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ANTI HERO~悪が望む英雄譚~  作者:
反英雄の誕生
10/24

殺す力を

アンラ・マンユと言われたが、アカはその言葉を聞いたことが無い。男は手に持ったフォークをアカに向け話を続けた。


「お前、名前は」

「……アカ」

「そうか。アカ、今日からお前はここに()()()()()()

「…………は?」


 アカは自分の耳を疑う。

 アカにとってこの男は「初対面で圧を放ち人を淡々と殺す、突然現れた目的不明の男」と印象が最悪な人物だ。

 そんな人物がまさか、自分にここに住むように提案してくるとは思わなかったのだ。


「因みに拒否権は無い。お前の命は俺が拾ったもんだからな」

「殺したのは俺では?」

「お前は黙ってろ」

「な、なんで、オレを助け」

「勘」

「勘!?」


 自分を助けた理由が勘だというのだから驚くのも無理はない。だがカイという保護者が居ない今、自分の何倍も強い彼らに守って貰えるのはアカの立場からすれば願っても無い提案であった。

 しかし、それ故にその魅力的な提案を受け入れることを渋る。


「で、でも、オレ……」

「兄を助けに行きたいか?」

「ッ!? なんで知って」

「さっき使用人から聞いた。それよりお前、1人で助けられると本気で思ってんのか?」

「それは……」


 アカは自分が成す術も無く追い詰められ死にかけた事を思い出す。最後に一度だけ反撃する事が出来たが、流石にそれだけで兄を助けられるとは考えていなかった。

 自分の無力さに落ち込むアカ。すると男は席を立ちアカに近づき、こう言い放った。


「もしも、お前にその気があるのならば、俺は力を……誰かを"殺す力"をくれてやる」

「殺す、力」

「そうだ。誰かを救いたいと願うのならば、誰かを殺す覚悟をしろ。命1つ奪えないガキが命背負おうとするんじゃねぇ……ッ!!!!」

「ッ!!」


 男は怒気のような圧を放つ。まるで向かい風に立ち向かっているような感覚にアカは思わず慄く……が、圧に耐え話を聞き続ける。


「それでも、人を殺してでも助ける覚悟があるのならば……誰にも邪魔出来ない、圧倒的な力をお前にくれてやる」

「…………それがあれば兄ちゃんを、兄ちゃんを助けられるか?」

「それはお前次第だ」

「……」


 正直、「殺す」ということがどういうことかアカは理解していない。今まではカイが守ってくれた事もあり、殺さそうになることはあれど自分の手を汚すことが無かったからだ。

 けれど「人が死ぬ」ということは幼いながらも理解しているつもりだ。「誰かを殺す」という事はきっと怖い事なのだろうと薄々感じていた。


 だが、それでも「自分の兄を助けたい」という気持ちはアカに覚悟をさせるのに十分な理由であった。


「オレに……殺す力をくれ」


 アカは力強く前を向き、殺す力を願った。その答えに満足したのか、男はゆっくりと口角を上げ、歯を見せる。


「分かった。改めて、俺は結社アンラ・マンユ『団長』。よろしくだアカ」


 団長、そう名乗った男はアカに向かって右手を伸ばす。その行動を察したアカは少々怖がりながらも右手を伸ばし握手を返した。


「よろしく、です」

「よし、それじゃあ話は一旦止めだ。飯だ飯!!」

「アカ様の席はこちらとなります」

「うわ、あ、ありがと」


 アカは使用人が用意した椅子に押され気味に座り込む。雰囲気の変化に置いてかれたまま、目の前に料理が運ばれた。


「本日のメニューはナポリタンでございます。こちらのフォークを使ってお召し上がりください」

「おおお……!! い、いただきます」


 オレンジ色の麺から白い湯気が出ている。ナポリタンという料理を見た事も聞いた事も無いが、これだけは分かる____これは美味いやつだ、と。

 スラム育ちのアカは普段、手づかみで食べているためフォークの使い方がぎこちないが、何とか麺を掬い口の中に放り込んだ。


「!?!?!?」


 瞬間、口の中に未知の味が広がる。この美味さを表現出来る語彙をアカの中には存在しなかった。

 アカは無我夢中でナポリタンに食らいつく。その様子に使用人は微笑みながらおかわりを運ぶ。


「おかわりもありますから、遠慮なく食べて下さいね」

「あびばぼぉ!! でふ!!」

「使用人、アカが食い終わったら風呂にぶち込んどけ」

「分かりましたご主人様」

「傭兵、行くぞ」

「へいよー旦那ァ」


 団長の退出を皮切りに残る3人もホールを後にする。

 こうしてアンラ・マンユメンバーとの初対面を終えたのであった。




~~~~~




 腹を満たしたアカは大浴場に案内され風呂に入った。勿論これも初体験であり非常に満足したとだけ書いておこう。その後、医者の提案で医務室、もとい医務室のベットで寝ることになった。


(今日はいろんなことがあったな)


 殺されたかと思ったら勘で助けられ、ここに住むことになった。団長、傭兵、医者、使用人……そしてアンラ・マンユ。まだまだ分からないことだらけだが、不思議とアカに不安はない。


 自分が何をすべきか分かっているからだ。


「絶対助けに行くから、待ってて兄ちゃん」


 そう呟き、アカは静かに眠りに着いたのだった。




ようやくここまで来たよ……


おまけ(見た目イメージ)

団長:某ヌーの群れ 〇田さんみたいな感じ

使用人:鋭い目付き クーデレメイド

医者:不健康な先生

傭兵:両目に短剣ぶっ刺さった変質者


残る2人はまた今度。

組織名はちょっと変更したけどほぼ変わりないので大丈夫()


モチベアップの感想評価ブクマお願いしまうま。

Twitter→@iu_331

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