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ロクリヌス遺跡

節約という理由で三人は装備を揃えずに町を出て遺跡に到着する。

 陸斗がいなければ無理だっただろうが、彼はいちいち言わなかった。


 彼らの前に広がる遺跡はファンタジー世界の城に近しい外見の建物だった。


「ロクリヌス遺跡……昔の城か砦だったのかしら」


 と優理はつぶやき、それがきっかけになったように陸斗は歩を進める。


『ロクリヌス……かつてのマスターがここで活躍したものよ』


「昔話はいらないぞ」


『我の扱いが雑い!?』


 遠慮のない陸斗の言葉にアロンダイトは声を高めた。


 古く朽ちかけたうすい緑色の門をくぐって中に入ると、湿った空気が三人の頬を撫でた。


「さて、モンスターはどこだ? こういう時探す能力があれば便利なんだけどなぁ」


『スキルを覚えるとすればレンジャーかローグだな。メイジだと魔力を消耗するからあまりすすめられない』


 陸斗のつぶやきをアロンダイトが拾う。


「まともな助言が来てびっくりだ」


 彼は本気で驚く。


『マスター、我のことをどう思っているのか一度問い詰めたくなってきたぞ』


 魔剣の声を無視して陸斗は進んでいき、少女たちがその後を追いかける。

 道は明るく最初は一本道だったが、数分もしないうちに左右二つの道に別れた。


「どっちに行こうか? 左のほうから敵が来そうなんだが」


 陸斗が言うと少女たちは顔を見合わせる。


「左でいいんじゃない?」


「敵を倒していくのが大事ですものね」


 少女たちの賛成を得て陸斗は左を選ぶ。

 進んでいくうちに全身が針のような毛皮に覆われた黒い兎が出現する。


『ニードルラビットだな。動きが速く、顔以外はけっこう硬い魔物だ』

 

 アロンダイトが説明した。

 同時にニードルラビットは床を蹴り、一気に三人に肉薄する。


 それをカウンターで陸斗がニードルラビットの顔面に蹴りを入れた。

 苦悶の声が漏れると同時にニードルラビットの体が壁に激突する。


「ほれ……と言いたいが、二人は武器を持ってないか。とりあえず俺が倒すしかないか」


 陸斗は二人の状態を思い出して、魔剣を抜いてニードルラビットを仕留めた。


『まあブラッディベアにも楽勝だったんだから、ニードルラビットじゃ相手にならないよな』

 

 アロンダイトの声には諦めの響きがある。


「しかし二人のレベルあげが難しいとなると金稼ぎするしかないか? それとも武器をドロップするモンスターはいるのか?」


 ニードルラビットの死体をコインに変えて拾った陸斗が問いかけた。


『ここにいるかわからないが、オークは棍棒や槍を落とすぞ。他にも武器になるものを落とす奴はいるが……爪とか牙とかマスターが持ったほうがよさそうなものが多いな』


 アロンダイトは彼の期待に沿って答える。

 

「とりあえずオークを探すか。他の奴らだって武器の素材にはなるかもしれないし、一応狩る方向でいこう」


 陸斗がプランを立てている間、優理は千尋を誘って石を拾っていた。


「石を投げたら経験値は入るみたいだし、チリも積もればレベルアップの足しにはなるわよ」


「そうですね」


 二人ともなかなか逞しいと彼は感心する。

 

(おそらくだが足手まといになりたくないという気持ちでいっぱいなんだろう)


 彼女たちがそういう気持ちでいるなら、なおさら陸斗としても彼女たちを守りたいと思う。


 探索を再開してほどなくして二匹のニードルラビットが出現する。


「二人が石を持ってるなら、いきなり殺さないほうがいいか」


 陸斗はそう言って、突っ込んできたニードルラビットたちの頭部に、二連撃の要領で蹴りを入れてまた壁に激突させた。


「よし、気絶したな」


 狙い通りにいったと彼は満足し、少女たちに攻撃をうながす。


『やっぱりマスターっておかしいぞ』


 アロンダイトは気を取り直したようにツッコミを入れる。

 しかし三人ともそれを聞き流す。


 二人の少女がニードルラビットたちに石で攻撃を入れ、経験値を稼ぐ。

 タイミングを見計らって陸斗がとどめを刺した。


「順調だな。このあたりには強いモンスターは出ないのか」


『だからニードルラビットも別に弱くないぞ』


 陸斗の感想にアロンダイトはもう一度をツッコミを入れる。


「浅草くんがズレてるのは理解したわ。おかげで私たちが助かっているということも」


 と優理が言い、千尋が小さくうなずく。


 彼女たちからすればニードルラビットの動きは速すぎるのだから、嫌でも実感できるのだった。

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