アンラ・マンユ
「うぅ……」
「まぁまぁ、そんなに機嫌を悪くしないでください」
「……別に悪くない、です」
使用人の手によって早着替えさせられたアカは何とも言えない気持ちになっていた。子供とはいえアカは男、お着替えさせられるのは嫌な年頃である。だが使用人の完全な善意であり、実際に速かった為ぐうの音も出ない状態であった。
因みに使用人は特に気にしていない。
「良くお似合いですよ。作ったかいがあります」
「え、この服使用人さんが作ったの!?」
「使用人ですから」
「すげぇ……ありがと!! あ、です」
「……ふふっ。普段通りに話して大丈夫ですよ」
子供に尊敬されたのが嬉しかったのか、使用人は優しく微笑む。
「使用人さんスペック高いからなぁ……さて、準備も出来たしそろそろ行こうか」
「うん分かった」
素直に従うアカ。医者と使用人の優しい雰囲気もあり、アカは既に2人を信用していた。まだ解決していない問題はあるが、少なくとも「自分を殺すようなことはしない」と理解したからだ。
まぁ、どちらにせよアカがこの場から逃げることは不可能ではあるが、今それは置いておこう。
治療室から出たアカ達は今、"ホール"と呼ばれる場所に向かっている。通路は鉄板で四角く覆われており、外の様子は見えない。
アカは今更ながら「自分が何処に居るのか分かっていないこと」に気が付いた。
「あの、ここって……」
「ん? あぁ、ここはスラム街の地下だよ」
「え、ちか!? ……ってどこ?」
「あはは……地面の中ってことだよ」
「えぇ!!!!」
地下の概念を知らないアカにとって「自分が居る」というより「地面の下に住んでいる」という現実のインパクトが強すぎて思わず驚いてしまう。
「地面の下って生きていけるの!?」
「実はね、この施設には大規模空気清浄システムが____」
そんな訳でホールに着くまでの間、アカ達は会話を楽しんでいた。しかし楽しく話している内に、アカはふとあることを思い出してしまった。
「という訳でこの施設には……アカ君?」
「医者さん」
「何だい?」
「兄ちゃん、灰色の髪の人知らないですか?」
「……ごめん、ここにはいないよ」
「そう、ですか」
「自分の兄がいない不安感」と「呑気に楽しんでいた罪悪感」にアカは暗い顔をする。先程までの楽し気な雰囲気とは違い、重たい空気が流れる。
「だけど探しに行くにしても食べてからだね。このままじゃお兄ちゃんを見つける前にアカ君が駄目になっちゃう」
「…………わかった、です」
「よし、君は良い子だ」
医者はアカの頭を撫でる。兄のぬくもりでは無かったが悪い気分ではなかった。
そして歩き続けているとアカ達はとある扉に辿り着く。
「? この先か?」
「正確にはこの下だね」
「何言って、うわ動いた!! ってなんもないじゃん」
「そっか、アカ君は初めて見るのか。少し驚いちゃうかもね」
通称:自動ドアと呼ばれる扉を初めて見るアカ。その様子を見て医者は軽く笑っていた。不思議に思うアカだったが、医者達と共に狭い部屋に入り込む。
「驚くって、あ、また動いッ!?」
「大丈夫、エレベーターって言って地下に行く機械なんだ」
「あわわわわ」
「医者様、子供を怖がらせて楽しむとは……最低ですね」
「えっ!? ご、ごめんよぉアカ君~」
「あわわわわ」
~~~~~
始めは驚いていたアカだったが到着する時にはすっかり慣れていた。小部屋にベルの音が鳴り響くと扉が開き、ホールに到着する。
その印象は食事場と言うよりも会議室、いや"秘密基地"といったところか。種類がバラバラなランプ、壁に何処かの地図らしき絵、至る所に組み込まれている歯車。部屋の中央には大きなテーブルが置いてあり、上には大量の料理が乗っている。
そして、この料理を既に食べていた人物が居た4人居た。
「お、旦那のオキニが目覚めたみてぇだ」
あの時助けてくれた傭兵という男。
「ぬうぉぉぉぉ!!!! 例の実験体が目覚めたというのかぁぁぁ!!!!」
「煩いですよハゲ頭」
「黙れ小娘!!!!」
頭にゴーグルを掛け、大声を出す老人。
「ふん、本当にガキじゃねぇか」
しかめっ面で筋肉質な男。
そして____
「来たか坊主」
自分を悪党と名乗るこの男。
男はあの時のようなあくどい笑みを浮かべて、こう言った。
「ようこそ、《アンラ・マンユ》へ」
アカが来た施設自体秘密基地みたいな所ですからね。
カイについては「現在行方不明状態」です。
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