悪
コツコツ投稿宣言直後に夏バテしてしまい、投稿出来ませんでした。
申し訳ありません。
『やめろ』、そう聞きこえた瞬間、振り下ろされた剣がピタッと止まる。いや、止まったの剣だけではない……体もだ。
(!? う、動かねぇ!?)
部下の男は自分の体が動かせなくなり助けを求めようにも声が出ない。
(だ、れ……)
剣が振り下ろされず、声の主が助けてくれたのかとアカは力を入れ何とか顔を上げる。するとそこには知らない男が2人立っていた。
1人はパーマに髭姿、右手にはメガホンマイクを持った男。だがそれ以上に特徴的なのは男の放つ圧。殺意とはまた違う、他者を恐怖させるような存在感がそこにはあった。
また、その隣に立つこの男も「異様」、両目に短剣を刺した不気味な見た目をしているのだ。
そんな怪物達の圧を前にして、所詮三下である部下の男は全身から冷や汗を流しガタガタと震えていた。
「だ、誰だおま」
「知りたいか?」
「あ、あぁ。うわぁぁ!!」
話しかけただけで限界が来たのか、堪らずこの場から逃げ出してしまう……が。
「傭兵」
「はいよ旦那ァ」
「あああ、ぁ、ぁ…………」
両目に短剣が刺さった男『傭兵』が返事をした途端、逃げる部下の男の体は傭兵の刀によって一瞬にして体を真っ二つにされてしまったのである。
「で、こいつらは?」
「ガキは残せ」
「りょーかい」
(やめ、やめ、やめ____)
体は動かないが自分に迫る足音は聞こえる、聞こえてしまう。
その音が恐怖を肥大化させ、部下の男は死の恐怖の中、傭兵によって首を撥ねらる。頭の無い体は噴水のような血しぶきを上げ、ようやくゴトリと倒れたのだった。
(だれ……だれなんだ…………)
血しぶきの勢いは凄まじく、目の前に居るアカにも当然掛かる。
生暖かい血に溺れながらアカは悩んでいた。果たして2人は「自分を助けたヒーロー」か、それとも「人を殺すヴィラン」なのか、と。
「……んたは」
「あ?」
「あんたらは、ヒーロー、なのか?」
アカはこの2人を知らない。それでもこの絶望から救ってくれたのは事実だ。
だからこそ問う、「これが夢の正体か」と。
アカに問われた男は数秒の沈黙の後、あくどい笑みを浮かべ、こう答えた。
「俺は____悪だ」
~~~~~
体が暖かく、重い。
アカがゆっくりと目を開けると、そこは知らない部屋だった。体を起こし辺りを見渡すと、多くの薬品や本が置いてある。いわゆる医務室なのだが、スラム街で過ごしているアカに馴染みのない場所であった。
「こ、ここは……」
「おや、お目覚めかい?」
声の方向を向くと黒縁メガネをかけた白衣の男が座っていた。
「えと、あんたは」
「僕? 僕は『医者』、よろしくね。えっと君は……」
「あ、アカです」
「アカ君か、良い名前だね。僕はここで君の看病をしていたんだ」
そう言われ自分の体を確かめてみるとあちこちを包帯で巻かれて綺麗な服を着ており、看病してくれたのは本当のことだろうと察する。
「あ、ありが」
「起きましたか」
「うわぁ!!」
「あ、丁度いい所に。アカ君、彼女は使用人さん。彼女も看病を手伝ってくれたんだ」
「初めましてアカ様。私は『使用人』と申します。体調のほどはよろしいでしょうか?」
「あ、えと、大丈夫、です。ありがと……です」
「いえ、ご主人様の命令ですのでお気になさらず」
いつの間にか背後に居た黒髪長髪の女、使用人に対して出来る限りの敬語で礼を言う。
その様子を見ていた医者は何かを思いついたのか、手を叩いた。
「そうだ、ホールに連れていこう。きっとお腹が空いているはずだ」
「そうですね。ではアカ様、失礼します」
「えっ、ちょ、わわわ」
有無を言わせず、アカは強制的に着替えさせられたのであった。
追記:お久しぶりです。コツコツ投稿できるよう頑張ります。
おまけ(新キャラ紹介)
メガホンの男、傭兵、医者、使用人
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