天界転生
初投稿です。拙い文章ですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
東京のありふれた住宅街。その片隅のアパートで、ひとりの女性が疲れ切った顔で歩いていた。足取りはおぼつかず、今にも倒れそうだ。階段を上がり、自室の鍵を開けて中へ。数秒後、ドサリと物が倒れる鈍い音が響いた。どうやら女性は、部屋の中で倒れ、そのまま息を引き取ったらしい。
私の名前は社恵。28歳、独身のOLだった。
来る日も来る日も社畜として会社に勤め、面倒な仕事ばかり引き受けては、毎日深夜まで残業……。おまけに、なぜだか困っている人を見過ごせない性分で、色々な人を助けてしまう日々。そうして疲れ果てた私は、家に帰って安心してしまったのか、そのまま倒れて過労死したらしい。せめて「独身」という肩書きだけは無くしたかったなぁ、なんて、最後の最後にくだらないことを考えていた。
――と、突然、目の前がまばゆい光に包まれた。
途端に、体の感覚が戻ってくる。おかしい。私は死んだはずなのに!?
あたりを見回せば、そこは白を基調とした、簡素でいて清潔な部屋だった。すると、目の前の空間が再び強く輝き、中から息をのむほど美しい女性が現れた。頭上には白い天使の輪のようなものが浮かび、金色の髪に碧い瞳。肌にはシミひとつなく、まるで絵画から抜け出たような美しさだ。
「――恵さん。ようこそ、天界へ」
やはり死後の世界、なのか。
「あなたは先ほど、亡くなりました」
ずいぶん仰々しい話し方をするなぁ、と思っていると、彼女は言葉を続けた。
「ですが! あなたは前世で、非常にたくさんの善行を積まれました。その栄誉を讃え、あなたを天界の住人とすることに決まりました!」
え、なにそれ!? 本当ですか!? 天界って、つまり天国みたいな場所ってこと? それなら私でも、ぐうたら過ごせるはず! 次の人生は絶対、のんびりするんだ!
「ぜひ! ぜひ行かせてください!」
前のめり気味に答える私に、美しい女性はにこやかに言った。
「ありがとうございます。それでは、まずはこの光のゲートの上にお乗りください」
光のゲート……いかにも天国っぽい。ああ、この先にはどんな幸せな生活が待っているんだろう!
ゲートを構築する魔法陣の上に立つと、光が私たちを包み込んだ。特に浮遊感は感じないけれど、どういう仕組みなんだろう?
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私の名前は『セラフィナ』。ここ天界で人事をやっています。あなたの先輩ですね。もし分からないことがあったら、何でも聞いてくださいね!」
ん? 人事? 今、何か不穏なワードが聞こえたような……。
「こちらこそ、よろしくお願いします。あの……先輩って、どういうことですか?」
恐る恐る尋ねると、セラフィナは当然とばかりに答えた。
「そのままですよ。あなたの『天界の住人』としての先輩です。あら、そろそろ着きますね」
セラフィナがそう言った直後、周囲を覆っていた光が消え、辺りの景色が明らかになる。そこに見えたものは……ぐうたら過ごせる天国とは程遠い、セラフィナと同じように頭に天使の輪をつけた人々が集う、まるで会社のような場所だった!
周囲には、様々な特徴を持った人々がずらりと並んでいた。背中に大きな翼が生えている者、巨大な剣を腰に下げている者……。しかし全員に共通しているのは、頭上に天使の輪が輝いていることだ。
何ここ!? もしかして、天界って天国じゃなくて、天使みたいな人たちの“職場”ってこと!?
思わず呆然としていると、近くにいた赤い髪の男性が、セラフィナに声をかけた。
「おい、セラフィナ。お前の隣にいるのが、次の案内役か? 本当に日本から連れてきたんだよな?」
彼の視線が、私に突き刺さる。案内役? どういうこと?
「もちろんですよ。彼女の名前は社恵さんです。どう見ても日本人でしょう?」
セラフィナがにこやかに答える。案内人……もしかして、また私、働かなければならないの?
「ならいい。おい、そこの新入り。色々面倒だろうが……まあ、無理するなよ」
その言葉に、胸騒ぎがした。どういうこと!? もしかして、また危険な職場にでも送られるの?
不安に駆られていると、集団の真ん中にいた神々しい女性が、私の方へ手招きした。彼女の天使の輪は七色に輝き、その存在は圧倒的な神々しさを放っている。
「あなたが新しく天使になる子ね。こちらへいらっしゃい」
なぜか、動きたくないのに体が勝手に動いてしまう。彼女の力だろうか。
「私の名前は『アーク』。『天界の住人』の管理をしている女神よ。あなたは日本から来たと聞いたけれど、天界についてどこまでご存知かしら?」
「何も知らないです……」
やばい、どうしよう。これ、絶対働かされるやつだ! 私ののんびりライフが……!
アーク様は私の動揺に気づいたのか、優雅に微笑んだ。
「天界は、神々や天使の職場と思ってくれれば良いわ。どこの世界にも位置しない世界の狭間にあるの。ここでは神々や天使が、世界の管理や死者の管理を行っているわ。あなたにはここで、未練のある死者の魂の、案内役をして欲しいの。」
は…、はい?
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