76話
パパッパラ~!
翌朝、顔を洗っていると急に突撃隊のラッパみたいな警報音が鳴った。これは運営がプレイヤーに危険な状況にあることを知らせるシステムアラートだったはずだ。
目の端に赤いアラートアイコンが点滅しているそれをタップする。
【レイナルド・ローエンおよびマルグリッド・オーエン2名がプレイヤー:ハイドに対し、オリビア奪還のための追手の私兵団【おっぱい戦士団】6名の派兵を確認しました。なお、【おっぱい戦士団】はプレイヤー:ハイドの殺害を命じられているため、返り討ちにしたとしても殺人の罪には問われません】
このようなポップアップが表示された。
「ふざけたやがって、何が【おっぱい戦士団】だ……。オリビアさんを嫌らしい目で見やがって……」
俺はゴゴゴゴゴとなりながらキレ気味にそう言った。
「どうしたんですか?」
「あのイケメン貴族とクソ豚貴族がこっちに私兵6名を派遣したようです。目的は俺を殺害して、オリビアさんを攫うことだそうですよ……」
「……!?」
オリビアさんは青ざめながら、悲鳴にならない悲鳴をあげた。
「一応俺、気配を消すだけじゃなくて、こんな風に危険を察知するスキルをもってるんですよ」
「便利なスキルですね! 頼りにしてます!」
ゲームのシステム補助です、と言ってもオリビアさんからしたらチンプンカンプンだろう。日本に住んでる俺たちに対して「ここはゲーム世界です」言われるのと同じようなもので、オリビアさんはあくまでこの世界の住人で実在している。スキル、ということにしておいた方が、まだ理解できるはず。
「戦士団の連中は俺を殺してオリビアさんを攫い、貴族二人が自分のものにするという算段のようです。返り討ちにしても殺人の罪には問われないようですが、やっぱり殺しはしたくないんだよなあ……」
「私もハイドさんがやむを得ないとはいえ、人殺しをすることに慣れてほしくないです……」
「うーん、じゃあここは逃げの一手ですかね! 相手は俺たちが魔導都市オルフェンに向かったということは把握しているでしょう。なら俺たちはそれを逆手にとって、もう一つの行先候補、ここから南方にある黄金都市ゴールディに先に向かうというのはどうでしょう?」
「あ、それいいですね! 賛成です!」
というわけで一旦引き返し、分かれ道から南へにルート変更することにした。
「しかしこの倒木をそのままにしておくと、東の魔導都市に行っていないことが丸わかりだな、どうすれば……」
ブルルルルルル!!!
俺がそう頭を悩ませていたら、森の中から体長6メートルは超える巨大な筋骨隆々とした闘牛モンスターが現れ、立派な角を下げ「ドドドド!!」という大地を蹴る音、土煙とともに、俺たちに猛突進してきた。