表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いかないで染井吉野  作者: 花田 黎
3/15

第二話 フジの花2

「あ、橙田さん。お疲れ様、この人は後で紹介するから、てことで橙田さんは俺と一緒に奥の方に来て、竜さん!ちょっと店頭お願いします!」

私はとりあえず一礼して店長さんの後をついていく。あんなに怖そうな人もバイトなの!?メンタルに来てます。

「ごめんごめん、竜さん悪い人じゃないんだけどね…まあその前にエプロンと手袋、荷物はここのロッカー、鍵かけれるしずっといる従業員は鍵付きだし退職するまでずっとここのロッカーだから靴とかエプロンはここに置いていって大丈夫。」

橙田、と書かれたプレートが張られたロッカー。あとは進藤さんと幸村さん。おそらくどっちかが女の人でどっちかがサングラスさん…というかサングラスさんはいったい何者なのだろう。あの可愛らしくて優しい雰囲気の花屋にはお世辞にもなじんでいるとは言えない風貌である。あの人が花屋で働いている理由で納得できそうなものは暴力団から抜けてセカンドライフを楽しんでいる、ということとスパイの潜入捜査です、くらいだ。さすがにどちらもあり得ない妄想であるがそれが納得できてしまうような風貌である。あとで小指あるか確認しよう。

そんなことを考えながらエプロンを装着して準備をする。髪の毛は結ばなくて大丈夫とは言われたけどギリギリ結べる長さなので一応結んでおくことにした。


「準備終わりました」

そう店長さんに声をかける。店長さんは何か花束を作っていたらしい。色とりどりできれい、赤いバラに、なんか白いぽつぽつ。あとはいろいろ綺麗な花たち。

「準備ばっちりだね。じゃあまずは自己紹介しようか。そこの竜さんと会うのは初めてだもんね。」

あ、サングラスさんは竜さんっていうのか。なんかいかにもって感じだな…あ、小指ある

「竜さん、この前いた女の人と竜さんしか雇ってないから二人にはかなり忙しくしてもらってるね、とくに竜さんは休みないんじゃないかってくらい働いてもらってるから申し訳なかったんだよね、橙田さんが来てくれたから竜さんも少し休めそうかな…ほんと歳だから無理しないでほしいんだけど……」

「おめえに心配されるほど俺は年老いちゃいねえよ。それになあ、老後の人権は金で決まるんだ、元気なうちに稼がねえでどうする。」

竜さん……身長高いなあ……威圧感…

「竜さん、この子新しくバイトで雇った学生さん。この前グループメールで自己紹介してたじゃん」

「橙田紫乃です。よろしくお願いします!」

「橙田ちゃんね…」

ちゃんづけ!?ですか!?

「俺は幸村(ゆきむら) 竜一郎(りゅういちろう)、こんななりだが昔は大学教授だ。少しばかり目が悪くてサングラスだが気にしないでくれ。なんか分からない事あったらなんでも聞いてくれよ」

あ、この人見た目で損してるタイプだ、すごく失礼だけどそれが第二の印象。

「竜さん、見た目が怖いから初めてのお客さんにはおびえられちゃうもんね、常連さんだと竜ちゃん竜ちゃんって愛されキャラなのに」

「竜ちゃんって呼ぶのは大体近所の人だけどな、安藤さんとか」

「確かに、竜さんは安藤さんのお気に入りだもんね」

「まあ、いいっちゃいいんだが……この歳だしちゃんづけってのはなあ……橙田ちゃんみたいに女子大生の年齢だったらちゃん付けも愛らしいが、こんなサングラス付けた巨体のおっさんがちゃんづけか…あ、こういうのは今は性差別って言われてなんか面倒ごとに発展するってニュースで見たな。すまねえ橙田ちゃ…さん」

この人、見た目で損するなんてレベルじゃない。そこら辺のオタクだったらギャップ萌えだって言われるタイプの人だ。 

「橙田ちゃんで大丈夫ですよ、それにそういった性差別とかするような方にも見えないので…」

「橙田ちゃんはいい人ですね」

サングラスしていても優しそうな顔をしているんだろうなって思った。多分だけど好かれてるタイプの先生だったんだろうな

「竜さん」

「あ、悪い。教え子くらいの年の子と話すとついつい昔の口調が出ちまう」

「いえ、なんか先生に褒められているような気がして嬉しかったです…ところで、昔は大学の成就であったと言っていましたが、研究とかはもういいですか?」

「ああ、してるぜ。問題なく進んでる。けどずっと研究ばっかしてると疲れるからこれは息抜きだな。研究の息抜きにここで働いて、寝て、起きて研究して働く。」

一日何時間ある?この人だけ一日が人の倍あるよね。

「ほんと、竜さんはいつ寝てるんだろう、って常に思ってるよ」

「フハハ、そんなたいそうなもんじゃねえよ」

「ってそんな話してる場合じゃないよ、いろいろ教えないといけないことがいっぱいなんだから……てことでこれからいっぱい説明するからメモしてね、もしペースが速くてメモが追い付かなくなったらいつでも言って?久々の新人研修だから俺も忘れちゃってるとこあるし、なんでも質問してね」

「はい!」




とりあえず竜さんに一礼して店長さんについていく

「ここは苗スペース、パンジーとか苗ごと買っていく人が多いからここは季節とか気温とかに応じて水やりの頻度変えてる。それはさっきのバックヤードに貼ってあるからあとで教えるね、最初は覚えなくても大丈夫、いずれ覚えるから最初はメモみながらやっていこうね」

苗スペースの水やりはバックヤードのメモ参照…

「水やりはこの緑のホースを使ってね。ここにある花たちは全部水をあげて大丈夫。隣の敷地とか道路に水をぶちまけないようにすることと大量に水をあげすぎない事だけを注意してくれたら問題ないかな。水がちゃんと言ってるか不安って思ったら土を見て、湿ってたり軽く水たまりっぽくなってたら大丈夫、逆に土が乾いてたら水が足りてないし水たまりどころか浸水してたらあげすぎ。あげすぎてた時だけ教えてほしいかな。」

水の分量に注意…

「ホースの水はここの蛇口で開け閉めしてね、ちなみに虫は平気?」

「はい、田舎育ちなので割と…あ、ゴキブリはあまり見たことが無いので退治できるかは分からないです」

「了解、うち花屋だから青虫とか蝶々とかいろいろ寄ってくるからさ」

「そこら辺の虫は大丈夫です」

「じゃあ大丈夫だね」

そっか、虫も出るよね、花だもんね…まあ、田舎育ちでかなり虫には大勢がある。自転車をこいでる最中に羽虫がこちらの顔面に激突、なんてよくある話だったから……

「さ、じゃあ店内説明としようか。ここは花束用の花たち、種類は季節とか入荷状況によって変化するから最初は覚えられないと思う。場所も毎日変わってくるし…最初は花束を作る工程よりも配達補助とかレジとか水やり、裏方に回ってもらって徐々に慣れてもらう予定だから安心してね」

確かに、ここにある無数の花たちを覚えるのはテストの回答を覚えるのと同じくらい難しそう

「んで、ここは多肉植物のスペース、基本的に水やりしない場所ね。でも花の状態とか見て水やりすることもある、基本的に週一回ってのが相場だからうちは統一して毎週火曜日に水やりしてるよ」

多肉植物の水やりは毎週火曜日、まれに例外あり…

「ここはドライフラワーとか完成品のブーケゾーン。ここの値段はレジに値段表があるからそれを見てレジを打って。花の値段は横にある冊子に書いてる。花の名前を覚えたらあとはそこの冊子から値段を探すだけだしいずれ値段も覚えちゃうから安心して」

値段はレジ横の表や冊子…花ごとに値段が違う…

「リボンの結び方は花束を作れる段階になったら教えるね、でも定期的に様子を見て減ってたら補充はしてほしいかも。補充ケースはここのリボン棚にあるから。」

リボンが減っていないか確認するのも忘れずに…

「次に決済方法、うちは現金、クレジットだけだから多分すぐ覚えられると思う。」

レジの説明はメモが忙しすぎて省略。とりあえず全国のレジ店員はすごいなって感想だけ伝えとく

「ここまでが店内説明……大丈夫?」

「はい………」

「…ちょっと休憩しな?あ、竜さんも休憩時間じゃん!ちょっと二人で休憩しときな!」いきなり竜さんはハードル高いですね!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ