人形姫
人を愛するように、人形を愛することは不自然だろうか。
わたしは人形を愛しています。
愛し返さなくったって良いのです。それが良いのです。
美しい人形を愛しているのです。
そんな人を愛さない都合の良い人間が、たまたまわたしで、王妃としてこの世界に召喚されてしまったのです。
王は男色で、己の愛を欲さない王妃が必要だったのです。
だからわたしは所謂お飾り王妃。
子どもは王の臣下が適度に王に似た子供を連れてきました。会ったことはありませんが。
王はわたしに部屋と、その部屋いっぱいの美しい人形をわたしに与えてくれました。
愛するものとなんの邪魔されることなく一生一緒に暮らせるのです。
これ以上の幸せなんてないでしょう?
わたしは王の隣で幸せそうに微笑んでいるだけでいい。
それだけで、わたしは一生幸せに暮らせるのです。
王妃としての職務もある。
けれどそれくらい、なんの苦にもなりません。
聡明だけれど、お飾りの王妃。
えぇ、えぇなんとでも言っていてくださいな。
わたしは幸せなのです。
「へーぇ、面白いねぇアンタ。」
だから、壊さないでください。
床に転がした暗殺者を見て、殺すか殺さないか決め兼ねる。
「アンタの駒になってあげるよ。」
窮屈だろ?こんな部屋。
そう言う彼には永遠に理解できないでしょう、わたしのこの幸福論は。
ただ護衛は欲しかった。
だから助けた、それだけ。
元の世界に残してきた最愛の人形と同じ髪の色をしていたこともあったかもしれない。
「わたしを、裏切らないでいるのなら・・・好きにしてなさい。」
そう言って、彼を縛っていた縄をといた。