表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/81

56話

 ついにこの日が来てしまった。オリビア宅の敷居をまたいでしまう日が。そして鬼軍曹パパにぶっ飛ばされる日が……。


 あの後オリビアさんに再三「ハイドさんなら大丈夫ですから、ダダこねないの!」と言いくるめられ、結局行くことになってしまった……。


 俺はどんよりした気分でマメを抱っこして、いつもの朝稽古へ。


「あ、アーノルドさんおはようございます」

「おはよう、ハイド君。今日は何だか覇気がないな。どうした?」

「あ、はい。ちょっと気が乗らないことがありまして……。アーノルドさんこそ目の下に隈なんか作っちゃって、どうしたんですか?」

「俺の方は家庭がちょっと、いやかなり逼迫した状況でな。昨日心配で眠れなかったんだ……」

「そうですか……。お互い大変ですね……」


 アーノルドさんもどんよりしていて元気がない。というか、なんだか目が充血して血走っている。


 今日の懸案事項を無事乗り越えたあかつきには、アーノルドさんにはいつも世話になっていることだし、酒場で一杯奢らさせてもらおう。


 彼が泣き上戸なのは知っているけど愚痴を聞いてあげたりとかね。悩んでるみたいだし心配事くらい聞いてあげるべきだろう。



 それから朝稽古が終わり、鉱業ギルドの鍛冶場へ。今日もミスリルを鍛錬して熟練度上げだ。スロット付きの最上級品質まであと少し、コツコツ頑張ろう。



 作り終わった上物のミスリル武具をオリビアさんに渡して今日の活動は終了……、とは問屋が卸さなかった。



 オリビアさんの業務が終わるのを外で完全気配遮断をして待ち、彼女とリリアさんが取り巻き鍛冶男たちを蹴散らし静かになったところでそっと解除。


「……オリビアさん、リリアさん、お疲れさまです」

「あ! ハイドっち、聞いたよ? 今日オリビアの家に行くんだってね~! そうか、今日がキミの命日というわけだ! アハッ!」

「め、命日……」

 俺の胃がきゅっとなる。


「ちょっとリリア、ふざけたこと言わないの! ハイド君が本気にしちゃうでしょ! 繊細な人なんだからからかわないでっ!」

 オリビアさんがプンスカプン。


「ごめんごめん! あんたらが初々しくてイジリたくなっちゃった。ハイドっち、男を見せる時だよ! 一世一代の大勝負! 頑張んなよ~、じゃあね~~~~!!」


 そうしてスーパー陽キャギャルなリリアさんは、手をブンブン振りながら嵐のように去っていったのだった。


「そんな大げさな……」

「胃痛い……」

 それを見るオリビアさんはあきれ顔。リリアさんのプレッシャーに俺の胃はさらにキリキリと痛んだ。


 そうか今日が命日……。きっと俺は鬼軍曹さんにボコボコにされちゃうんだ……。


「じゃあハイド君、行きましょう!」

「はい……」


 オリビアさんに手を引かれた俺は、彼女の家までの一本道を一緒に歩いた。俺の頭の中にはドナドナの悲しいメロディが流れていた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ