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一殺目「死神ちゃんは殺したい」

ラブコメ書いてみます。

宜しくです!

 酷く悪運の強い男がいる。名は"灰雲孝杉"(あくうんたかすぎ)歳は17歳の高校二年生。そう、俺の事だ。


 悪運てなんだよ。と思うかもしれんが、危機一髪エピソードなら語りきれないほどある。


 例えば青信号を渡ろうとした時。


 たまたま靴ひもがほどけていた事に気付き、直している目の前でトラックが猛スピードで突っ切って行く。


 例えば電車に乗ろうとした際。


 たまたま忘れ物に気付き家に戻ったら、さっき乗ろうとしていた電車が脱線事故を起こしていたなど、上げれば切りがない。


 そんな悪運の強い俺だが、自分を襲う危険は三年前から増えたと認識している。


 三年前。父と母と三人で親子水入らずの旅行に出掛けていた。そこで待っていたのは、楽しい家族旅行なんて幸せなものじゃなく不運な事故だった。


 暴走したトラックに巻き込まれ、乗っていた車は大破。

 前に乗っていた両親は即死。


 しかし、後部座席に乗っていた俺だけは生き残ってしまったのだ。それから、俺の背後には死神が取りついてしまった。まるで、失敗を取り返すかのように。


「お命、取り立てに参りました~」


 両親が残してくれた一軒家でスヤスヤと眠っていた俺を起こしたのは、そんな物騒な言葉だった。


「こんばんは! 居ますよね? その真っ黒なオーラをハッキリと感じますよー」


 真夜中にピンポンの連打と物騒な言葉。情けないと思いつつ布団の中でガクガクと震えていた。


「こんな夜中に誰だよ……しかも命を取り立てに来たとか言ってるし……マジで怖ぇぇっっ」


 真夜中の迷惑行為。警察に連絡すれば済む話なのかもしれないが、頭は恐怖でいっぱいでそれどころではなかった。


「開けてくれないなら勝手に入りますよ? 布団の中で震えちゃって可愛いですね」


 何故分かるのか。一体何者なのか。恐怖を感じつつも、俺は威を決して真夜中の訪問者と対峙する事を決めた。


「なんなんだよ一体……」


 二階の階段を降りると、すぐ玄関。

 震える声で残った勇気を振り絞った。


「だ、誰ですかっ! こんな夜中に迷惑です! 警察を呼びますよ!」

「フフ、やっと来てくれた」


 扉の外から聞こえる女性の声。するとその声と同時に、かけた筈のチェーンと鍵がひとりでに動き出した。


 不気味に開くドア。月の光に照らされた"それ"は、とても幻想的で美しかった。


「初めまして蓮司さん。私、死神協会から派遣されました四代目"黄泉"と申します。こうやって人の姿を模して孝杉さんと共に生活し、チャンスがあれば殺したいと思います」


 姿を現して早々に訳の分からない事を宣う女性は、月の光で照らされた艶々とした長い黒髪をかきあげ、赤い瞳で俺を見下げていた。


 一方、腰を抜かし玄関で尻餅を着いている俺は、その美しくも不気味な女性と、ゴスロリ宜しくな黒とピンクのヒラヒラドレスから見える漆黒の"パンティー"を見上げていた。


「紐パンだと……」


 微かに呟いた俺の言葉に気づいた黄泉と名乗る女性。

 言葉の真意を確かめるように俺の視線の先を辿った。


「い、いやああああーっっ!! み、見たのですか!?」


 コクりと頷く俺に、女性はへなへなと力なく玄関で崩れ落ちていく。


「これでは協会の笑いものです……あなた、死んだら絶対言い触らすでしょ!?」


 これは首を横に振ったらヤバい気がする。

 言わないと分かる→殺す。

 こんな風になる恐れがある。


 この女性が死神だと信じた訳ではないが、出来る策はこうじておいた方が良いと思うんだ。


「言います! もうそりゃ釈迦にも閻魔にも言い触らしますよ!」

「や、やっぱり……」


 ガックリと肩を落とす女性。

 殺気がグッと減った気がする。


「これでも私、清純派だと思われているんです!」


 そんな見えそうで見えなそうなスカート履いて?

 とは、つっこめないので黙っていよう。


「もしこんな淫らな紐パンを履いてるなんてバレたら……でも、セクシーなの好きなのおおおーっっ」


 分かったからそんな叫ばないでくれ……。

 もし誰か来たら俺が襲ってるように見えるじゃないか!


「お、落ち着いて下さい。もし帰ってくれるなら、この件は見なかった事にします……」

「そ、それは……」


 悩む女性。交渉は下手に出てはいけない。

 お願いだから帰ってくれ……。


「出来ますんっっ!!」

「どっちだよっっ!!」


 あ、やべ……思わずつっこんでしまった。


「このままノコノコ帰ったらそれこそ協会の笑いもの! 黄泉の名が廃ります!」

「でも、俺を殺したら紐パンの事がバレますよ? なんなら全神様に吹聴します!」

「ぐぬぬぬぬっっ」


 俺の脅しに歯を噛みしめ悩む女性。

 死神なのに鎌もってないんだ。

 あ、それとこの人ちょっと馬鹿かもしれない。


 とりあえず女性の意志が決まるまでそんな事を考えていると、


「この黄泉――覚悟を決めました!! これでも死神として一番の素質と言われていたのです! こんな所で挫けてどうする!」


 なんだか気合いの入った言葉を吐いていた。


 もしかして死神協会とやらは、この人が面倒で派遣という名の左遷をしたんじゃ……。


「という事で孝杉さん。これから宜しくお願いします」


 三つ指突いて頭下げられても困る。


「もしもし警察ですか? 家に不審者が入りこんだので大至急来て下さい」

「ん? 孝杉さん。今誰を呼んだのですか?」


「警察です。貴女を逮捕する人」

「逮捕? ああ、刑事ドラマで見ました! 悪い人を捕まえる人達ですよね?」


「その通りです」

「もしかしてですけど。悪い人って」


 自分に指を向ける女性。

 俺は静かに頷いた。


「ちょ、違いますよ! 私は貴方を殺しに――」

「お前か不審者は!!」


 あ、警察の方々早いですね。

 今日も街の安全のためお疲れ様です。


「私は殺しに来ただけです!!」

「殺人未遂か!? 緊急逮捕だ!!」


 手錠をかけられ連行される死神とは笑える。

 やっぱりあの人馬鹿だ。


「孝杉さあああああーんっっ!!」

「さようなら。死神ちゃん――」


 その後は至って平和な日常だった。

 特に事件もなくいつも通りつまらない日々。

 だと思ったんだがな。


 ピンポーン。


 あれから数日が過ぎた日曜日。

 訪問者はやってきた。


「宅配でーす」

「はーい! 今行きまーす!」


 なんの警戒もなく扉を開けた優雅な午後。

 そこに待っていたのは、


「お久しぶりです孝杉さん。も~、酷いで――」


 なんか変な奴がいた。

 俺は静かに扉を閉めた。

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