27話
先ほどから言っている実験とは、ガープ銀鉱山で手に入れた2万分の1ドロップ確率の鬼畜レア、【シルバーモールカード(逆位置)】を使って高台にある岩盤を試し掘りをすることだった。
基本この世界でハイディング生活を送るつもりの俺は、目立つことは極力避けたかった。なので鬼畜レアカードの存在はできれば秘匿しておきたかった。使うにしても自衛できるだけの戦力を備えてから、そう思っていた。
しかし、昨日鍛冶作業をして感じたのは原材料の鉱石代でむしろ赤字になってしまうということ。事実ブラックスミスへの転職前と後で所持金額は減ってしまっている。
鍛冶職は鉱石を叩いて練習しまくってようやく一端の装備が作れるようになるというのが作業してみてわかったこと。そうなるまでバカ高い鉱石を全て買っていては破産してしまうと思った。
作った装備で冒険するのが男のロマンとか言って安易な気持ちで転職したものの、生産職は初期投資がめちゃくちゃかかるということを忘れていた。
ではマイナーにジョブを戻してそちらを育てるか? と言われると、男が一度決めたことは曲げたくないし、何よりロマンは追い求めていきたい。
それにオリビアさんにいいところを見せたいという気持ちが強い。せっかく昨日可愛い女の子にあんなに励まされたのに、諦めるなんて格好悪いじゃないか。男なら恰好つけんかい! というのが俺のじいちゃんの遺言だしな。
そこで一案。
金食い虫のブラックスミス職だが、その一因となっているバカ高い鉱石を自分で掘ってしまえば良いのでは? というわけだ。
【シルバーモールカード(逆位置)】の効果はマイニングを使って鉱石を掘る際、Cランクのレア鉱石がドロップしやすくなる、というもの。
つまり銀鉱脈みたいな行きにくい場所じゃなくても、もしかするとその辺の岩場を掘ればCランクまでのレア鉱石がドロップするのではないか? という目論見だった。
ちなみに銀鉱石がDランク、金鉱石がCランクとされているので、今の自分には分不相応な鉱石がドロップする可能性がある。だがその場合はレア鉱石を売って、F~Eランクの鉱石を買えば良いので問題ない。要は赤字にならなければいいのだ。
さあ、実験開始といこう。
俺は早速【銀の指輪[1]】に紫色に発光するシルバーモールカード(逆位置)を近づけスロットに挿入。すると名前が【マスターマイナーの銀の指輪[1]】に変化した。効果付与に成功したようだ。
ちなみに装着したカードはカードショップで剥がせることは確認済みだ。手数料はかかるし、鬼畜レアカードの存在がバレてしまうので、今すぐにというわけにはいかないが、もっとレアなアクセサリーに付け替えるということもできるので、その辺は心配ない。
さてその辺の岩盤を掘ってみよう。俺は銀の指輪を装着し、鉄のツルハシを取り出す。さらに念には念をということで、完全気配遮断をアクティベート。
俺は岩盤に向けてツルハシを振り下ろした。