50話
俺とオリビアさん、オリビアさんに抱っこされたマメの二人と一匹は若干オタクくさいカードショップに入る。店番のおじちゃんは、やる気のなさそうな感じであくびをしている。
俺はさっそく、ワゴンセールで叩き売られているFランクカードを物色することにした。
「マメちゃん、カードのことはよくわからないでちゅねえ~」
「ワン!」
早々にカードに飽きたオリビアさんは、マメと赤ちゃん言葉で遊んでいた。
その間も俺は物色を続ける。まあぶっちゃけFランクカードでありさえすればいいので、安ければなんでも良い。
【グリーンワームカード(正位置):V(持久力)+1。Fランク鎧カード】
これが15000arcで最安値のようだな。最安値だけあって効果もゴミだ。
ちなみに鉄のツルハシに挿さったままになっている【ゴブリンカード(正位置)】は45000arcだった。ダメージアップ系カードは需要があるので、まあまあ値が張るみたいだ。
俺はゴブリンカードを1000arcで鉄のツルハシから剥がして売却し差額の44000arcが儲けに。在庫が余裕で20枚以上あった【グリーンワームカード(正位置)】を300000arc(大金貨3枚)で20枚購入した。
「オリビアさん、ちょっと失礼しますね」
「なるほど……」
オリビアさんに抱っこされていたマメにグリーンワームカードを当ててみると、カードスロットが出現。進化先とその性能が表示された。
Fランク:ポメラニアン・ウルフ。L(運)+1。
Eランク:ポメラニアン・ウォーターウルフ。水球攻撃。水耐性20%、A+3、L+3、D+3。
Dランク:ポメラニアン・ポイズンウルフ。毒爪攻撃。水耐性15%、毒耐性20%、A+6、L+7、S+3、V+3。
Cランク:ポメラニアン・フレイムウルフ。火炎攻撃。火耐性20%、水耐性15%、毒耐性15%、S+3、A+9、L+10 S+6、V+6、D+3。
大体俺の記憶通りで間違っていないかな。
Eランクになれば、マメは水球攻撃をしてくれるようになり、ペットバフも強化される。L(運)とD(器用さ)が上がるのが生産職としては嬉しい。
「【ワンワン・アイランド】で見かけた【ポメラニアン・ウォーターウルフ】になれるみたいですね……」
「あのお水を宙に浮かべていたワンちゃんですね! 楽しみです!」
「ではさっそく……」
俺はマメに【グリーンワームカード】を20枚吸い込ませ、Eランクモンスター、ポメラニアン・ウォーターウルフに進化させたのだった。
「マメちゃん、お水浮かべてみて!」
そうオリビアさんが、まるでお手を仕込むかのようにマメに指示すると、マメは宙に水の玉をぷかりと浮かせたのだった。それを見てオリビアさんは「うちのマメちゃんはお利口さんです!」と大興奮だった。
楽しんでるオリビアさんを見るのなんかいいな。
……そういや、シルバーモールカード(逆位置)はEランクの鬼畜レアだったなと思い出す。ということは、これ1枚でDランクになれるということじゃないか?
「おっちゃん、この指輪からカード剥がせるかい?」
「あいよ……、ってこれは!?」
「守秘義務は守ってくれるかい?」
「……まあ、こんなに買ってくれたしな。誰にも言わないよ」
おっちゃんは1000arcを受け取ると、不思議な魔導具で指輪から【シルバーモールカード(逆位置)】を剥がしてくれた。
剥がしたばかりのそれを試しにマメに近づけてみた。
Fランク:ポメラニアン・ウルフ。L(運)+1。
Eランク:ポメラニアン・ウォーターウルフ。水球攻撃。水耐性20%、A+3、L+3、D+3。
D:ポメラニアン・ラッキーセブンウルフ。保有スキル1、【ラッキーストライク:飼い主のインベントリ内のDランクまでの鉱石を弾丸として射出して攻撃でき、77%の確率でクリティカルヒットとなる】、ベースの威力は飼い主のS(筋力)、D(器用さ)依存。保有スキル2、【ラッキーマイニング:飼い主が【マイニング】で掘るとCランク以下の鉱石がドロップする】。土耐性30%、水耐性20%、S+7、V+7、A+7、D+7、I+7、L+77。
C:???
B:???
A:???
S:???
「えっ……?」
先ほど【グリーンワームカード(正位置)】を近づけたときとは別の進化ツリーが表示された。というかこれは、いわゆるレア進化というやつだ。俺は全身にゾクリとした感覚を覚える。
Cランク以降の性能は【???】となっていてわからないが、Dランクの性能は明らかになっている。タバコの銘柄みたいなふざけた種族名だが、それに反してこの性能。とんでもなくないか?
普通にカードを消費したとしても、カード性能をペットバフで引き継いでいるので進化させも問題ない。鍛冶職にとって重要なL(運)の値がとんでもないことになっている。さらにSランクまでのびしろがあるとなれば進化させない理由がないだろう。
……しかしこれはまた絶対に秘密にしないといけないことが増えてしまった。鬼畜レアを所有してたからこそ得られる貴重な情報だ。バレれば必ず狙われる。
人の口に戸は立てられないとも言うし、オリビアさんには俺とマメが強くなってから明かそう。それまでは完全気配遮断でいこう。
「ではオリビアさん、マメ、そろそろ帰りましょうか」
「はい! 今日も楽しかったですね! ね、マメちゃん?」
「ワン!」
マメが尻尾をフリフリしたところで本日の活動は終了。俺たちは夕日が沈む街並みの中、家路についた。