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71話

 司祭様の祝福を受けた「恋人」カードを吸い込んだ聖銀のエンゲージリングには特殊なスキル効果がついていた。


【ラブ注入:自分のHPとMPの3%をパートナーに譲渡。クールタイム10秒】

【浮気ダメ:半径100メートル以内にいるパートナーをビンタできる位置まで引き寄せる】


 試しに【浮気ダメ】を礼拝堂の中10メートルほど離れてオリビアさんに使ってもらったら、ギュン! という音がしそうなほど強く引っ張られ、オリビアさんが丁度ビンタしやすいそうな位置に俺の頭が数秒間固定された。


「これ何に使うんだ……」

「ハイド君が浮気した時に決まってます!」

「なんだとぅお~~~! ゆるさーん!」

「あなたやめて下さい!」

「……」


 そんなハプニングがありつつも、俺たちは無事教会のお墨付きをもらい名実ともに夫婦になることができたのだった。




 その後はみんなでレイモンドさんのカフェに移動した。


 アーノルドさんが「俺、もう無理!」と爆泣き&駄々をこねていたけどマリーさんに背中を押され、どうにかカフェまでたどり着くことができた。


 カフェではレイモンドさんたちパティシエ、シェフたちが腕によりをかけて、お酒や料理をずらりと並べて待っていてくれた。


 カフェには蓄音機の魔導具で音楽を流せる他、ピアノとアコースティックギターが備え付けられており、こういったパーティでの簡単な余興やライブもできるようになっている。


 一応パーティの段取りは考えていて、タイムスケジュールを紙に書き出し司会進行をリリアさんにお願いしていた。


 そろそろ司会進行をお願いしたい旨伝えようと探していると、リリアさんが彼氏のパティシエらしき人物と腕を組んで歩いていた。それをオリビアさんが目ざとく見つけ、「どこまでしたの? え~~! チューしたの~~!?」とオリビアとリリアさんのガールズマシンガントークが盛り上がりの様相を呈し始めた。


 い、いかん。アーノルドさんとリリアパパの耳がダンボになっているぞ。


 危険を察知した俺は彼氏パティシエさんに目くばせし、被弾しないよう「ちょっとケーキの焼き具合でも見てきましょうか……」とさりげなく二人でその場を退避し、俺は完全気配遮断を発動。身を隠した。


 そうしてガールズトークに一区切りつくのを彼女たちの話が聞こえる壁際で待ち、改めて「リリアさん、そろそろお願いします……」と耳打ちする俺であった。



 全員がウェルカムドリンクを手に取ったのをリリアさんが「皆さんグラスは持ちましたか~?」と確認した後、ルベン議長のお祝いの言葉と乾杯の音頭でパーティが始まった。


 そこからは知り合いの方々による余興に次ぐ余興という感じだった。


 ミランダさんイワンさんを中心とする兵士団の皆さんによる渾身のコント。鍛冶師の皆さんによる火を吹き芸。マリーさんピアノ伴奏、弟君二人による歌披露。さらには中盤、オリビアさんによる「娘から両親に宛てた手紙を読む」という余興の途中でアーノルドさんが泣き崩れるというハプニングもあった。



 最後に俺とオリビアさんによる、プロポーズしたあの日から毎日のようにオリーブ畑で練習してきたラブソングの金字塔【Can’t take my eyes off of you】のアコギ弾き語りを披露した。


 サビ前の「Can’t take my eyes off of you~」のところで見つめ合う演出をしたり、サビの「I love you, baby~」のところから俺もハモリで参加したりと、それなりに演奏の完成度も頑張れたんじゃないかと思う。


 演奏の途中途中であちこちから指笛が鳴っていたので、演奏は概ね好評だったようだ。アーノルドさんが涙で崩壊していたけど、これはもうそういうイベントなので仕方がない。


 俺はそんな絶賛崩壊中のアーノルドさんを見るに見かね、フォローはちゃんとしておいた。いずれは鍛冶職を極めたいので、この町を拠点にするつもりであること。いずれは僧侶のジョブを得て都市間転移の魔法を覚え、ちょくちょくオリビアさんを連れて里帰りするつもりだということを伝えると、少し安心したのか絶賛大崩壊という状態からは脱出できたようだった。


 「ハイド君たちが住む家は俺に任せとけ!」だって。これから長旅に出るのにまだ気が早いって。



 こうして泣きと笑いの楽しい夜は更けていった。

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