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攻略アプリ

 次の瞬間、スマホが振動する。


「何だよ……」


 面倒に思いながらも少しでも情報がほしい陸斗は舌打ちしながら、左手でスマホを持って画面を確認した。


【リクトは神話の魔剣アロンダイトを装備した。ジョブが魔剣使いになった。アビリティ・アヴェンジャーを会得した】


 そんなメッセージが表記される。


【リクト:レベル1 ジョブ:魔剣使いレベル1 保有アビリティ:アヴェンジャー】


「何かゲームっぽいな。とっつきやすくてありがたいが、ファンタジー感は薄れてきた気がする」


 ファンタジー世界とゲーム世界とどっちがマシなのかと陸斗は一瞬考え、どっちもあんまり変わらないと結論を出す。


 少なくと彼には大きな違いを感じられない。


『今時の異邦人はそんなものがあるのか』


 アロンダイトは驚いたような声を出すが、無理もないと陸斗は思う。


 彼にとって会話できる魔剣が未知の存在であるように、魔剣にしてみればスマホなんて想像すらできなかった存在だろう。


「そうだよ。そう言えばアロンダイトの情報は見られないのか?」


 陸斗がつぶやくと同時に魔剣アロンダイトの説明が出てくる。


【魔剣アロンダイト。かつて湖の騎士が愛用した聖剣。竜を退治し、太陽の騎士を打ち破り、聖騎士を殺害するという経緯の果てに怨讐の魔剣となった。ランクX】


「思いっきり呪われてそうな剣だな」


 彼が嫌そうな顔をすると、


『その分我は強いぞ? エクスカリバーもガラティーンも恐れるに足りぬわ』


 アロンダイトは自信満々に話す。


「ランクXが何なのわかんねーよ。俺アヴァロンに来たばかりなんだぞ」


 陸斗はひとまずツッコミを入れる。


『簡単に説明しよう。AからFの六つのランクがあり、その上に頂点にして規格外を意味するXランクがあるのだ。Xランクはアヴァロンで五つもない至宝。期待してあがめてもよいのだぞ?』


「言葉で説明されただけじゃありがたみが実感できないな」


 アロンダイトの説明を聞いて陸斗は淡々と応じた。


『何と感動のない男だ……これからこの男に尽くさねばならんのか』


 何やら嘆きはじめた剣を彼は鞘におさめる。


『言っておくが鞘におさめても会話はできるのだぞ?』


 彼が反応しなかったからか、すねたような声を魔剣はあげた。


「黙れとは言ってないだろ。有益な情報を教えてくれ」


 陸斗はそう頼んでみる。


 この世界の武器でしかも会話できるなら、彼がほしい情報の数々のうちどれかを知っているかもしれないという期待があった。


『どんな情報がおぬしにとって有益なのか、我には判断がつかぬのだが。おぬしは何なら知っている?』


「何も知らないという前提で最初から頼む。レベルとかジョブとかアビリティとかなんだ?」


 質問をしながらゲームと同じ感覚でいいのか、という部分は飲み込む。

 アロンダイトでは陸斗が知るゲームが何なのかわからないだろうからだ。


『レベルは1からはじまり上がる強くなり、死にづらくなる。ジョブレベルは戦士、魔法使いといったジョブの習熟度だな。これは薬師のように強さとは関係ないものもある』


 アロンダイトの説明はそこまで上手くない。


(ゲームをやってる奴なら何となくわかるかもしれないが、触ったことない奴は理解できるのか、これ?)


 陸斗はそう思ったが、自分のイメージと一致していることに安心する。


「簡単に言うと俺の場合はお前を装備して戦っていれば、そのうちレベルが上がるって認識でいいか?」


『まあそういうことだな。我を使いこなせれば嫌でも最強になれるから安心するがいい』


 自慢そうな声を無視し、陸斗は足元に転がる木の棒を拾う。


「こっちだと俺の強さはどの程度なのかな、と」


 もしかしたらレベル1という概念が発生したせいで弱くなったのではないか。

 彼はそう思って木の棒を軽くふるってみる。


 木の棒はへし折れると同時に目の前の幹の太い樹木はへし折れて、地面に落ちて大きな音を立てた。


「んー、そこまで劣化してないかも?」


『うん? 何だ、今のは? 何で木の棒で樹木を両断できたんだ?』


 アロンダイトは明らかに混乱していたので、陸斗は説明してやる。


「千子村正流の修行法だよ。習熟すれば葉っぱで鉄を斬るくらいはできるようになるのさ」


『いや、それはおかしいだろう? 明らかにレベル1の強さじゃないだろう?』


 アロンダイトは納得できないと声をあげるが、陸斗は気にしない。


「ひとまずレベルをあげる必要があるな。強くなったほうがいいんだろうし」


 彼は独り言を言って適当な方向へ歩き出す。

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