枯れ尾花もまた愛し。
建物の影からのぞき見る姿はさぞ怪しいものだろう。
私の視線の先にいるのはひと組の男女。私の友人と騎士だ。
さて、騎士が何やら愛の告白をかましそうだからそろそろ出ていくかな。
「雪ちゃーん、やぁっと見つけた~。」
いかにも何も知りません気が付いてませんといった装い・・・ふっさすが私、名女優になれるぜ。
天然ぼけぼけ空気の読めていない乱入者に騎士は心底落胆している。吹き出しそうになるのをこらえるのも一苦労だ。
「あっ、真弥!」
ぱっと表情を明るくし私の名前を読んだのはとある乙ゲーの聖女の位置に成り代わってしまった我が友人の雪。
彼女はまぁ鈍感で逆ハーを築いているにもかかわらず気がついていない。
私はそんな彼女についてきてしまったおまけ。所謂脇役である。
一緒についてきてしまった私は彼女の付き人として一緒にいる。
とりあえず片方ずつ帰ることは不可能だと聞いたので、とりあえず皆の恋路を邪魔させていただいてます。
馬に蹴られる?あれは両思いにのみ適応される諺だ。
だってもし彼女が誰かしらのアタックに陥落してしまって恋に落ちたら?
そうしたら、聖女としての彼女の意見の方が押し通されるに決まっている。だって私はおまけなんだから。
「ほらっほらっ、もう夕食の準備できてるよ!早く行こう!」
知らぬ存ぜぬは大得意。
せいぜい悔しそうにしているがいいさ、騎士さん。
伊藤真弥
主人公。
可愛い友人と共に帰るため猫かぶりをしつつ逆ハー要員の恋路の邪魔をする。
元の世界においてきたもの全て捨ててこちらのために命をかけろ?馬鹿じゃねーの思考。
知らぬ存ぜぬ大得意。
佐藤雪
逆ハーを無意識のうちに築いているかわいい天然娘。
真弥ちゃんは凄い、真弥ちゃんは何でもできる、真弥ちゃんがいなかったら心細くて何も出来なかったよ!と全力で縋ってくる。