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本来の用途と違う……

「おそらくあっちが森の出口ね」


 優理が指さした方向を目指して陸斗たちは歩き出す。


「すごいですね。浅草先輩」


 堂々としている陸斗を見て千尋が尊敬のまなざしを送る。


「え、何が?」


「とっても強くて武器も持っていて」


「ああ、これ何か手に入ったんだよな、偶然」


 陸斗は何でもないという顔でアロンダイトの柄を叩く。


『痛いな。もう少し大切にしてくれても罰は当たらんぞ?』


「しゃ、しゃべった!?」


 千尋と優理がぎょっとして足を止め、魔剣を見つめる。


『存在感ゼロだったよね、我。一応最強クラスの武器なんだけど』


 アロンダイトは恨めしそうな声をあげる。


「期待してないから黙ってろ」


『ひどくない!? モンスターの名前教えたりしてたよね!』


「それはそうか。役立たずという認識は改めよう」


 陸斗はポンと手を叩く。


『我が役に立てないマスターが変だよね? 絶対人間じゃないよね?』


「失礼な」


 魔剣の反応に彼は抗議した後、目を丸くして自分たちを見ている二人に言う。


「やかましいけど基本無視してくれ。お前たちのレベル上げを優先させよう」


「う、うん」


 ついてこれてそうにない二人だったが、ひとまず二人はうなずいた。

 再び足を動かしていると少しずつ木の背が低くなっていく。


 そして道中でコボルト三体と遭遇する。


「うっ」


 警戒する優理とおびえる千尋をかばって陸斗は前に出た。


「俺が殺したら二人に経験値は入らないって認識でいいか?」


『……そうだな。ダメージを与えさせるか、とどめを刺させるか。どっちかはしないときついぞ。ヒーラーなら回復でもいいんだが、マスターには無用だろうしな』


 アロンダイトはすねたままだが、それでも律義に返答する。


 義理堅い性格なのだろうかと陸斗は思いながら石を拾って飛ばし、コボルトたちの手を吹っ飛ばす。


「弱すぎて殺さないのが難しいんだが、何とか上手くいったな」


『コボルトってレベル1や2で乱獲できる相手じゃないはずなんだが……』


 アロンダイトのつぶやきを陸斗は無視し、少女たちに声をかける。


「視覚と嗅覚でつらいかもしれないが、攻撃してくれ」


「ええ」


「は、はい」


 優理と千尋は唾を飲み込み、顔を青くしながら石を取ってコボルトへ投げつけた。


 優理のものはすぐにコボルトに当たったが、千尋のは外れてしまう。


「いきなり当てろってのも難しいだろう。数をこなそう」


 陸斗はそう言って二人を励ます。

 二人は大人しく従って石を投げつけて、コボルト二体を絶命させた。


「レベルアップは無理か」


『コボルト二体にとどめを刺しただけだからな。もう少し戦わないと』


 陸斗の独り言をアロンダイトが拾う。


「何体くらい倒せばいいんだよ?」


『コボルトにとどめ刺すだけなら五体くらいか。二人で分散するならさらに倍はほしいな。それ考えるとマスターのレベルアップは遅かったのか?』


 アロンダイトの返答にうなずき、陸斗は二人の少女に言った。


「そういうことらしいからもう少し頑張ろう」


「ええ」


 少女たちの顔色はよくないが、瞳の輝きから強くなりたいという意思は伝わってくる。


「ちまちまコボルト探して倒すの面倒だから、大物をおびき寄せる手があったら教えてくれ」


『血をまき散らしていれば集まってくると思うぞ? さっきのブラッディベアみたいに』


 陸斗の要求にアロンダイトは答えた。


「一体ならどうでもいいが群れは面倒だな。女の子たちがいるから」


 彼は自分一人なら囲まれても平気だが、少女たちはそうもいかないだろう。


「出入口付近で待ち伏せするというのはどうかしら?」


 彼らのやり取りを聞いた優理がアイデアを出す。


「それはいいな。お前らを守らなくていいならどうにでもなるから」


 陸斗は平然と採用する。

 話がまとまったところで彼はコボルトの死体に触れて、コインに変えた。


「コインだけか」


『コボルトのドロップは大したことないから気にしなくていいと思うぞ?』


 アロンダイトは慰めるように言う。


「意外と説明で役に立つな、アロンダイト」


『本来の用途と違う……』


 うらめしそうな抗議を陸斗は無視して歩き出し、少女たちがその後を追う。

 出口までは意外と時間がかからなかったが、戦闘も発生せず陸斗の余計が狂った。

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