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君に捧ぐ永遠の唄  作者: 須田凛音
第一章 森の奥深くに
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第四話 貴方の名前は?

「・・・なあ、もしよかったら、僕とちょっと外の方に行ってみないか。」


「外?・・・私が? 」


目を真ん丸くさせて彼女は言う。


「そう、君だよ。今ここにいるのは僕と君だけだろ。」


「いや、あんたの後ろにも・・・・。」


「え!?ちょっ!?!?マジ!?!?」


「嘘よ。」


おいおい勘弁してくれよ・・・ガチで何かがいるかと思ったじゃねえか。 冷や汗を手で拭いながらそんな事を考えていると、彼女はこう続けた。


「と、とにかく私がここから離れるなんて無理だわ。 私はここに居続けなきゃならないの・・・出ちゃいけないの・・・守り続けなくちゃいけないの・・・。」



「でも、それって自分でそう思い続けてるだけの事なんだろ? 僕は君の不老不死の事や、その事情の事についてはよくわからないけどさ。 どうせ、もう俺も仕事辞めちまったし、もし出てみたいなら連れ出してやるよ。」


そうアプローチしてもなお、まだ彼女の表情は固いままで、心なしか、さっきよりも深く俯いているように見えた。 もしかしたら彼女の禁忌に触れてしまったのかもしれない。

再び二人の間に流れる沈黙。何だか、一度目よりも更にどよんとした雰囲気が二人を覆った。


なんだか悪い事しちまったな・・・ここは引きさがることにするか・・・。


そう思った僕は、「悪かったな・・・それじゃ・・・」と呟き、その場を去ろうと背を向けた瞬間、背中に、まるで綿毛をフッと掴むような優しい、けれど明確な感覚が背中に走った。


サッと首を後ろに向けてみると、彼女がいた。


「・・・なるべく早くここに戻れるなら・・・・。」


細々とした声が聞こえてきた。 


「え・・・今なんて・・・」


「だから・・・早く戻ってこれるなら・・・私を連れ出してもらっていいか・・・しら。」


絞り出すように、でもさっきよりはほんの少し力の入った声でそう言った。


彼女もきっと心の何かが動いたのだろう。 僕はもちろん、その問いに対して首を縦に振って答えた。



「よし、そうと決まれば早速出かけてみるか。」


僕らはこうして、あてのない旅に出ることになったのだ。


とりあえず、山の中を転げ回った時にやらかした傷口を手持ちのハンカチで適当に止血したり何なりをした後、駐車場のある開けたところを目指して僕らは歩き始めた。


・・・とはいえ、真夜中の森の中である。ランプなんかあるはずもなく、あるのは月明かりと携帯のフラッシュ(充電切れかけ)だけである。しかも方角なんてわかろうはずもない。当然の如く、迷いかかった訳なのだが、そこはこの森の主(?)と言っていい彼女が案内をしてくれたおかげで、なんとか小一時間かけて駐車場のところまで戻ってこれた。


彼女はあまり見慣れないクルマに興味津々なようであった(森の中に捨てられていた雑誌などで存在は知っていたらしい)


それぞれ大した荷物も持たないまま、二人は車に乗り込み、駐車場を後にした。


走り出して暫くして、助手席にいる彼女がポツリ。


「・・・そういえば、あれほど話し込んだのに、あなたの名前聞いてなかったわね。あなた、なんて言うの?」


「あー・・・そういえば言ってなかったな。僕の名前は白瀬凛歌(しらせ りんか)っていうんだ。」



「凛歌? 女の子みたいな名前ね。」



「・・・よく言われるよそれ・・・。」



ため息交じりにそう答えると、彼女はフフっと微笑んだ。 そして、こう続けた。



「私の名前はね、とわ。千代ちしろとわって言うの。」



親し気な笑顔を見せて、呟いた。



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