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33話

「どういうことか、説明してくださいっ! ハイドさんはその、ス……、スケコマシなんですか!!」


 語気荒く恥ずかしそうに俺を詰問するオリビアさん。


 俺の秘技高倉健さんはどうやらオリビアさんに通用しなかったようだ。割と渋めな声を頑張って作ったんだけどな……。


 次は「ぼ……ぼくはおにぎりが好きなんだな……」と言ってわからないフリをする秘技山下清さんを繰り出そうかと思ったけど、あまりふざけるのは逆効果っぽいのでやめておいた。


 仕方がない、ここはちゃんとしよう……。


「カーミラさんともルチアお嬢様とも、お付き合いや許嫁のような関係ではありません。彼女たちが勘違いしているんだと思います……」


「本当ですか……?」


 ジロリ。


 それにしても、先ほどから鍛冶師たちの衆目を集めすぎている。


「ちょっと、外歩きませんか……?」


 そう言って俺はオリビアさんをギルドの外に連れ出した。



 オリビアさんには、あの後どんな話が出たのか逆に俺の方が教えてもらうことになった。


 カーミラさんも、ルチアお嬢様も俺にゾッコンらしい。なぜだ……、と思ったけど、彼女たち曰くどうやら顔のせいらしい。


 ……心当たりが一つだけある。


 神様は完全気配遮断を俺に与える代わりに代償を与えると言っていた。それがこのケルト神話に出てくるクー・フーリンばりのイケメンマスクだとしたら、辻褄が合う。


 なぜなら気配を完全に消すスキルの代償として、逆に衆目を集めすぎるイケメン顔というのはスキルに対する十分な逆効果と考えられるからである。


 ある種の全方位に女性を魅了してしまう常時発動型のスキルのようなもの。俺のような目立ちたくない人にとっては、迷惑極まりない話だ。


 この世界に来てすぐにフードつきマントを買い、歩くときは顔を隠していたのが幸いしたようだ。単純一時接触くらいなら問題ないけど、結構な時間コミュニケーションをとると惚れられてしまうようだ。


 カーミラさんが夜這いをかけてきたのも、そういうカラクリだったのか……。


 思わずため息をつく俺。


 ただこうも考えられる。神様は「お前の虚無と絶望を救う手助けをしてやる」と言っていた。人付き合いの苦手な俺のこと。神様もこいつを放っておけば、新しい世界でも一生ハイディングしたまま誰とも付き合わないだろうと。それこそ恋愛とは無縁で一生を終えると思ったに違いない。


 ならば相手から寄ってくるような仕掛けでもしてやろう、と考えたとしても不思議じゃない。



 ……と、ここまで思考を進めたところで。


「それでハイドさんは、私のことどう思ってるんですか? 私のモーションに気づいてなかったとは言わせませんよ? サンドイッチ作ってあげたのハイドさんだけだったんですから! 私はハイドさんのことが好きなんですっ!」


「う……」


 陽キャ美女の視線がキツイ、目が潰れそうだ。……などと言っている場合ではない。


 代償のせいとはいえ、俺が今18歳。同い年くらいの女の子にこんなことを言わせてしまい、男として情けない態度をとってはダメだろう。流石に俺にもそのくらいの矜持はある。


 ここはちゃんとしなくちゃ。


「……俺、オリビアさんのことは素敵な方だとは思いますが、まだよくわかっていません。いきなり付き合うとかじゃなくて、まずは友達から始めてみませんか?」


 するとオリビアさんは俺の言葉をかみしめたように、頷くと。


「うん……、まだ可能性がなくなったわけじゃないもんね! じゃあ友達ってことで、これからいっぱいデートしましょうね? ハイドさん!」


「そうですね、よろしくお願いします!」


 オリビアさんとはギルド前の通りを歩きながら指切りをした。



 この世界、あるいは元の世界を含めてかもしれない。まともな恋愛経験のなかった俺に、初めてこれから仲良くなろうと約束しあった「女友達」ができた瞬間だった。


「じゃあ早速ですが、今日はこのままデートをしましょう。私のとっておきの場所、教えてあげますね!」


 丁度俺も病み上がりだ。今日の作業はこのくらいにして、のんびり過ごすのもまあいいか。


 そのまま俺たちはあくまで「友達」としてデートをすることにした。

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