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科学は魔法とともに  作者: S屋51
ジョン・リーフレット

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2/3

皇帝について僕が知っていること

 僕の聞いた話だと、21世紀中頃までは、科学文明の世界はそれなりにうまく回っていた。

 いくつかの紛争、いくつかの戦争。人は死に続けていても、人類が滅亡しない程度には、うまく回っていた。

 それを1人の男が壊した。

 21世紀の中頃まで、人は魔法を使うことができなかった。

 火を熾すのにマッチやライター、発火のための道具を使っていた。今なら呪文の詠唱と集中で火を出せる。

 ただし、皆が皆というわけではなく、素養があるのは200人に1人ぐらいの割合。

 熾せる火の大きさも一律ではない。

 それは魔力量の差だと言われている。言われているだけで、本当にそうなのか理解している人間はいない。いや、魔法を理解しているのは世界で一人だけ。

 魔法の祖とも言われる始祖皇帝ジェラルド・フォーンの孫に当たる三代目皇帝レディオナル・フォーン。

 代々皇帝だけが魔法の叡智を授けられ、火も風も自在に操ることができる。

 大抵の魔法使いは火を熾せても小さなもので火力も弱い。稀に野球のボール程度のものを飛ばせる者がいるが、彼らは天才レベル。

 それに比べて皇帝の力は凄まじく、町一つを灰燼に帰したこともあるという。

 始祖皇帝ジェラルドは科学文明の時代に突如現れ、世界を支配した。

 科学兵器による攻撃はジェラルドに届くことはなく、彼に逆らったものは次々と処刑され、結果、世界は彼の荒唐無稽な要求、彼を世界の皇帝とすることに同意した。

 銃弾もミサイルも皇帝に届くことはなく、反乱を企てれば徹底して弾圧された。

 皇帝が皇帝となってから決めたことはそう多くはない。

 まず、自分には決して逆らわないこと。

 科学信仰を捨てること。

 戦争をしないこと。

 国法は皇帝の承認を得ること。

 各国から集めた税金で宮殿を建て、そこで暮らす皇帝の生活費すべてを賄うこと。

 皇帝は各国の内政にまで細かく口を挟むことはしなかった。

 だから、一般人にとっては生活はそれまでと余り変わらず、ただ自分たちの所属する国が帝国の一部となり、選挙で選んだ大統領や首相の上に皇帝がいるようになっただけだ。

 その国が民主主義だろうと専制君主国家だろうと関係がない。すべての上に皇帝がいる。独裁政権だろうと皇帝の承認を得ていれば認められる。

 最終決定権は皇帝にあるのだから、どの国の政治体制も所詮は仮のものでしかない。やり過ぎない限り皇帝は傍観者だった。


 噂では時々皇帝は女性を宮殿に招く。

 招くと言ってももちろん強制で、いつ帰れるとも分からない。権力を持った男はハーレムを作りたがるようで、フォーン家の男もその点は同じらしい。

 もしも僕に皇帝と同じ力があったら、やっぱりそういうものを作りたいと思うんだろうか? 僕は、相手は1人でいいと思うのだけれど、それは無力だからかもしれない。

 選ばれた女性は社会的には死亡扱いされるらしい。

 世界的に見れば皇帝が気まぐれに選ぶ女性の数はごく少数であるから大きな反発はない。僕の友人知人が宮殿に呼ばれるなんてことはまず起こらない。それでも、世界のどこかでは誰かが自分の意志とは関係なく招かれている。酷い話ではある。

 いつ誰が招かれたかは噂で流れる程度で、表沙汰にはされない。以前、その辺りを特集した雑誌社は潰れ、社員たちは行方不明になったらしい。

 皇帝の眼は千里を見通すって話。

 皇帝に反逆する者、悪評を流す者を見逃さない。ネットに二言三言書いただけで消されたらしい。

 あらゆるメディアに眼を光らせている専門部署が世界中にあって、その国の警察よりも強い権限を持っているらしい。

 らしい、が多いのは表では伝えられない話だから。

 皇帝の権力は人一人を簡単に消去してしまう。その人が存在したあらゆる痕跡を消してしまう。

 伯父さんはジャーナリストだった。でも、今はもうどこにもいない。伯父さんが存在した証拠は僕らの記憶の中にしかない。伯父さんも義伯母さんも従兄も、ある日を境に消えてしまった。

 誰も捜さなかった。捜してはいけないと知っていたからだ。

 実の弟である父も伯父さんのことは一切口にしない。伯父さんもその妻子も、いなかったことになった。

 確かに存在しているし、学校でもそのことを習うのに日常会話では決して口にしてはいけないタブー。それが現在の皇帝の立ち位置だった。

 的確に、ピンポイントで罰を当てる神様のようなもの。

 頭の中で考えるのは自由でも、他者に伝わる形で表現すると途端に消去されかねない危険性を伴う。かなりヤバい話。

 みんなの上に存在しているのに、常日頃はみんな見えないふりをする。

 なにをされても文句を言ってはいけない。言えば自分だけでなく近親者もいなかったことになる。だから、言いたいことは心の中だけに止める。

 さすがの皇帝も人の心までは読めないらしい。もし読めたら、僕なんてとっくの昔にいなかったことになっている。

 自慢じゃないが不敬レベルはかなり高いつもりだ。


ホント、自慢じゃないね、それは。

次回は次週

ちょっとずつ、ちょっとずつ進んで行きます

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― 新着の感想 ―
超抜の魔法が使え、文字通りに世界を相手にできる皇帝も、「死」は有るし、「子」をなして皇帝を世襲させはするんですね。 語り手くんの言い方からして1世紀以上は月日が流れていて、仮に三代目が100年先に居…
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