と僕が言うことでもないが、とにかく違う、と思った。リズに合いそうな相手は他にいくらでもいる。よりによってボブはない。

『……日、中央……』

 リズを眺めていたら突然声が聞こえた。

 映画で見た電波状況の悪い無線通信のように途切れ途切れの声。

 なにか文章を言っているんだろうけど、はっきり聞こえない。

 そっと教室内を見回し、一瞬リズと眼が合ってどきりとする。けど、声の主は見つからない。そもそも、聞き覚えのない声だ。僕は人付き合いが上手い方じゃないが、さすがにクラスメイトの声ぐらいは覚えてる。

『18日、後……時……駅』

 また聞こえた。

 一体なんだ? 教室内の誰も喋っていないし、聞こえてすらいないようだ。聞こえてるのは僕だけ……。

 そこで僕はある可能性に気がついた。

 ひょっとしたら、この声は特定の人間、魔法使いにだけ聞こえるものなんじゃないだろうか?

 僕個人が幻聴を聞いているって可能性はもちろんある。でも不明瞭でなにを言っているか分からない声はなにかの連絡事項のようだった。

 そんな幻聴あるだろうか?

 僕としては幻聴よりも、誰かが僕のような魔法使いにだけ聞こえるように話しかけている方が納得できた。

 そんな方法があるのかどうかなんて知らない。でも、あってもおかしくない。物理常識を越えるのが魔法で、僕は魔法使いなのだから。

 なにも特権意識で言っているんじゃなくて、魔法使いである僕が他の人たちにできないことができるのは事実だ。万能とは程遠い。それでも色々とできるんだ。

 声はまだ続いていた。

 相変わらず途切れ途切れでも、どうやら同じメッセージを繰り返しているようで、僕は聞き取れた単語を電子ペンで仮想画面にメモして行き、やがて意味の通る一つの文章ができあがった。

『18日午後2時、中央駅銅像前に』

 声はそのメッセージを繰り返していた。録音したものをリピートして放送しているのかもしれない。誰が誰に向けて流しているのかは分からない。目的も不明だ。他の人には聞こえない声。僕だけか、或いは魔法使いにだけかは知らないが皆には聞こえない特別なメッセージ。

 なんのためにそんなメッセージを流すのか?

 18日と言えば明後日だ。

 その日の午後2時に中央駅で一体なにがあると言うんだ?


 その夜もケイティが家に来た。

 ほぼ毎日来る。

 ケイティのことは決して嫌いではない。姉ぶって鬱陶しいこともあるが嫌ってはいない。それでもケイティが来ていると地下室での訓練の時間が取れないから困る。

 ケイティは僕が魔法使いであることを知らない。ずっと小さい頃には無警戒に見せていた気もするが余りにも小さい頃のことだから恐らく覚えていないだろう。覚えていたとしても、僕から改めて切り出すつもりはない。ケイティに聞かれてもすっとぼけるつもりだ。

 ケイティを信用していないわけじゃなく、秘密はどこから漏れるか分からないからだ。ケイティを巻き込まないためにも知られちゃいけない。

「中央駅って、週末イベントなんかあったっけ?」

 ネットで調べてみたがそれらしい書き込みはなかった。ケイティならなにか知っているかもと聞いてみたが怪訝な顔をされ、

「まあ、休みの日なら誰かしらいるでしょ」と言われた。

 中央駅はいつだって人手が多い。

 休日には音楽を演奏したりパントマイムを披露したり、個人のパフォーマーたちが必ずいる。プロのイベントより素人の披露会が多い場所だ。

 そこで、18日の午後2時に一体なにがあるんだろうか。

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― 新着の感想 ―
ふむ、「科学信仰を捨てさせた」「科学の発展を停止させた」って言うのは、新たな技術開発だけさせず既存の生産活動はそのままなのか。 電子ペンも仮想画面も皇帝登場の時点で存在したってこと。家電の値下がり云々…
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