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ANTI HERO~悪が望む英雄譚~  作者:
愚かな主役共
22/24

何時か見た夢

お久しぶりです。またのんびり更新していくのでよろしくお願いします。


訂正:適正道具がもたらす能力を少し変えました(17話)。内容は↓の通りです。

道具の性能を高める"強化":【例】剣の切れ味を上げる

道具の形状を変化させる"操作":【例】釘を浮かせる

道具に人々が抱いた"幻想":【例】メイスが重くなる

 【はじまりの少女】が生まれた西暦2000年から第三次世界大戦が始まるまでの3年間を人々は《ソウル黎明期》と呼んでいた。

 ソウル黎明期は適正道具(ソウル)という新たな力に政府の対応が追い付かず、世界が恐怖と混沌に包まれた暗黒の時代である。


 また、それはこの島国も例外では無い。


 まるで物語の主人公のような力を突如として得た民衆は「自分達は神に選ばれた存在」と無自覚者を支配し、より強い力を求める。かつて「平和の国」と呼ばれた日本はもう存在していなかった。

 緊急事態宣言を発令した日本政府はすぐさま自覚者である警察公安・一般の志願者達を収集、《異能犯対策部隊》を形成。鎮圧に試みた。


 その中でも他と一線を画す部隊が1隊存在していた。その名を第108部隊、通称【死神】。






「こちら108、占拠していた暴徒の鎮圧に成功」

『108、了解。すぐに本部へ帰還せよ』

「了解…………ふぅ、やっと帰れる」


 男はそう呟き、煙草に火を付け一息つく。血濡れた刀を担ぎ、自らが築いた屍の山は座り心地の悪い椅子にしかならない。


「たいちょー相変わらず仕事速いっすねェ」

「村正、言葉を慎みなさない」

「はいはい副隊長殿」


 黒髪長髪の姉に目つきの悪い弟、どちらも屍の山に座る姿に何の疑問も持たず男に近づく。その姉弟もまた刀を所持していた。


「雪、本部に帰還するからアイツらを呼んで来てくれ」

「須吾君だけ呼んで来ます」

「そーですわグリム様!! このアリア、呼んで下されば何時でも何処でも貴方様のすぐ側に向かいますわ!!」

「近い近い、ちょっと離れ」

「嫌ですわ!!」


 アリアというこの女。呼び出すまでもなく一瞬で現れ、自身をお姫様抱っこさせ頬擦りする程この男を愛していた。なお一方的な愛である。


「皆さん、もう終わってたんですね」

「須吾君、丁度呼びに行こうとしてた所なの」

「相変わらず遅ェなぁ。これだからカスは」

「ほざけ野猿」

「んだとォ陰湿針ネズミィ!!」


 須吾は目が隠れる程長い前髪を持ち、荒っぽい村正とは相性がとことん悪い男だ。


「さて、全員揃った事だし本部へ帰還するぞ」

「了解」

「グリム様の隣なら何処へでも♡」

「あーあ、また詰まんねぇ仕事だったな」

「眠い」


 グリムは指示を出し、4人もまたそれに従う。

 彼らが去ったこの地では命一つとして音が鳴らなかった。



 第108部隊。旧新宿街を占拠していた自覚者計529人殺害の後、本部へ帰還。




~~~~~




「本部へ帰還せよ…………ふぅ」

「お疲れ様です先輩」


 青年は先程まで通話をしていた男を労う。彼の適正道具(ソウル)が抱く幻想【通信】により第108部隊と連絡を取り合っていたのである。物資が不十分な今、こういったサポート能力は重宝されるのだ。

 とは言え長距離、それも数時間も使えば流石に疲労が堪る。だがそんな弱音を言えるはずも無く、男は労う後輩に言い訳をする。


「まぁこれも雪……日本の為だからな」

「そんなに雪姉さんが好きなら早く告白すれば良いのに」

「はぁ……あのな、前から言ってるけど俺は雪を好きなんじゃなくて憧れてるだけだ」

「はいはい」


 「またいつもの言い訳が始まった」と呆れる青年に構わず、男は話を続ける。


「今日本が崩壊してないのは雪が居るからだ。あのカリスマ性に他を圧倒する力____それに【はじまりの少女】というネームバリュー」


 男はまるで憧れのヒーローを語る子供のように"ニイッ"と口角を上げた。



「雪みたいな奴が……英雄って呼ばれるんだ」




~~~




「12年……随分と遠回りしたがようやく見つけた」


 眺める空は今日も暗い。最後に太陽を見たのは何時だったか。

 そんな下らない事を考えながら男は煙草に火を付け、一息つく。


「もうすぐ、もうすぐで俺の夢が叶う」


 隣には誰も居ない。だが、それでも男は彼女に語りかける。


「だから待っててくれ…………雪」



 例え、それが世界を壊したとしても。




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