ディダード探検3
今日は少し長めです。
「えっ」
「鍛冶師様は非常に優れた作り手です。彼に係れば本当にどんな道具でも作ることが出来るでしょう」
「どんな、道具でも……」
突然の質問に戸惑うアカだったが自分の欲しい物など既に決まっていた。それは兄を助けられるような、そんな何かだ。
「オレに、強い武器をくれ」
アカは真剣な眼差しで鍛冶師を見つめる…………が、その答えは"不正解"であった。
「ぐふっ!!」
鍛冶師は立ち上がり、怒気を孕んだ顔をしながらアカの胸倉を掴む。しかし使用人は鍛冶師の行動を止めず、ただ眺めている。
「いいかクソガキ、二度と俺の前で『強い武器が欲しい』なんてほざくんじゃあねぇ。てめぇの身の丈にあった道具を使え、分かったか……ッ!!」
「わ、わかっ、たぁ」
「ふんっ」
「ぐ!!」
息苦しそうに返事をすると、鍛冶師は悪態を付きながらアカを雑に離す。
「大丈夫ですか、アカ様」
「あ、ありがと……」
アカは礼を言うが内心はそれどころではない。それは決して「使用人が助けてくれなかったから」でない、「兄を助ける武器を手に入れることが出来なかったから」だ。一度期待してしまったこともあり、気持ちが落ち込んでいたのである。
すると、鍛冶師はおもむろに歩き出し、箱の中にしまっていた何かを取り出した。
「おら、これでも持ってとっとと出て行け」
「うわっ!! って、これ」
鍛冶師から投げ渡されたそれはアカの見知った物。忘れるはずも無い。フーニスの部下達に殺された時に一矢報いた、あの時の"鉄の棒"であったのだ。
「てめぇにはその"金属バット"がお似合いだ」
「金属、バット」
その言葉を聞いた途端、頭の中でカチッと何かが嵌まる音が聞こえた。
金属バット____それがアカの適正道具だ。
「団長が初めててめぇと会ったとき、男1人吹き飛ばしてたって言っててなぁ」
「う、うん」
「だからどうした、調子に乗るんじゃねぇ。てめぇみてぇな鼻垂れ坊主、殺し合いになったら1秒も持たねぇよ」
「は、はい」
「用が済んだら出て行け!! ッたく」
鍛冶師はアカ達に怒鳴り、鍛冶室から追い出す。そして廊下に出た瞬間、使用人は深く頭を下げた。
「申し訳ありません。先に注意するべきでした」
「わわ、気にしないで!!」
「ですが……いえ、お許し頂きありがとうございます。それとアカ様、度々申し訳ありませんが1つお願いしてもよろしいでしょうか」
「うん、なんでも言って」
「出来るのなら、鍛冶師様のことをあまりお嫌いにならないで下さいませんか? あのお方はただ不器用なだけなのです」
「大丈夫だよ。あの人が心配してくれてるって、オレわかってるから」
ニッと笑みを見せるアカ。その顔に安心した使用人は顔を緩ませるのだった。
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「やーっと来たか。もう少しで寝ちまうとこだったぜ」
次に案内された部屋では傭兵が刀を肩に担いで待ち構えていた。今までの部屋とは違い物はなく、ただ広い空間である。
「ここは"訓練室"、てめぇに戦い方を教える部屋だが……今日はそんな暇ねぇらしいな」
「本日はディダード案内となっておりますので訓練は明日からになります」
「つー訳だ。ったく……じゃあ呼ぶんじゃねぇよ」
「団長様の指示ですので」
「……」
アカは気怠そうに話すこの男がいまいち理解出来なかった。傭兵に対する印象は「両目に短剣刺して淡々と人を殺すやべー奴」、だが今の様子からは人殺しをするなんて想像出来ない。
「では、本日はこれで」
「おう、晩飯期待してるぜェ?」
傭兵の会合は嫌に呆気なく終わった。
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その後も各施設の案内をし、終わる頃には夜食の時間になっていた。
「本日はこれにて終了となります。お疲れ様でした」
「使用人さん、今日はありがと!!」
「ふふ。この後は夜食となりますのでホールに向かいましょう」
「おぉ!! 今日はいったいどんな料理が出て来るんだ……!!」
「それは食べてみてからのお楽しみです」
「たのしみだなぁ……ん?」
(なんだろ、これ?)
ふと、壁の一部が違う装飾になっていることに気付く。一見、四角いラインが描かれた唯の壁に見える。扉だろうか。しかし、使用人に案内する素振りは見えない。
「どうかしましたか」
「使用人さん、これなに?」
「ここは団長の部屋です」
「団長の?」
「はい。普段は鍵が掛かっている為開きませんが、許可なく入ろうとしてはいけませんよ?」
「うん、わかった」
疑問が消え、2人は再び歩き始めた。
この世には、知らない方が幸せな事実も存在する。
案内という名の説明回。
ついにアカくんのソウルが判明しましたね。
金属バット振り回す系主人公です。
という訳で、ここまで見て頂きありがとうございます。
次話からようやく物語が動き出します(メイン)
これからも応援のほどよろしくお願いたします。。。
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