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15話

 出口に引き返した俺は警備兵に挨拶し銀鉱山を後にした。


 宿屋への一本道を歩いていると、遠くに豪華な二頭立ての馬車が停まっているのが見えた。


 御者が馬車の扉をあけ中から人が二人降りると、誰かが急いで駆け寄って揉み手をしながらペコペコと頭を下げている。


 なぜか俺は、無性にそいつらのことが気になった。


 さらに近づいてみると、そこにいたのは先日酒場でルベン議長の娘さんを拉致監禁する悪だくみをしていたオーエン市議会改革派のミゲル議員とヤフコフ議員だった。


 鼠小僧みたいな小悪党じみた人相の男が議員二人にへりくだっている。何の話しているのだろうか? ろくでもなさそうな匂いがぷんぷんする。


 俺は完全気配遮断をアクティベートし、近づいて聞き耳を立てることに。



「それであんさん、例の件守備はどないなってます?」


「例の坑道爆破の件は予定通り進んでおりますのでご心配なく……」

と鼠小僧。


「うむ、苦しゅうないぞ。それで決行は10日後やね。くふふふ、ルベン議長の焦る顔が目に浮かびますなあ? オーエンへの鉱物資源の供給が止まり価格高騰。ルベン議長肝いり事業だけに失脚は間違いなしや。なあ、ミゲルはん」


「せやねえ。オーエンだけでは銀鉱山の管理能力なしと思われること間違いなしとなり、銀鉱山の共同開発という名目でヒルトンに採掘権を売却。わいらはキックバックをもらいウハウハっちゅーわけや。ガハハ」


「わたくし目への報酬もお忘れなく……」


「もちろんや。リビオはんはルチア嬢ちゃんのご学友のお零れが欲しいんやったね。ルチア嬢ちゃんだけじゃわいらも物足りないと思っとったしな! ついでに失脚したルベン議長一派の令嬢をもう一人や二人攫うつもりやから、心配いらへんで。三人で楽しみまひょ?」


 がはは、ぐへへ、お主もワルよのう~、と笑う三人を見て、あまりのキモさに全身鳥肌が立ち俺はその場を後にした。


 あかん、これはあかん。完全にアウトだろ。


 一刻も早くオーエンに引き返し、ルベン議長にこのクソみたいな悪だくみを伝えなくちゃ。


 改革派議員二人に、子飼いの醜悪な人相の男の名はリビオ。覚えたぞ。


 まあこれ、ゲームの記憶はないけど、おそらく最初のクエストの続きなんじゃないかな……などと思いつつ。


 ゲーム云々以前にここはリアルな世界だ。実際に少女数人が下衆な大人によって拉致され口も憚られるようなことをされそうになっているのは見過ごせない。


 馬車の夜間運航便がないなら歩いてでも帰るつもりだ。


 ……とその前に。道中またモンスターが出ないとも限らない。シルバーモールに壊されてしまった皮の鎧を買い替えてから行こう。


 先ほどの露店に行くと、おっちゃんが店じまいを始めていた。俺は急いでいることを伝え、何とか大銅貨4枚で皮の鎧を新調することができた。ついでに少なくなっていたランタン油、食料と水を小銅貨5枚で購入。



 それからオーエン行きの馬車を探したが、やはりそう都合よく見つけることはできなかった。


 どうする。馬車といったってそんなに早くはないし、ここまでは一本道だった。小走りでいけば5~6時間で到着できるだろう。地図だってある。


 ルベン議長への報告は1秒でも早い方がいい。最悪報告が遅れたことで鉱夫たちが生き埋めになりかねない。


 俺はランタンと月灯りを頼りに、ローエンに向けて出発した。

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