ディダード探検1
「むぅ……」
「おはようございますアカ様」
「ぬおぁ!! お、おはよう使用人さん」
ぬっと顔を出した使用人に驚きながらも挨拶をするアカ。
「おはようアカ君、そこに洗面所があるから顔を」
「失礼します」
「え、ちょ、ぼぼぼぼ」
「洗っておい……まぁ任せるよ」
医者は挨拶をして顔を洗うよう提案する……が、その前にアカは使用人の強制奉仕を受ける。最後まで言えなかった医者だが「いつものことか」と割り切っていた。
医者は顔を洗い終えたのを確認すると空いている席に座らせる。
「朝食はホールで食べるのが基本なんだけど、疲れてたみたいだからね。今日はここで食べていいよ」
「朝食はサンドウィッチとなっております」
「お、おはよう医者さん。いただきます……うまっ!!」
後で使用人から聞いたところ、どうやら「朝食と夜食はホールで食べる」という決まりがあるらしい。アカは朝食を逃してしまったが、疲れていることも考慮し今日は特別に医務室で食べることを許可してくれたそうだ。
アカがサンドウィッチを食べていると、使用人はおかわりを運び今日の予定について話し始めた。
「本日の予定は《ディダード》の施設巡りとなっております」
「でぃだーど?」
「はい、我らアンラ・マンユの本拠地、この全施設の正式名称でございます。ご案内は私が行いますのでご心配なく」
「そうなんだ、ありがと使用人さん」
どうやら今日はこの謎施設の探検らしい。丁度知りたかった事でもあるし、何より好奇心旺盛な年頃のアカは「知らない場所の探検」に少しワクワクしていた。
「さて、アカ君も食べ終わったことだし、ここの説明をしちゃおうか」
食べ終わった頃を見計らい、医者は椅子から立ち上がり話を切り出す。
「もう知っていると思うけど、ここは"医務室"。怪我や病気になったメンバーを治療する施設さ。まぁ、僕の部屋でもあるけどね」
「医者さん、いむってなに?」
「医務? うーん、それは後で使用人さんに教えて貰うということで……」
「投げましたね、医者様」
「ぐっ、何かアカ君が絡むと僕に対する当たりが強い気がするんだけど」
「気のせいです」
その後、棚に並べられている本や薬品の簡単な説明をして医務室の紹介が終わった。
「それでは参りましょうか」
「うん、わかった」
アカは使用人の後に付いて行き医務室から出る。
~~~~~
「ここは"図書室"。世界中の様々な分野の本が多く蔵書されています」
「うぉぉぉ」
次に案内されたのは図書室と呼ばれる見渡す限りに本が敷き詰められた部屋だ。大量の本が並べられた光景にアカは圧巻して口が開きっぱである。
「アカ様の勉強もここで行う予定です」
「わぁ……ん? べんきょう?」
「はい。一般常識から世界情勢まで教えるようご主人様から仰せつかっておりますので」
「えぇ、そんなの覚える必要ないよ……」
「兄様を探す際にもきっと役に立つことでしょう」
「……本当?」
「本当です。知識は時に武器にもなりますからね。では次の部屋に行きましょう」
「はーい……」
勉強と聞きアカは嫌な顔をするものの、親切にして貰っている使用人に我がままを言う訳にはいかないため、渋々納得するのであった。
~~~~~
次に案内された部屋に入ると、そこにはまるで外のような空間が広がっていた。
「ここは"飼育室"。ディダードで調理される食材の殆どはここで生産されています」
床に土が敷いてあり、辺り一面に黄金色の植物が生えている。図書室とはまた違った世界感にまたもや口が開くアカであった。
「すげぇ、草だらけだ」
「モー」
「!? 使用人さん、アレ何!?!?」
「アカ様、これらは小麦と呼ばれる植物です。それとあちらに居る動物は牛でございます」
「牛!? アレが!?」
アカが知っている牛は加工済みの肉、生きた牛を見るのはこれが初めてである。その後、牛以外にも豚や鶏など見たことのない生き物を見るたびに驚くのだった。
ある程度生き物に慣れ落ち着きを取り戻すと、ふと、ポツンと建っている掘っ立て小屋が目に入った。
「使用人さん、アレは?」
「何で……あぁ、アレですか」
アカが使用人に質問すると、先程まで明るかった雰囲気が嘘のように暗くなり、使用人はあからさまに嫌そうな顔をした。
「使用人さん?」
「アカ様。これから会う人はだいぶ、いえかなり変人なのでまともに話してはなりませんよ?」
「は、はい」
あの優しい使用人が顔をしかめる相手とは、いったいどんな恐ろしい人物なのか……小屋の扉の前に立ち、思わず息を飲むアカ。
そしてついに小屋の扉が開かれ____
「くくく……ようこそぉぉぉ!!!! 我がラb」
バァン!! と勢い良く閉められた。
いったい誰なんだ……()
おまけ(名前の由来)
ディダード→ヴェンディダート
興味がある人は調べてみてください(丸投げ)
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