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64話

 オリーブ畑で麦わら帽子をかぶったオリビアさんが風に飛ばされないよう帽子を押さえながらマメを追いかけている。


 俺はそれを一枚の風景画のように眺めて綺麗だなと思い、俺にはやっぱりこの人が好きなんだなと再認識する。


 彼女といるといつもそんな感情になって困る。


 俺は散策の間、思いつきでそこら中に生えているオリーブの木から茎、その辺に生えている野花を麻紐を使いオリーブの花冠を作ってみる。


 ……よし完成だ。


 ありあわせで作った小道具にしては十分すぎるだろう。もうちょっと気の利いたプレゼントを用意すべきだったと自分の無神経さを呪うが後の祭り。一世一代の大勝負に臨むにあたっては心もとないが、男は度胸だ。これで勝負するしかない。


 俺はオリビアさんにはバレないよう花冠を背中に隠した。


 さて、もういい加減ケジメをつける時だ。俺は近くこの町を出て魔導都市に立つことになる。その前に、自分なりのやり方で。


 


「オリビアさん! ちょっといいですか?」

「なんですか?」

 オリビアさんが俺を振り返る。


「オリビアさん、俺には夢はあるんです。それはとても大きな夢で、それを叶えるためには近いうちにこの町を去らねばなりません」

「……はい」

 オリビアさんは真剣な目で俺の目を見つめてきた。

「俺はこの世界でモンスターの始祖とされている【アルカナの22英雄】を討伐したいと考えています」

「わかりました。私もその夢を一緒に追いかけさせてください」

「え……即答? というか一緒に……?」

「はい。ハイド君は蒼竜勲章もちの英雄です。それくらいの夢をもっていたとしてもおかしくないと思います。一緒にというのは……」

「あ、ちょっと待ってください。俺から言わせてください」

 俺はオリビアさんの目を真っすぐ見て、オリーブの花冠を差し出す。

「俺はオリビアさんのことを愛してます! 俺と一緒になってください!」

 俺は45度の綺麗な角度でお辞儀をして、オリビアさんに結婚を申し込んだ。貴族みたいなバカみたいなダンスは恥ずかしくてできないので、これが無骨な俺の精一杯。


 友人から夫婦に一足飛び!? と思うかもしれないけど、多分これがこの世界の当たり前。お貴族様だってオリビアさんたちにいきなり求婚してた。日本みたいに恋愛と結婚の間にそこまでハードルがないんだと思う。


 こういうときはシンプルに愛してる、好きだから一緒になりたいでいい。


 それに俺も、いとも簡単に崩れ去ってしまうような彼氏彼女の関係など求めちゃいない。だからあえてこれまで「親友」などと回りくどい言い方をしてきたんだ。


 長くずっと俺の横にいてくれたオリビアさんは、そんな俺の気持ちを察してくれたのだろう。


 「うれしい……」と言いながら両手で優しく包み込むように、俺の差し出した花冠を受け取り頭につけてくれた。


「ハイド君。ちゃんと言ってくれてありがとう。いつも遠い目標に向かって真面目にコツコツ頑張っているあなたのことが、私はずっと好きでした」


 そして俺たちは、そのままオリーブ畑の中に隠れて抱き合い初めての誓いのキスを交わした。その周りを未だに小型犬のままのマメが、嬉しそうにぐるぐると走りまわっていた。



 この日俺とオリビアさんは親友から一足飛びに夫婦になった。

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