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二殺目「死神ちゃんは同居したい」

「じゃあな孝杉」

「ああ、また明日」


 帰り道が同じ友達と帰宅したどんより雲の憂鬱な日。


 天気より憂鬱なのは、家の前に死神が待っているという事だ。


「おかえりなさい。た・か・す・ぎ・さん」

「……あー、腹減った。今日は何にしようかなー」


「ちょっと、無視しないで下さいよ! 黄泉泣いちゃう! ううっー」

「あ、いや、泣かせるつもりはなかったんだ!」


「嘘でーす! 孝杉さん騙された♪」


 バタンッッ。


「あーっ! ちょっと開けてーっっ!!」


 ムカつく奴だまったく。

 あの日から何日連続で待ち伏せする気なんだ!


 毎日毎日っ!!


 昨日なんて頼んでもないのに変な鍋持って来やがって!


 ミミズやら蜘蛛が入った鍋なんて誰が食うんだよ!?

 俺の事、鬼か蛇だとでも思ってんのかよ!


「開けて下さいよ~! お願いしますよ~! 開けて開けて開けて開けて開けて開けてっっ!!」

「うるせーっっ!! 近所迷惑だっつうの!」

「なに事?」

「さあ? 痴話喧嘩じゃない?」

「や~ね~、最近の子は」


 噂好きの近所のババア連中かっっ。あんまり変な噂を立てられたんじゃ住み難くなって困る……。


 くそっ! 背に腹は変えられん!


「早く入れ!」

「あららららっ」


 黄泉の手を引き家へと入れてしまった。

 自分から引き入れるとは不覚っっ。


「あらあら孝杉さんって以外と強引な殿方なのですね? ふふふふっ」

「なんだと……あっ!?」


 やられた……なんという計略!


 こやつ、待ち伏せする日々でこの時間にババア連中がたむろするのを分かってあんな茶番を仕掛けたなっ!!


「お主名は」

「それがし、黄泉と申す」


「黄泉、お主を気に入ったぞ。我の配下に加わらんか?」

「有り難き幸せ。この黄泉――命を賭けて仕えさして頂きます」


「そうかそうか。愉快じゃ! 今宵は宴会と行こうぞ。がはははははっっ」

「殿も好きですな。フッフッフッフッ」


「馬鹿すぎだっつうのっっ!!」

「孝杉だけに?」


「出てけアンポンタン!」

「あ、ちょっとは話し合いの余地をっ」


「話し合う事などない!!」


 バタンッッ。


「なんなんだよ一体……」

「開けて下さい孝杉さん! あの日、私の大事なものを見た事実は消せませんよ!」


「やーねー。大事なものを見たんですって」

「最低の男よね~」


 バタンッッ。


「分かったから変な事言うな!」

「じゃあ、話し合いしてくれます?」


「ぐぐっっ! 致し方ない……」

「ありがとうございます♪」


 最悪の事態だ。俺の平和な日常は、死神を名乗る女に壊されようとしていた。


「それで孝杉さん」

「なんだよ」


 リビングのテーブルを挟んで向かい合う俺と黄泉。

 なんだか無駄に緊張する……。


「お互い歩み寄るための提案をしたいんです」

「俺は歩み寄りたくないんだが」


「とりあえず聞くだけ聞いて下さい!」

「はぁーっ、分かった。聞くだけだ」


 歩み寄る提案ってなんだよ。

 名前を書くと相手が死ぬノートでもくれるのか?


「私は孝杉さんを殺したい。孝杉さんは殺されたくない。それで合ってますか?」

「ああ、そこに歩み寄る余地はないと思うんだが」


「まあまあ、ここからが本題です! 実を言うと、孝杉さんを殺したくても中々殺せないんですよね……」

「は? どういう事?」


「思い返してみて下さい。今まで何度も危険な目にあった事はなかったですか?」

「ん、まあ……」


「それは全て死神の仕業です!」

「なんだって!?」


「実は……」


 黄泉は驚くべき事実を語り始めた。


 なんでも俺は両親が死んでしまった家族旅行の時に一緒に死ぬ筈だったらしい。


 それがなんの因果か、俺は生き残ってしまう。


 死神界では寿命というのは絶対であり、それを崩すものが現れると、上の神からめちゃくちゃ怒られるという話だ。


 知らんがな。

 勝手に怒られろ。


 まあ、それは置いておくとして、何事もなかったようにするには、俺をさっさと殺してしまおうと言う事。


 それを完遂するため、何人もの死神を送りこんだ死神協会だったが、何故か俺の悪運が強すぎて何度殺そうとしても助かってしまうんだとか。


「という事なんです!」

「俺が言うのもなんだけどさ、なんで全部間接的に殺そうとするの? 直接ナイフでも刺せばいつでも殺せるよね?」


「それがですね~、死神は直接的に人を殺す事は出来ないんですよ。私達死神は、寿命が近づいてきた者の元に降りて間接的に寿命を全う出来る手助けをするだけなのです!」

「へ~、寿命が近づいてきたら死ぬように仕向けるって事?」


「そうそう! もの分かり良すぎです! 孝杉だけに♪」

「叩き出すぞこら」


「ごめんなさい……」

「で、肝心の提案ってなんなの」


「まあまあ焦りなさんな旦那」

「お前っ、ほんと叩き出すよ?」


「ご、ごめんなさいっ! ちゃんと言います……」

「早くしてくれ」


「私はこのままでは死神協会に帰れません。だからここに住まわせて下さい!!」

「はあ? それが提案? 住んで殺すチャンスを伺うっていう最初の謳い文句となんにも変わんないじゃん」


 というより、死神と暮らすなんて物騒過ぎて御免だね。


「それが違うんですよ~! なんと、私は一切殺そうとしません!」

「どういう事だよ?」


「もう殺せないと踏んで、いつか訪れる寿命の時まで傍に寄り添いたいと思います! そしたら死神協会に堂々と帰れますし!」

「いや、お爺ちゃんになるまで死ななかったらどうすんの?」


「大丈夫大丈夫!死神の一生に比べたら人間の一生なんてゴミですよゴミ!」

「なんかもう、めんどい……好きにしろ……」


 あー、この死神――絶対派遣じゃなくて左遷だな。


 こうして、ちょっと、いや……めっちゃ馬鹿な死神ちゃんと奇妙な同棲生活が始まってしまった――


「やったー♪ これで死神の仕事サボれる! あー、アイス食べながら刑事ドラマ見よ~♪」

「勝手にアイスを食うなああああーっっ!!」

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