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科学は魔法とともに  作者: S屋51


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1/1

皇帝の登場

魔法というのは、どういう原理なのか

というのを現代科学で説明できないか考えてみるうちに思い付いた話です



「では、貴国の侵攻はどう説明なさるので? 国連決議もなしに勝手に軍を用いて他国を脅かし、剰え他国の大統領を拉致するのは立派な国際法違反ではないですか」

 C国がA国の横暴を指摘する。

 指摘したC国とて別の国に対して似たようなことをしている。

 世界の大国たちは理由をつけては小国の利権を手に入れようとしている。

 そして国際会議の場では自国は清廉潔白という顔をして他国を非難する。

 いつものことだ。

 ここ何年かはこういう応酬が続いて、最後には有耶無耶に終わる。

 お互いに国際的な正しさを尊重しているという姿勢を見せるためのパフォーマンスでしかなく、大国同士本気で争う気はない。

 21世紀も終わりが見えている時代、戦争など始めればそれは容易に世界最終戦争に発展してしまうことを大国たちは承知していた。

 だから屁理屈を捏ねて資源を持つ小国を襲って傀儡政権を立てたり、領土は永久的に借用したり、武力にものを言わせてやりたい放題だった。

 その行いに対して多くの国はなにも言えない。

 強大な国を相手に下手なことを言えば自国の安全に係わる。国連という同じ組織に属していても味方というわけではない。それは1つの枠組みであり、その枠組みが機能しなくなってから久しい。

 結局は強い力を持つ者が勝者になれる。

 人類は高度に進化することなく、獣の時代に戻って行っているようだった。

 ただ獣の時代と違うのは使うのが石器ではなく、ミサイルやドローンになったことだろうか。

 使う道具だけが進化しても、使う人間の本質は劣化していた。

「あの国は違法な武器輸出を産業としていた。密輸船を沈め、主犯である大統領を拉致したのは国際平和のためだ」

「それならそれで国連での決議を……」

「事は緊急を要した。悠長にしていれば、それだけ犠牲者が出る。それを防ぐためのやむを得ない措置だ。

 そう言えば、貴国はあの国とは友好国でしたな」

 皮肉をたっぷり込めた声と表情は喧嘩を売っているとしか見えないが、さすがに国際首脳会議の場で殴り合いが始められることはない。

「なんとも、醜悪なことだ」

 各人の耳に嵌められた同時通訳機が新たな登場人物の声を届けた。

 首脳たちだけではなく、その護衛や会場警備の者たちまで驚いた顔でそちらに視線を向ける。

 部屋は閉ざされていた。

 いつその男が入って来たのか誰も気付かなかったし、そもそも外にも警備はいる。

 誰かが出入りするなら必ず連絡があるはずだった。

 少なくとも警備員たちが気付かぬはずがない。

「いい加減、認めたらどうです。あなた方が1つに纏まるなど幻想だと。国益、いや個人の利益を優先したい者が国のトップにいて纏まるわけがない。

 結局はどこまで利益を貪れるかの探り合いをしているだけで、弱者に手を差し伸べる気など更々無いのだと。

 猿山の猿と大差ない存在だと認めたらいかがです?」

 男はA国大統領の真後ろに立って侮蔑の眼を首脳たちに向けた。

 護衛たちが護るべき者たちに駆け寄り、男との間に立つ。

「なんだ、貴様は」

 最も近い場所にいたA国大統領が怒鳴った。

 気が短いことで知られている男だ。そういう反応は自然だった。彼の護衛は不審者を刺激しないでくれと真っ青になったが、そこに気付く大統領ではなかった。

「世界で最初の、そして最も偉大な魔法使い」

 はは、と失笑したのは誰だったろうか。

 魔法などお伽噺の世界の話。

 いい大人がそんな戯言を真面目に口にするなどどうかしている。

 そんな風に思って、多くの、或いはその場にいた男当人以外の人間すべてが男を蔑んだのかもしれない。

 そして気付く。

 妄想に取り付かれた人間というものは居るものだ。

 けれど、ただ精神に異常を来しただけの妄想癖のある人間が世界首脳会議の場に、厳重な警備に守られた会議場に侵入を果たせるものだろうか。

「百聞は一見にしかず、という言葉もあります。まずは、お見せしよう」

 ぱちん、と音が指を鳴らすと一番近くにいた警備員の首がころりと落ちた。

 なにが起きたか分からない。なにをしたのか分からない。

 男が指を鳴らし、警備員の首が落ちた。

 タイミング的にもその動作と警備員の首が落ちたことは関係しているのだろうが、一体どのような作用でそうなったのか誰も理解できなかった。

 誰かが悲鳴をあげ……ようとして息を飲んだ。

「お静かに、全員その場を動かないでいただこう」

 皆が驚愕し、瞠目して男を見ていた。

 見ることしかできない。見ることは許された。

 それだけしかできなかった。動くことも悲鳴を上げることも、なにひとつ自由にならなかった。

「今日、私は宣言をしに来た。

 本日ただいまを以て、我ジェラルド・フォーンはこの世界の唯一無二の皇帝となる。すべての国は我に従うべし。異議あるならば声をあげよ。我が秘法の威力、身を以て知るが良い」

 首脳会議の場で行われた即位宣言。

 馬鹿げた妄言としか思えない言葉に、しかし魔法を目の当たりにしたばかりかその身で体験した首脳たちは青褪めることしかできなかった。

 それでも2つの大国は異を唱え、たった1人対2カ国という馬鹿げた戦争が起こった。そして国土の3分の1が焼失するまで大国たちはフォーンを認めなかった。

 宣言から半年後、国連に加盟した国々はジェラルド・フォーンただ1人に帰順した。

まずは序章ですね

何章まで行くかなあ

気長にお付き合いくだされば幸いです

次回は14日予定

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― 新着の感想 ―
──お辞儀をするのだ、ト◯ンプ! 習◯平! と言うことか…。 はてさて、後に続く新たな魔法使いは現れるやら。
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