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9話

 警備兵のおっちゃんが黒ずくめの男を組み伏せると予想してたら、予想外の行動に出た。


 なんと黒ずくめの男からお金を受け取り門を開けると、番犬を柱にくくりつけると男を敷地内に入れてしまったのだ。


 まさかの警備兵のおっちゃんが改革派議員たちのお仲間だった。


 どうする……、このままでは議長の娘さんが誘拐されてしまう。今ここで騒げば邸宅内の人も気づくはず。だがそれをすると、警備兵のおっちゃんが黙ってないだろう。


 ここはしばらく待ちの一手とする。


 しばらくすると黒ずくめの拉致犯人が、両手両足を縛られ猿ぐつわをかまされたシルバーブロンドの美しい少女を肩に担ぎ、えっほえっほとやってくるのが見えた。


 番犬は少女の愛犬なのだろう、しきりに拉致犯人を威嚇し襲い掛かろうとしているが、柱にくくりつけられているため牙は届かない。


 俺は拉致犯人が門に差し掛かり気がゆるんだ隙に、警備兵のおっちゃんと拉致犯人の口に先ほど購入した麻痺薬を1包ずつ突っ込んでみた。効果はいかほどだろう。


 最初二人は怪訝な表情をするのみだったが、一拍間が空いた後、ぴくぴくと痙攣しはじめ、終いには地面に倒れ動けなくなった。すごい効き目だ。


 拉致犯人が倒れる際、肩に担がれた少女を何とかキャッチ。言語理解をアクティベートしたまま完全気配遮断だけを解く。


「ん~~~~~~~」


 と少女が泣きながら叫んでいる。


「怖かっただろ、もう大丈夫だからな」


 俺は普段全く使わない筋肉を動かしぎこちない笑顔を浮かべながら話しかけ、少女の拘束を青銅のナイフで解く。続いて麻縄のロープをインベントリから取り出し、警備兵のおっちゃんと拉致犯人の両手両足を後ろ手に縛って拘束。


 恐怖で泣きじゃくる少女を何とかあやし、俺は邸宅内に事のあらましを報告することにした。このまま泣いている少女を置いて逃げるのは違うからな。


 俺は少女の手を引き、邸宅の玄関へ。


「すみませ~ん、どなたかいませんか?」


 家の玄関でそう呼びかけると、壮年の執事さんが出てきた。


「ルチアお嬢様!? どうなされましたか!!」


 泣きじゃくるお嬢様を見て壮年の執事さんは動転。俺は「実は……」とことのあらましを説明することにした。


 俺はたまたま酒場で改革派議員の悪だくみを聞き、警備兵に通報。気になって見にきてみたら、お嬢様が拉致されているところに出くわしたので、組み伏せ拘束した、と説明。


 ほぼほぼそのままだし、嘘はついてない。


 壮年の執事さんは拘束されている輩とお嬢様の様子を確認し真実であることを確信したようだ。お嬢様のご両親であるルベン議長夫妻も騒ぎを聞きつけてきて、ことのあらましを執事さんから聞いていた。


 これでもう安心だな。宿に帰ろう。


「……では俺はこれで失礼します」

 極力目立たないよう、俺はその場を後にしようとした。流石に目立ちすぎて辛くなってきた。


「もしお待ちを! どこのどなたか存じませんが、うちの娘を救っていただきありがとうございました。明日改めて御礼をさせていただきますので、日中当家に起こしいただけませんか?」


「……承知しました。それではまた明日伺います」


 クエストクリア報酬だろうか。御礼を無下にするのもなんだし、ありがたく頂戴するとしよう。


 俺はルベン議長の邸宅を後にした。

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