第二話 フジの花1
「バイト決まったの!?おめでとう!」
そう祝ってくれたのは大学でできた数少ない友人。たまたま出席番号が近くて同じ班でオリエンテーションをしたのがきっかけ。明るくて誰でも友達になれる性格の彼女が私を選んで一緒に行動してくれるのはありがたいと同時に不思議になる
「そういえば愛依ってどこでバイトしてるの?」
「私はアパレル!ほら、うち都心だからさ、そっちの方でバイトしてるの、同級生もくるっちゃくるけど普通に話すよ?」
「柴乃は緊張しいだからね、でも柴乃は見た目ってかオーラから性格よさそうでいい子そうなのが溢れてるから大丈夫だと思うよ」
カレーうどんをもった仍依があいかわらず雑そうに座る。汁こぼれちゃう
「仍依!せっかく白い服着てるんだからカレーうどんやめて!てかもっと丁寧に座りなよ!服にはねるよ!」
「うるっさ……いいじゃん別に、愛依は黒い服なんだから」
「そーゆー問題じゃない!」
仍依と愛依は双子、見た目は正反対だけどどっちもおしゃれ。でも愛依の方がコミュニティが広い気がする。まあ仍依の見た目と雑な性格が関係してるんだろうけど、でも悪い子じゃないし私は好き。
「てか柴乃バイト採用おめでと、私が景気づけに化粧をしてあげる」
「やめなよ、柴乃は可愛い顔してるんだから仍依のメイクしたらかわいい顔が活かせなくて最悪。」
あ、いやな予感。
「てめえのあばずれ化粧よりマシだろ」
「なんですってえ!!!!!」
また始まった双子喧嘩、この二人、普段は仲が良いけどどっちか機嫌が悪かったりするとすぐ喧嘩する。週に何回も喧嘩を見たらさすがに慣れて止める気もなくなる。けどさすがにこれ以上口喧嘩をさせる気にはならない
「仍依、愛依、早く食べないと冷めちゃうよ?」
「そうね、柴乃の言う通り、一回休戦ね」
「柴乃は優しいな、ほんと可愛い」
この二人の方が圧倒的に可愛い顔をしているのに何を言ってるんだろうっていっつも思う。愛依はフワフワして女の子って感じだし、仍依は強そうな感じの女の子で女受けしそうな見た目をしている。真逆だけどどこか似ている感じがすごい可愛い双子だと思う。
「そういえば!柴乃のバイト先、男の人とかいるの?」
「うん、店長男の人だよ」
「どう?若い?イケメン?」
「イケメンだと思う、それもかなりの…そこらへんにはなかなかいないと思うよ」
年齢は分からないけど相当のイケメンだと思う、多分三十代半ばって感じかな。そこらへんにはいないキラキラしたイケメンだなって思う。黒紙だけどきっと金髪も似合うんだろうな。てかどんな髪色でも似合いそう………蛍光色は似合わないかも。
「いいじゃん!イケメン店長と女子大学生が花屋で繰り広げる甘酸っぱい恋物語…」
「そんなんじゃないよ…」
店長はそんな、軽率に恋したら死にそう。うまく表現できないけど、恋したら人生めちゃくちゃにされそう……最低な表現だね
「愛依はなんでもすぐ恋バナにしすぎ、節度持てよ」
「仍依はなんでそんなに冷めてるの?枯れてる?」
まずい、また喧嘩が始まる。なんか今日はいつもにましてめんどくさい…なんなの?ストレス?
「二人とも、そろそろ移動教室だよ?次の授業行かないと?ね?」
「紫乃…その気遣いがあればどこでもやっていけるよ…」
「紫乃は優しすぎるくらいだよ」
「二人とも大げさだよ、早く行こう?」
バイト前になんかすごい疲れた気がする……二人といるとすごい人の心読むの上手になりそう……
なんだかんだでバイト初日になってしまいました
「はあ、思ったよりギリギリかも…」
授業終わり、講義感が思ったより正門より遠くて焦った。そっか、大学は広いからそこも考慮しないといけないんだ…勉強になったな。
深呼吸をして一息、今日から頑張ろうの意を込めて中に入る
「お疲れ様です!」
「……誰だ?」
泣きそうです