傲慢で偽善な
お久しぶりです(約1年振り)
全然更新出来ず申し訳ありませんでした。。。
何とか一章分くらいは早めに投稿したいと思っています
結局、アカは何もせず団長と共に部屋へ戻った。
「帳簿は見つかったか」
「はい、裏に居た伯爵級との繋がりも押さえました」
「コッチも袋詰め終わったぜェ」
二人の仕事は終わったようだが正直どうでも良い。先の光景を見て「自分はどうすれば良かったのか」、アカは重い表情でずっと考えていたのだ。
「どうかなされたのですか」
「使用人さん…………」
その様子を見かねてか、声を掛ける使用人。するとアカは顔を上げ、先程見た出来事をポツリポツリと話出した。このモヤモヤする気持ちを誰かに吐露したかったのだ。使用人は何も言わずただ耳を傾ける。
「可笑しいよね。兄ちゃんの手掛かりすら見つかってないのに、今はそれよりも知らない子を助けようだなんて……俺は、俺が分からない」
爪が食い込む程力強く握りしめる。結局、4年前から何も変わっていないのだ。いくら体を鍛えた所で自分のしたい事一つ叶わないのだから。
「この四年間、アカ様がお兄様を救う為に必死に努力していた事を私は知っています。その思いが私如きが理解しきれない程大きい事も」
「だけど、俺は何も変わって……ッ」
「本当にそうでしょうか」
「……え?」
だが、その感情に使用人は真っ向から否定する。
「アカ様、貴方が本当にしたい事は何ですか?」
「本当に、したい事……」
『僕は____"ヒーロー"になるんだ』
それは兄が良く言っていた俺達の夢……じゃない。これは兄の夢だ、俺の夢じゃない。じゃあ、俺の、本当にしたい事は__
「俺は……」
「アカ、お前もこっち来いよォ。おもしれーモン見れるぜェ?」
「え、ちょ」
傭兵がアカを強引に引っ張り連れて行くと、そこでは既にオークションが始まっていた。アカは考える間もなく、流れのまま観客席に腰を付ける。
「ではこちらの奴隷は1050万での落札となります!! それでは、お次の奴隷はこちら!!」
「ッ、あの子は……!!」
ステージの上に居るのはあの時の少女。手足に枷が嵌められており、泣いたのか目元が赤い。
「くすんだ髪に合う透き通った白い肌!! 今からでもお楽しみ出来る事間違いなし!! 1000万からのスタートです!!」
「1200!!」
「1500!!」
跳ね上がる命の値。反比例してアカの顏はどんどん暗くなる。金で人を買う人に、それをただ傍観している自分に心底嫌気が差す。
「アカ」
「……何、ですか」
「お前は俺が最初に言った事を覚えているか」
「最初に言った事?」
「今のお前に……誰かを殺す"覚悟"はあるか」
「それは……」
団長の質問に口ごもるアカ。アカには「はい」と言い切れる自信が無かったのだ。「何も変わってないのに人を殺せるはずがない」と、そう思ってしまったのだ。
「5400万での落札!! 高額落札に皆様、拍手をお願いします!!」
何も出来ず、何も変わらず、ただ時間だけが過ぎてゆく。少女の落札は決まり、バックヤードへと運ばれようとしていた。
「ほら行くぞ」
「い、いや……」
あの時の勇敢な少女は一体何処へ行ったのか。あれでは心細くしている一人の女の子にしか見えない……いや、当たり前だ。抗う事が出来ない怖さは身を以て知っている。
「ッチ、抵抗するんじゃねぇ……!!」
「あうっ……」
アカはその姿に__
「……誰か、助けて」
『助けて……ヒーロー……』
「ッ!!!!」
酷い既視感を覚えた。
「団長……俺、行くよ」
どうしてあの少女を助けたいのか分かった…………あの子は自分だ、助けを求めたあの時の自分自身だ。
「あ? 何言って」
「『助けて』って、あの子が言ったんだ」
「何?」
聞こえてしまったのだ、あの少女の「助けて」の声が…………なら、助けるしかないだろうが。
「誰も助けてくれない苦しさを、俺は知っている。だから」
「だから何だ。お前は兄を探しにここに来たんだろ」
アカの出した答えは……
「うるせぇえ!!!! 誰も助けねぇのなら俺が助けてやる!!!!」
傲慢で偽善な____最高の答えだった。
「……ははは」
「団、長?」
笑う。
「あはははは。あっははははははははは!!!! ははははははははは!!!!!!」
両手を広げ、天高く笑う。
響き渡る笑い声に会場全体が戸惑うがお構いなしだ。
「……そこのお客様、他のお客様の迷惑になりま」
「『黙れ』」
「____ッ!!」
「アカ…………良くぞ言ったァ!!」
「えっ」
団長はアカに、否全ての人間に言い聞かせるかの如く、張り裂けんばかりに声を出す。
「傲慢? 偽善? 大いに結構!! 自分の信念に従って何が悪いッ!!!!」
「……!!」
その目を見たアカは体が震えるのを感じた。恐怖からでは無い、誰かを導く巨大な存在に自分が押し潰されそうになったのだ。
「俺は言ったよなアカ、『誰にも邪魔されない圧倒的な力を与える』と……ッ!!」
団長はアカにメガホンを向け、傲慢に笑う。
「今、未熟なれど器はここに誕生した。【罪作りな男】の名の下にこの名を授ける」
悪は紡ぐ、■■の名を。
「今日からお前はこう名乗れ____【反英雄】と」
やっとタイトル回収です。
それに加えてなろう特有~~も付けました。