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届かずの塔2

 唐の中に陸斗が入ると、ひんやりとした空気が出迎えた。

 中はやけに明るく壁と床は青く発光している。


 数歩進んだところで黒い皮膚を持った身長が三メートルくらいある巨大なモンスターが出現した。


 右手には石斧を持ち、上半身は裸で、赤い禍々しい瞳で陸斗をにらむ。


『オーガか……いきなり出るレベルの敵じゃないだろう』


 アロンダイトが驚いた声を漏らす。


『推奨レベル30くらいだぞ。あるいはレベル20のメンバーが4人くらい必要だ。そう言えばマスターに伝わるか?』


「強敵だということは理解した」


 陸斗はそう言ってにやりと笑う。


「アヴェンジャーのスキルを覚えられたらラッキーだな」


『撤退をすすめたいんだが、マスターだからなぁ。我の名を叫べば、能力は発動する。ピンチを凌ぐのに適した能力だから、やばくなったら使うんだぞ』


 アロンダイトは親切な助言をおこなう。


「了解。お前いいやつだよな」


『……こんな状況でそんな感想が出るあたり、やっぱりマスターって緊張感なさすぎだろ』


 陸斗が少し前に出るとオーガは吠える。

 小さな衝撃派が生まれて陸斗を襲うが、彼は横に体をズラすだけで避けた。


 オーガは床を蹴って巨体からは想像できないスピードで陸斗に迫り、石斧を彼の頭を狙って振り下ろす。


 陸斗は弧を描くような動きでオーガの横に回り込み、アロンダイトを抜いて首を狙って斬り上げる。


 オーガは避け切れず首を刎ね飛ばされ、黒い血しぶきが舞う。


「……何だ、拍子抜けする弱さだったな」


 まさか一撃で倒せると思わなかったと陸斗は目を丸くし、アロンダイトを鞘におさめる。


『いやいやいや、何だ、今の動きは!? レベル一ケタ台でオーガより速く動けるなんて、マスターはどこまで規格外なんだ!?』


 アロンダイトはまずは呆然とし、次に信じられないとわめく。

 陸斗はそれを無視してスマホを取り出す。


「おっ、レベルが8になったぞ。経験値としては美味しいな」


『レベル一ケタ台がオーガを経験値扱いだと……』


 アロンダイトはまだ衝撃がら立ち直れていない。

 陸斗が死体に触れるとオーガの体は銀色のコインに変わる。


「銀貨五枚か……これって敵は再び出現するのか? するなら二人のレベルあげもやりたいんだが」


 陸斗は魔剣に問いかける。


『オーガをレベル上げ素材扱いするとか、そんな発想はなかった。さすがすぎるな』


 アロンダイトはそうつぶやいてから、答えを言った。


『できるはずだ。再出現しないのはユニークボスモンスターと呼ばれる個体だけだし、オーガはおそらくボスモンスターですらないだろう。再出現するのにかかる時間まではわからないがな』


「いいことを聞かせてもらった」


 陸斗は満足そうにうなずく。


『……オーガ相手にレベルあげを本当にやるつもりなのか? あの二人が狙われる可能性は高いぞ? オーガはゴブリンと同じでメスを好む生き物だからな』


 そう話すアロンダイトの声には嫌悪感がにじみ出ていたが、彼は気づかなかった。


「あの程度の動きなら俺がカバーできるから平気だ」


『……そうか』


 事もなげに答える陸斗にアロンダイトは小さく言う。

 魔剣が反対しないのをみて彼は一度外に出る。


「……無傷みたいね?」


「だ、大丈夫でしたか?」


 心配そうな美少女たちに彼は笑顔でうなずく。


「ああ。一階の敵はオーガでレベルアップ的に美味しい相手だから、二人もいたほうがいいと思って誘いに来たんだ」


「……レベルアップ的に美味しいということはそれだけ強いのでは?」


 陸斗の言葉に対して優理は怪訝そうな顔になる。


「ブラッディベアだって一体倒しただけじゃレベルあがらなかったですよね? つまりブラッディベアの何倍も強いってことになるのでは?」


 千尋も遠慮がちに疑問を彼にぶつけた。


『この二人は冷静で頭いいな。それがかえってつらい展開になるかもしれん』


 アロンダイトの声を聞いた二人はいやな予感に襲われる。


「……浅草くん?」


 それでも二人は陸斗を信じようと彼を見つめた。


「オーガだと効率的にレベルアップできそうだぞ? 無理強いはできないが」


 陸斗の提案に二人はぎょっとする。


「効率的なレベルアップ……危険はないの?」


 優理はやや顔色を悪くしながらも彼に確認した。


「オーガなら俺が守れると判断した」


「それなら……」


「優理先輩?」


 千尋は驚いたが、ほどなくしてため息をつく。


「優理先輩が行くなら私も行きます」


 彼女は優理ほど割り切れていないようだったが、それでも陸斗を信じることを選ぶ。

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