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39話

 オークジェネラルを倒したことを確認したと同時に間の抜けたファンファーレ鳴った。ベースレベルが一気に2、ジョブレベルが1上がったようだ。


 俺はオークジェネラルが動かないことを鑑定を使って慎重に確認する。


 【オークジェネラルの骨インゴット(劣化品)】


 うん、大丈夫そうだな。俺は完全気配遮断を解いた。


 しかし目の前には頭にインゴットを生やしたまま死んでいる巨大なモンスター。実にシュールな光景だ。


「……ハイドさーん!! 大丈夫ですかー!?」

 一息ついていたら、遠くの岩陰から事の成り行きを見守っていたオリビアさんが声をかけてきた。


「あ、はい! もう近づいても大丈夫です!!」


 オリビアさんからは、どうやって倒したのかと聞かれたが、そこははぐらかした。システムをハックするようなやり方での倒し方、それには完全気配遮断が前提となっている。虎の子は隠してこその虎の子。スキルの性質からしても、俺がこのスキルを有することを知れてしまうのは良くない。


「それよりも町にこのことを伝えなきゃ……」

「一旦戻りましょう」


 町の近くにDランクモンスターが出現した。この場所はガープ銀鉱山との交通路で結構人通りも多く、放っておくと犠牲者が出かねない。


 先日護衛をつけた乗合馬車にのったけど、せいぜい想定しているのはFランクのゴブリン程度。オークジェネラルに襲われたらひとたまりもないだろう。


 それから俺は、ベースレベルが2上がった分のポイントをS(筋力)に全振り。所持限界重量を上げ、インベントリにオークジェネラルを入れる。


 流石に掘った鉱石全部は持ち出せなかったので価値の低いものから岩穴に隠し、町に戻った。


 ……


 兵舎に行くと、待機中のイワンさんが眠たそうにしていた。


 が、イワンさんにオークジェネラルのことを報告すると、目の色が変わった。根掘り葉掘り聞かれ、銀鉱山との交通路は一時閉鎖にすることになったようだ。


 オークジェネラルの死体は兵士団に引き取られ、小金貨1枚とDランクモンスター討伐証の報酬が出た。


 オークジェネラルを倒したのは流石に隠すことはできず、オークジェネラル討伐隊に加わってくれと要請された。普段であれば断るところだが、おそらくこれはクエストなので受けることにした。


「では三日後の朝、またここに来てくれるか?」

「わかりました」


 そこでようやく解放された俺とオリビアさんは、兵舎を後にした。外に出るともう夜になっていた。オリビアさんもいつもの元気がない。


「流石に疲れたでしょう、帰りましょうか」

「ええ、ちょっと気を張りすぎました……」


 そのまま俺はオリビアさんを家まで送り届けた。その別れ際のこと。


「……ハイドさん、あまり無茶はしないでくださいね」

 と、オリビアさんはちょっと心配顔でそう言った。


「俺がそんなことしそうな人間に見えますか?」

「今日のハイドさんを見ていたら、ちょっと心配になりました……」

「あれはオリビアさんがいたからですよ。基本、俺は臆病ですからね!」

 俺は胸を叩き誇らしげにそう言う。


「そんなこと自慢しないでください!」

 オリビアさんがコロコロと笑ってくれた。さっきまでの心配そうな顔はどこへやら。どうやら俺の作戦は成功したみたいだな。


「じゃあまた明日。ギルドに伺います」

「はい。またのご利用お待ちしてます!」


「「……プッ」」

 俺たちはお互いの目を見て吹き出して笑い合い、そこで今度こそお別れした。



 星降る夜、俺は一人帰り道を歩いた。


 オリビアさんと一緒にいると、なんだかずっとフワフワした感じがする。そんな浮ついた自分を、星々の静かな輝きが落ち着かせてくれた。


 浮かれている自分、冷静になる自分、どの自分が本当の自分なのだろうかと、そんなことをずっと考えていた。

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